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ついに結婚式当日となった。
朝、目が覚めるとルークの優しい目が私を見つめていた。
「おはようアリス」
「おはようございます」
ルークはチュッとキスをすると、ヒールを掛けてくれた。私もお返しにヒールを掛ける。
湯あみをし、朝食を食べたあとはルークと分かれ、準備に入る。私の準備は会場となる王城ですることになっていたので、カインやマリンたちと馬車で移動しようとしたところ、ユーリが馬車の前で待っていた。
「アリス様、おはようございます」
「え?なんで父上が?」
カインが混乱した声を出していた。
「おはようございます、ユーリ様。引き継ぎは終えたのですか?」
「いいえ、今日は特別な日ですので、こちらに来ました」
「???」
カインは何も聞いていないのか困惑していた。
「カイン、護衛騎士をつける予定だったことは知ってますよね」
「え?まさかっ!」
「そのまさかだ!私がアリス様の専属の護衛騎士になることになった」
「はあああああ!?」
その様子を見てクスクス笑う私と侍女たち。
「ユーリ様、よろしくお願いいたします」
「ユーリとお呼びください。今後命をかけてお守りいたします」
ユーリは片ひざをついて頭を下げた。
「では、ユーリ、よろしくお願いいたします」
「なんで父上が……」とか「想定外だ」とか呟くカイン。
最近、ルークといい、カインといい、呟きが多くなったような……。
カインは頭を振ると目をつむり頷いて私を見た。
「アリス様、参りましょう」
馬車に乗るのに手助けしてくれ、2台に分かれて全員が乗るとゆっくり出発した。
* * *
王城ではあわただしく準備が始まった。
化粧に髪のセットに衣装にと時間がかかり、仕上がったときにはぐったりしていた。
今からが本番なのに……。
「リリー様がいらっしゃいました」
準備が終わった頃、カインがリリーを連れて入室してきた。
「まあ、アリスちゃん!とっても綺麗だわ」
「お姉様、ありがとうございます!」
「いよいよね。楽しみにしてるわ。またね!」
それだけいうと、さっさと退室していった。お姉様らしいとついつい笑顔になる。
今日は王城前の広場で花の日の式典があり、そのあと私たちの挙式披露宴が王城内である。
そろそろ花の日の式典が終わり、外ではお祭りが始まる頃らしい。出店などがたくさん並び、結婚式がなければ参加したかったくらいだ。
コンッコンッ
音が鳴ったと同時にルークが部屋に入ってきた。
「アリス、準備でき……」
扉を開けたまま固まっているルークに心配になる。
「ルーク、私、変ですか?」
首をかしげてみる。
ん?
ドレスがルークのと対になっているのに、気がついた。
「アリス、可愛すぎて息がとまってしまいそうだ」
「ルーク様、抱きつくのは今は禁止ですよ」
すかさずマリンが声を掛けると、小さな声で「ケチ」と呟くのが聞こえた。なんだかルークがかわいい。
「さて、私のお姫様。そろそろ参りましょうか」
ルークは私の手を取ると会場に向けてゆっくり歩き出した。
会場には女神の像があり、王族が結婚するときはまず女神に許しを請う。そして魔力をお互いに流しあって誓いあうのが一連の流れだ。
会場にはすでに招待客が待機しており、いまかいまかと始まるのを待ちわびていた。
会場の扉の前に立つと、ルークが話しかけてきた。
「私があなたを手離せないがために、この国に呼び寄せてしまいました。そのかわり、一生手離しません。何があっても、アリスただ一人を愛します」
「私もですよ。ルークを手離しません。愛してますから」
私がニッコリ笑うと、ルークは「自制心とは……」とか、「可愛いがすぎる……」とか呟いていた。
「ルーク・ローズ殿下、アリス・ローズ妃殿下、入場」
入場のアナウンスが流れ、扉がゆっくり開かれた。
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