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私は父がサラリーマン、母がパートで働く平凡な家庭で育った。一人っ子ということもあり、両親からは特に甘やかされてはいたが、しつけも厳しかったので根はまじめな方だ。


わりと何でも楽しく取り組めるタイプだったようで、中学からずっと練習がハードだったバスケ部に在籍していたが、辞めたいと思ったことは一度もなかった。残念なのは背があまり伸びず160センチには全く届かなかったことだ。


あれは文系の大学に通う大学1年生だった。両親が二人揃って事故に遭って帰らぬ人となった。


当初は平静を装うようつとめたが、しばらくすると、その反動からか塞ぎ混んでしまい学校に通えなくなってしまった。


事故は酔っぱらい運転によるひき逃げ事故だった。犯人はすぐに捕まったが、賠償等は進んでいなかった。


結局、身近な親戚もいないので生きていくために大学をやめ、大好きだったバスケも辞め、バイト三昧の日々をなんとか過ごしていた。


あのときから私の時計は止まっていたような気がする。何をするにもそれほど興味もわかず、ただただなんとなく生きていただけだった。

それが、この世界にきて何かが動き出したような気がした。



コンコンッ



気がつくとだいぶ時間が経っていた。マリンが夕食の時間の案内にきたらしく、その前に湯あみすることになった。


湯あみ後、髪を整えてもらいながら話をした。


「マリン、ルーク様はどんな方ですか?」


「それは難しい質問ですね。使用人の立場からしましたら…。」


「あ、そうですよね。では年齢とかは?」


「年齢は今年二十五歳になられましたよ。レイ様も同じ年で、お二人はご学友だったんですよ」


六つ上かあ。あんなイケメンがクラスにいたら楽しそうだなあ。

その後もしばらく話していたが、ルークが氷の王子と呼ばれていたこと(現在進行形で)で盛り上がった。








「そろそろ夕食のお時間です」


前回と同じようにマリンに食堂に連れられていったが、前回はルークと向かい合った席だったのに、今日は隣に用意されていた。



「あ……あの……」


距離が非常に近い。なんで手の甲にキスしてるの?


「こちらの世界では結婚をするもの同士では当たり前のことですので気にしないでください」


ルークにそう言われても、手の甲にってのはなんとも気恥ずかしい。

元の世界でもいちゃいちゃしてるカップルは町中にいたから、そんなに抵抗はないのだが、自分がされるのはまた違った。


というか、もう結婚するってことが決定済み……? しかも周りの使用人さん、みんな知ってる?

正直なところルークは好みのど真ん中だからうれしいけれど、決定が早すぎない? 大丈夫?


食事は今回も私の体調に合わせてくれたようであっさり軽めの内容だった。ただし、ルークには肉料理が追加されていた。


食事が終わった頃、レイが紅茶を用意してくれた。レイはなんでもできそうに見える。


「おいしい……」


あまり紅茶は飲み慣れてなかったけれど、紅茶っておいしい。

隣を見るとルークが私に向けてニッコリ笑っていて恥ずかしくなった。


「アリス、結婚の日取りが決まりました。三ヶ月後の花の日になります。

兄からそれまでにアリスを連れてくるように催促されてますので、体調が戻り落ち着きましたら一緒に挨拶をしに行きましょう」


ほんとに結婚するんだ……。

しかも、ルークのお兄さんってことは、王に、この国の王に会うと。


「私で……大丈夫でしょうか……」


「もちろんです。兄はいろいろとご存知なのもあって楽しみにされてますよ」


いろいろと……?


いろいろと、の内容が気になるところではあるが、三ヶ月後までにやることがたくさんあるらしく、意識はそちらの方に向けなければならない。


部屋に戻るときはなぜかルークが私を抱き上げる。暴れても無駄なのは前回で分かっていたので、顔をルークの肩に埋め、周りを見ないようにつとめた。



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