47 カイン視点
カイン視点
お屋敷の庭園は思っている以上に広い。
アリス様の心が壊れそうになってルーク様がその記憶を消してから数日、午前のレッスンはやめにしてアリス様を庭園に誘った。
少しでも気分転換になればいいと思ったのと、落ちてしまった体力をつけるために。
アリス様は何度かの発熱で、ずいぶん痩せてしまわれ、ご本人も体力がなくなったことを気にされているようだ。
庭園は広いので季節の花を楽しみながらゆっくりと歩く。マリンと花の名前や花言葉を話したり、鳥の鳴き声や風の心地よさを感じておられるようだ。
あと10分もしたらルーク様がいらっしゃる予定なので、一度休憩してもいいかもしれない。
マリンにお茶の用意を頼むと、足早にお茶のセットを取りに行った。
しばらく2人で歩いていると、急に外から魔力を感じたと思ったら、アリス様の方に大きな魔力が行くのを感じ、とっさにアリス様を抱き締めた。
気がついたら転移させられ床に転がっていた。
「いててて」
「アリス様、大丈夫ですか!」
「うん、なんとか大丈夫」
手を擦りながら起き上がるアリス様を支え、簡単に怪我がないかチェックしたが、大きな怪我はないようだ。
「何が起こったのですか?」
「おそらくですが、ルーク様の結界が破られ私たちは何者かに転移させられました。
場所の方はさきほどから探ろうとしてますが、できないところを見ると、この魔石は魔力封じのようです」
「誘拐されたということでしょうか?」
「そうなりますね……」
部屋の確認をすると部屋の大きさは狭く、一辺が5メートルあるかないか。窓はなく、扉があるが開かない上に牢屋のように柵がある。部屋にはトイレと洗面所はあるが風呂はなし。灯りは……この埋め込まれたライトだけか。
外部との接触はできそうにないな。
隠しナイフもなくなっている。
コツコツとあちこちを触りながら歩いていると
「ねえ、カイン。逃げることはできそう?」
「今のところ逃げ道がなさそうです」
「そう。じゃあ、待つしかないわね」
そういうと、アリス様は床に座ろうとするので、自分の上着を脱ぎアリス様に着てもらい座ってもらった。アリス様は私よりかなり小さいのでぶかぶかだ。
3時間ほど経っただろうか。
扉が開き若い男が食事をもってきた。瞬間、男の腕をつかみ鍵を奪おうとしたところ、男が隠し持っていたナイフで切りつけられた。男は訓練されているようで俊敏な動きをしていた。
「無駄ですよ」
そういうと、食事を置きまた扉を閉めた。
「カイン!大丈夫ですか!?」
アリス様を見ると顔が真っ青になっていた。
「これぐらい平気です」
普段は絶対にしないが不安をやわらげるようにアリス様の頭をポンポンと叩いた。
あの男、かなり訓練されている。自分の傷を確認すると腕が1箇所、腹が1箇所切りつけられていた。腕はハンカチを割き巻いて止血をした。腹は巻くほどのハンカチがないので残りのハンカチで押さえて止血した。
「アリス様、私が毒味をしますので、少しお待ち下さい」
さっきの男が持ってきた食事の毒味をしたが、特におかしなものは入ってなかったのを確認してからアリス様に渡した。
アリス様はあまり食べようとしなかったので「長丁場になったら体力がものをいうので」と説得をし、無理にでも食べてもらう。
早く助けが来ればいいが。
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