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いくつかの治癒魔法を習得したあと、クリスの執務室に戻った。
「アリス、レイが一旦目を覚ました。端的にいうと、隣国の王女による犯行なのは確定した。そしてルークは目が見えてない可能性がある。
王女は侍女らを置いて、側近数名と行方不明になったが、隣国に帰国したと先ほど侍女らに連絡があったようだ」
「目が見えない?怪我ですか?」
「おそらく……」
ルーク、どうして……?
ルーク、どうか無事で……。
「そこでアリス、私がすべてフォローするから今からルークのところに行こう」
「はい」
クリスはあらゆる保護魔法を自分に掛け、そして私にも掛けた。
「結界は得意だからね」
といって体にそうように結界をも張ってくれた。
助ける準備と戦う準備がすみ、いざ行こうとしたとき、私は魔力を制御するネックレスを外しカインに渡した。大ケガをしているかもしれないルークに最大限の力を使いたかったからだ。
「必ずルークを連れ帰ってきますのでカインが持っていてください」
「……。魔力切れを起こすまで魔力を使わないでくださいよ」
「分かってます。ではいってきます」
そういうと、私はクリスと手を繋ぎ指輪に魔力を流した。ルークのところにお願い!!
視界がぐらりと歪み、次の瞬間見たことない部屋にいた。辺りを見渡すとベッドにルークが上半身裸で横たわっていた。
「ルーク!」
ルークに近づくと息は微かにしているが、意識はない。命が今にもつきかけようとしていた。体の至る所に深い切り傷があり全身血だらけで、目が見えていない可能性がある理由も一目で分かった。ルークは目も切られて血を流していたからだ。
ルークを見て泣いてる場合じゃない。私、震えるな!
私はお兄様に目を向けると頷き合い、自分ができる最大限のヒールを掛ける。
「ヒール!!」
みるみるうちに傷が治っていき、ルークの顔に血色が戻った頃、ルークは静かに目を開けた。
「ルーク、よかった。よかった……」
「アリス、ルーク、すまないが誰かがこの部屋に近づいてくる。さっさと移動しよう」
というと、足音が聞こえてきたと同時に手を繋がれたので、私はクリスが用意した魔石に魔力を流した。するとぐらりと視界が歪み、次の瞬間クリスの執務室にクリス、ルークと共に転移していた。
アリスがヒールの練習中、ルークがいる部屋に魔力封じが施されてることを見越して、クリスが魔石を用意していたのだ。魔石はアリスが魔力を流したらクリスの執務室に転移するようになっていた。
前回の誘拐でアリスには魔法封じは効かないことが分かったからこそ、できた作戦だった。
が、魔力の使いすぎでアリスはそのまま倒れ気を失ってしまった。
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