番外編3 ルーク視点
ルーク視点
兄上の魔力はすごい。
あの魔力に勝てる人を未だ見たことがない。
私が作った私の元へと転移する指輪は1日かけて作った。
兄上が作ったものは1時間ほどで兄上の執務室に転移するように作った。
人に転移させるほうが難しいとはいえ、兄上の人並外れた能力はすごい。
私は器用貧乏なところがあるが、兄上はすべてにおいて超一流だ。そのため嫉妬とかよりも尊敬の念しかない。
先日、結界の特訓を兄上から受けた。兄上は得意なだけあって、絶対に破れない結界をはる。
「ルーク、違う。こうやって重ねていくんだ」
「はい」
1時間ほど特訓をしてると、見違えるほど素晴らしい結界がはれるようになっていった。
「これぐらいできれば合格かな」
「兄上、ありがとうございました」
兄上はニコッと笑うと執務に戻って行った。
兄上は私よりも多忙であろうに、こうやってたまにでも頼らないと機嫌を損ねる。そのためお妃様である姉上から要請があるのだ。
兄上は機嫌を損ねると私に甘いお菓子や食材、服にいたるまでたくさん送りつけてくるので、後処理がたいへんなのだ。兄上にとって私はまだまだ小さい子に見えているのかもしれない。
「はー……帰るか」
私は馬車に向かう道すがら、レイを騎士団から拾って帰る。騎士団でレイは大人気で、顔を出すとお願いされて稽古をつけているらしい。
「ルーク、魔法を身に纏っているな」
「兄上に結界の特訓を受けてきた」
「結界か。ますます俺の出番がなくなるなあ」
苦笑するレイ。
「頼りにしてるよ。いつだって」
「そうか」
レイは隣国の王女による一件があって以来、少し自信をなくしていたが、私はいつだって頼りに思っていたのだ。レイ以上の相棒はいないと思っている。
屋敷に戻るとサロンでアリスがクレープ屋さんを開いていた。
「あ、ルークお帰りなさい。レイ様もお帰りなさい。
今ちょうどできたところですよ。休憩していって下さいね」
アリスはニコッと笑うとクレープの飾り付けの続きをしていた。
アリスはたまにクレープ屋さんを開く。それがいつもレイが落ち込みそうなときだったりする。タイミングがよくてすごく助かっているのだが、カインとライトの入れ知恵かもしれない。なんせあの2人は聡いからな。
私にはビターチョコとイチゴがのったクレープだったが、レイにはてんこ盛りの果物にチョコにクリームに……歯が溶けそうなくらい甘そうなクレープをアリスは差し出した。
レイは器用にフォークとナイフでうれしそうに食べる。さらにおかわりまでしていた。この無類の甘党め!
このあと執務をこなし、今日の仕事を終わろうというときにレイに声を掛けられた。
「ルーク、ちょっといいか?」
「どうした?」
「俺のことならもういいぞ」
「……?どういう意味だ?」
「俺はもう大丈夫だって言ってるんだよ。姫様の外出を許さないのは俺のためだろ?」
「……。気づいてたのか……」
「まあね。あの誘拐以来、確かに俺はダメになってたからね……。でももう大丈夫だ。この1年、誰よりも鍛練してきた。魔法はまだまだかもしれないが、攻撃力、防御力、共にあげてきた。
それにうちにはみんながいる。心身共に頼りにもできるし、自分も頼られる存在だ。
だからもう大丈夫だ」
「うん……」
レイの言葉がうれしくて仕方がなかった。
レイが大丈夫だと思うまでは、アリスに我慢させていたのも理解している。
決定を覆して護衛騎士としてユーリをアリスに付けたことも、レイに対して申し訳ないと思ったこともあった。
でもなによりも、レイに自信がないと今後必ずダメになる。周りが優秀なだけに。
だからうれしかった。
「これで姫様もお出かけができるな。ユーリと共に必ず2人を守るよ」
「うん、そうだな……」
それからほどなくして、王家の夜会に参加することとなった。
「最初は街歩きかと思ってたけど、夜会なんだな」
「アリスの希望だよ。でも街歩きしたいのも知ってるからいつかはね……」
それから街歩きまで半年掛かったのは、ただ単にルークの心配性と閉じ込めたい病が発動したからだとレイがライトに話していたのが聞こえたが、とりあえず聞いてないふりをした。
ブックマークや評価★をありがとうございます。
とてもうれしく思ってます。
番外編ちまちま更新しますのでまたよろしくお願いします。
新連載『この婚約なかったことにしてくれませんか? ~なぜか王子に溺愛されてます~』を更新してます。
そちらの方もぜひ見てください。




