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食事が終わると紅茶を入れてもらい侍女たちを下がらせた。4人だけになり、念のためとお兄様が結界と防音の魔法を使った。
「まずフローラ・アルボーンだが、王族に魅了を使ったことで死刑判決が出た。だが、本人が生きて償いたいと申し出たことにより、北の強制労働棟に入ることになった。ある意味死ぬよりつらいところかもしれぬな……」
「そうですか」
ルークはさして興味なく答えた。
「ニットラーチェの方は被害が大きすぎてな。被害が全部明るみに出る前に死刑判決となった。一族郎党それぞれそれなりの処分となるだろう」
「アリスを誘拐した魔術師と、カインを切った侍従はどうされました?」
「魔術師はすでに処刑されている。重罪だからな。侍従の方は騎士団が探しているがまだ見つかっていない」
「そうですか。見つけたら知らせてください」
「分かった。
辺境の地は侯爵を辺境伯に格上させることが決定した。今選定中だ。
それとアリスの護衛騎士の件だがユーリが立候補している」
「え……?」
私とルーク、同時に声が出た。
「アリスは魅力的なんだろうなあ」
「すでにレイが選んでいたものではなくて、ということですよね?
兄上の影はどうなるのですか?」
「レイには悪いがユーリがどうしてもと言うのでね。影は長男が跡を継ぐようだ。まあ、あそこは長男も賢いからな」
「ユーリかぁ……。分かりました。了承したと伝えてください」
「分かった。まあ、引き継ぎがあるからしばらく待ってくれ。
最後に隣国の王女の件だが、ルークを連れ帰ってすぐにあの王女が王城に来た。これだけのことをしておいて狂っているとしか思えないな」
「あぁ、だからなかなか朝食にいらっしゃらなかったのですね」
「私はまだたいしたことはしていないよ。今は北の塔に拘束している。ついでに隣国の方には犯行を記録していた魔石を見せて捕らえたことを伝えた。
あとはあっちの出方次第かな。まあ、生きていることを後悔する程度にはやっておくからルークもアリスも安心して」
「よろしくお願いします」
情報が多過ぎて頭になかなか入りきらないけれど、犯人は捕まったということでいいのかな?
「アリス、もう大丈夫ですよ。この件において心配はいりません」
ルークが微笑んでるのを見て私はホッとして頷いた。
「あとは結婚式まで日がないことだし、準備に専念しなさい」
「はい。ありがとうございます」
「兄上、いろいろとありがとうございました」
「私はお前たちの兄だからね。やりたくてやってるんだよ。さ、そろそろ帰りなさい」
ニコッと笑うお兄様にお姉様。
「では、レイの様子を見て帰りましょう」
「はい」
挨拶をしお兄様たちと別れ、医務室に向かった。ルークは私の腰をぎゅっと引き寄せ、反対の手で私の手と絡めていた。小さなことかもしれないけれど、ルークのいつもの香水の匂いではなく、ルーク自身の香りに包まれてることがなんだかうれしかった。
「ルークの香水の匂いも大好きですが、香水をしてないルークの匂いも大好きですよ」
ルークに伝えると破顔して「なんだこの可愛い生き物は……」とか「俺はいつ死んでもいい……」とかぶつぶつ呟いていた。
どうしたの?ルーク……。
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