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ルークは生まれてからずっと住んでいたのもあって、案内も付けずすたすたと進んでいく。王家の王族だけが入れる棟があり、ルークの元の部屋はもちろんのこと、個人の部屋や、食堂、図書室などがある。入り口は近衛騎士が守っているので部外者は誰も入ってこれない。
「アリス、もうすぐ着きますよ」
そう言いながら手の甲にキスをするルーク。
「今まで自制してましたが、楽しく過ごすために自制はやめることにしました」
ルークはそういうと、私の唇を食むようにキスをした。
「私のために自制はしてください」
私は顔が真っ赤になっているのを感じつつ
お願いするも却下された。これからどうなるのか不安だ……。今までも甘すぎるのに……と、恥ずかしいとうれしいと不安が交錯する。
「こちらですよ」と言って連れてこられた部屋の前に近衛騎士がいて、扉を開けてくれた。
「まだ誰も来てませんね。まあ、待ちましょう」
ルークは窓の方に私を連れていき、外の見事な庭園を指差し、ここの庭園でルークはよく遊んでいたことを教えてくれた。庭師のポムさんによく飴をもらった話や、花を摘んでは母に贈っていたこと、薔薇を見るのが好きだったこと……子ども時代の話は聞いていて楽しかった。
「待たせたね」
声を掛けながら部屋に国王であり、ルークの実兄であるクリスが入ってきた。妃であるリリーもクリスに続き入ってきた。
お子様方は部屋で食べるらしく来ていなかった。
「とりあえず席に着こうか。食事を頼む」
お兄様の声に侍女が食事を運んできた。ルークは自制しないで膝に乗せようとしたのでしばらく交渉の末「今夜いろいろとがんばりますので」とこっそり伝えるとにこやかに隣の椅子を引いて座らせてくれた。
「アリス、昨日はありがとう。大事な弟を取り戻せてほんとによかった」
「アリス、兄上改めてありがとうございました。正直なところ諦めかけていました」
「う……ぅぅ……」
ルークを見つけたときの姿を思い出して涙が止まらなくなった。間に合ってよかった。ほんとに間に合ってよかった。
ルークがそっと隣に立ち耳元に「ありがとう」と囁いた。それから目元に流れる涙にキスをした。
「これ以上泣いたら目が腫れますよ」
微笑むルークに私はまた泣いてしまった。
「ルーク、また泣かすようなことをして……」
「あら、あなたも昔は私を散々泣かせましたわ」
「いや、あれはリリーが可愛すぎるから……」
「まあ、わたくしのせいだと?」
「い、いや……」
突然始まったお兄様夫婦のやり取りに思わず笑うといつの間にか涙も引っ込んでいた。
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