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湯あみのあとはホントに体を休めるために静かにすごした。ゆっくり本を読んだり、屋敷の中を見てまわったり、お昼寝をしたり……久しぶりのルークとの休日を楽しんだ。
「ルークとこうやって過ごすの、久しぶりですね。結婚したとき以来かな」
「そうですね。あのときはもう少し獣っぽかったですけれどね」
ふふっと笑うルークに少し冷や汗が出るのはなぜだろう。
「これからの予定って決まってますか?」
「今日はこのまま体を休めて、明日は湖に行きましょう。明後日、王都に向けて出発します」
「また馬に乗るのですか?」
「馬車の手配ができてないのですみません」
「……」
あ、涙出てきた。早く家に帰りたいけど帰りたくないような……。
「もう少し街に行けば王都までの馬車を手配できますから……」
ルークが慰めてくれたが、そういえば明日の湖は徒歩?馬?
「明日の湖はこの邸の馬車を借りるので馬車で行きますよ」
明日だけでも馬車でよかった。馬だったら楽しむ余裕がなかったはず。
ルークが後ろから抱き締めてくれる。
私はこの時間が大好きだ。改めてルークの側に帰ってこられてよかった。
「お食事をお持ちしました」
夕方になり、カインが食事を運んできてくれた。私はカインの前に立ち、
「カイン、ありがとう。あなたがいなかったら私は死んでたわ。助けてくれてほんとにありがとう」
私はずっと支えてくれたカインにお礼を言いたかった。
「いいえ。守って当たり前が、誘拐されるという事態になり申し訳ありませんでした」
「いや、元は私の結界が破られてしまったことが原因だ。二人とも危険な目にあわせて申し訳なかった」
王弟であるルークが家臣に謝るなど本来あってはいけないとカインがあわてて止めた。
「ルーク様、それはお止めください」
「いや、ずっと謝りたかったんだ。すまなかった。改めて無事に戻ってきてくれてありがとう。これからもよろしく頼む」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
カインは頭を下げ退室していった。
次の日、私たちはお昼ご飯を持って快晴の中、湖まで出掛けた。
馬車に乗って10分、すぐに湖に着いた。
「わあ!私、湖を見るのが初めてです」
透明度が高く、泳いでいる魚がよく見える。湖の縁から中を覗いているとふわっと浮遊感がした。
「あぶないですよ。浅く見えますが10メートルはありますから」
ルークに後ろから抱えられていた。
「そんなに!あまりにもきれいで吸い込まれそう」
日の光が湖面に反射してキラキラしている。とても幻想的でステキだった。
「さ、お散歩にいきましょう。みんな待っていますよ」
見るとルークの言葉通り、レイやカインたちが待っていた。
待っていてくれるのがなんだかうれしい。
湖は1周を1時間ぐらいで回れるらしく、珍しい草花や、小動物との出会いがありとても楽しかった。
監禁中はカインと5メートル四方の部屋に閉じ込められていたこともあって、のびのびとできる環境に感謝していた。
「連れてきてくれてありがとうございます」
私の言葉にルークをはじめとしてみんながニコニコと笑っている。
つられてニコッと笑うとルークに抱き締められた。
「アリスを見せたくない」
ルークはぶれない。
久しぶりの外でのピクニックランチは、夜はルークの言うことを聞くことと引き換えに、ルークの膝の上で食べさせてもらうではなく、ルークの隣に座り自分で食べた。
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