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目が覚めるとカインの胸に頭を乗せて寝ていた。あわてて起き上がるとカインが私を見ていた。
「アリス様、おはようございます」
ふんわりと笑うカインに
「カイン、おはようございます」
私は挨拶をしながらカインのおでこをさわる。
「まだ熱が高いですね。熱が下がるまでは動かないでくださいね。熱の原因は傷の手当てができてないからだと思います」
カインは体を起こそうとするが、顔は熱で真っ赤だし、力も入らないようだしで無理やり押し戻した。
「お水持ってきますね」
コップにお水を入れ、カインを少し起こして水を飲ませたらまた寝かせて隣に座った。
私の力を使えたら治してあげられるのに。
魔力封じで力が使えないと分かりつつも、治れ治れ治れと思いながら横になっているカインに魔力を発動させた。
「あれ?発動できてる……?」
私はカインの服をめくってお腹を見ると、化膿していたところが跡形もなくなくなっていた。なんで?
「あ、勝手に見てごめんなさい」
カインも何が起こったのか分からず、首をかしげている……。
「どうして発動したのかしら?」
「どうしてかは分かりませんがありがとうございます」
いつの間にか起き上がっていたカインにお礼を言われたが、治ってよかったのは私の方だ。
「良かった。カインのお腹の傷がひどく化膿していたのよ」
「そうだったんですね。自分では気づかず……」
「ご自分の体を少しは労ってくださいね」
そういうともう一度ヒールを掛けた。
今日で誘拐されておそらく5日目。
昨日の夜から毎食食事を持ってきていた男の姿が見えなくなった。昨晩のご飯、今朝のご飯が来ていないこと、何かが起こっているようで怖い。
「カイン、実はあなたを傷つけた男が部屋に来なくなりました。昨日の昼が最後です。何か起こっているのかもしれません」
「アリス様、保護魔法を覚えておいでですか?
私は相変わらず魔力を制御されてるので発動できませんが、アリス様が発動できるなら身体強化を付与したものを私に掛けてほしいのです」
「え?なんで?身体強化……やったことない……」
「何か起こりそうであれば身体強化していれば、多少対応できることも増えるかもしれません。身体強化もですがイメージが大事です。アリス様は勘がとてもいいですから大丈夫!できますよ」
「……。一応やってみますが、練習もしないでカインに掛けるなんて……」
身体強化って某漫画のスーパーサ○○人みたいなのよね。きっと。
私は目をぎゅっとつぶって金髪になった髪がゆらゆら風に揺られ、全身が金に光るあの様子を思いうかべながらカインに掛けた。
「あ………」
えーっと……。えーっと……。
カインが光ってる……。
たぶん……間違えた……。
どうしよう……。
カインは本来茶髪でグレイ色の目をしてるのに、金髪に金色の目になってる……。
カインは固まったまま話さないし……。
「えーっと……これは何を掛けられたのでしょう……?」
「か…カイン、ごめんなさい!イメージが…身体強化のイメージが……ごく……」
「いえ、身体強化は驚くほどよくできてます。が、見た目がこれだと目立ちすぎて居場所がバレます。できたら、見た目は元のままでってのは可能ですか?」
身体強化はできてる!?
それならカイン自身が強くなるのをイメージして…もう一度掛けてみた。
「どう?」
「うん、すごく良い。やはりアリス様は勘が良いです。今までの身体強化と比べ物にならないくらい良いです」
「良かった!」
昨日の朝と昼に渡されたパンの残りをカインと少し食べ、私は休憩することにした。
カインは体がなまったと言って腕立て伏せや腹筋をしたりしていた。
カインがある程度運動したあと、外で轟音が聞こえた。
「始まったようです。私から離れないでください」
何かは分からないけれど、私たちの運命が決まる何かが始まった。
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