42 ラムス・アルボーン男爵視点
ラムス・アルボーン男爵視点
おかしい。私はどこで間違ったのだろうか。
元々アルボーン男爵家は貧乏男爵だった。領地では農作物を細々と作るぐらいしかできず、借金こそないものの収益は少なかった。いくら真面目に働いても、質素に過ごしても領地を守るだけで精一杯だった。
私には平民出身の妻、長男のレスファーと5つ下の長女のフローラがいた。子どもたちはとてもかわいく、目に入れても痛くないと思うほどだったが、レスファーは7歳のときに流行り病で亡くなった。
フローラのあとに子どもはできず、子どもはフローラだけだと、夫婦で殊更可愛がった。実際容姿もかわいく、領民からも人気があった。
フローラが14歳のとき、ある侯爵からの紹介で魔法の先生に会った。学園をたまたま訪問したときにフローラを見かけ、魔力の制御を身に付けた方がいいと判断したので会いに来たと。
フローラに会わせていいものか迷ったが、侯爵の紹介となれば断ることもできず、フローラに会わせた。
魔法のレッスンはフローラと2人だけでやると言われ渋々了承した。というのもフローラが魅了の能力を持っていることを知っていたからである。
正直なところ、魅了の能力の取り扱いに困っていて、フローラにはどう教えるか迷っていた。
数回のレッスンが終わり、フローラは変わった。気づくとどうやら学園で男の子たちに貢がせていたようだ。そのことを咎めると家に大金を入れるようになった。侯爵からの指示だというが、なにかおかしい。おそらく侯爵に娘は騙されてるのではないかと思った。
忙しくしていたある日侯爵に呼び出され、一度侯爵邸に伺った。フローラに魔法を教えた先生もいて、フローラが魅了を使って男子学生に貢がせたため没落寸前の貴族があると聞かされた。
その貴族を救済するために侯爵が動き、事なきをえたと。莫大なお金を使ったから、その弁済をするか、それとも侯爵の手足となるか選ばされた。
「どちらもしないというなら、フローラ嬢を騎士団に密告してもいいですね」
「……」
大事な娘を密告などさせられない。うちに返せる大金もなく、人知れずして侯爵の手足となる契約魔法を結ぶことになった。
どこで間違ったのだろうか。
その後は侯爵の手足となり不正なこともたくさんした。自分のためというより、娘のためだった。
いつぐらいだろうか……、リミッターが外れて不正に何も思わなくなったのは。
娘も同じだったのかもしれない。
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