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私は髪と目の色が変わったことに驚いたけれど、ルークのキスでなんとなく落ち着けた。
ルークがお揃いですねって言ってたのを思い出すと、そこはかとなくうれしい。
ルークがみんなに私の話をしてくれている間、私は隣の部屋でマリンや侍女たちに髪型や化粧の手直しをしてもらっていた。
「アリス様、これはまたすばらしくまばゆい金髪になられましたね。いかがなさったのですか?」
「マリン、それがね、女神様に加護をいただいて、この国の人になったのよ」
「加護を?この国……?」
マリンたちは絶句したあと
「さすがアリス様ですね。奇跡がなんてことないように聞こえます」
「そうでもないのよ。私なりにとっても驚いてる!」
と力をいれて言うと、マリンはクスクス笑い出した。それでも手直しをする手は動いている。
「さて、こんなものですかね」
見ると、アップにしてあった髪はハーフアップにしてあり、生花と宝石がが散りばめてあった。
「うわーうわーうわーきれーい」
金髪になってから時間が経ってないのもあり、自分とは思えないけれど、お姫様みたい。
「マリン、ありがとうございます」
「ふふっ、どういたしまして。かわいい姫のためでしたら。では、少しつまめるものをお持ちしますね」
そういうと、一口サイズのクッキーや果物、そして飲み物を持ってきてくれた。飲み物は以前出された、おいしいけれど、見た目が毒々しい紫色のドロッとしたあれだった。
「アリス、話が終わりましたよ」
ルークが部屋を訪ねてきて、そして私を見たとたん破顔し、マリンによくやった!と誉めていた。
「アリス、そろそろ披露宴の時間ですよ。行きましょ。私のかわいいお姫様」
ルークは手を差し出した。私はその手を取りにっこり笑ってイスから立った。
* * *
ルークと踊るのはこれで何回目かしら。これからの人生、何度踊れるかしら。
楽しい時間はあっという間に終わり、ルークとの3曲目を踊ったあと、あとは立食パーティーのみとなった。
王族ということもあって、一番前に席があり、ひっきりなしに挨拶を受ける。ルークは基本的に無表情で、私を見るときだけ微笑んでいた。
私の腰を抱き、反対の手で私の両手を掴むようにしているので、私は挨拶もままならないのだが、後ろ楯のない私にはやり過ぎるぐらいやった方がいいとルークは笑顔で言っていた。
完全にとらわれてる人になってるが、国王であるクリスも同じ意見だったのでそういうものらしい。
延々と挨拶が続く中、時々ルークが耳元で「愛してます」と囁いたり、「帰りたいです」と呟いたり思考が挨拶よりもルークに行きがちで、そのぶん早く終わったような気がした。
だいたいの挨拶が終わり、王族は先に退室するころになると、ルークは私を抱き上げさっさと会場を出てしまった。
「兄上への挨拶も終わりましたし、ここまでは我慢しましたので、もう帰りましょう」
カインも心得ているようですでに馬車を用意してあった。いつも通りルークの膝の上に座るとユーリがびっくりしていたから、やっぱりこれは普通じゃないと確信した。が、ルークはニコニコ笑って腰をホールドしてるから指摘したところであまり意味はないかもしれない。
「ルーク……膝の」
「アリス、楽しいことを奪うのはよくないですよ」
言おうとしたら遮られた。
改めてルークは私のことに関してはブレない。引かない。
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