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「王族、入場」
他の貴族の入場が終わったころ、私たちの入場となった。名前を呼ばれお兄様はお姉様をエスコートして入場する。
私もルークにエスコートされ入場した。
「アリス、誰よりも綺麗で美しい」
耳元でささやかれ緊張よりも恥ずかしさの方が勝った。
お兄様、お姉様がホールより一段高くなったところの席に着くと隣の席に私たちは案内され、ルークは私に座るように促した。その回りに、国王の近衛騎手やレイたちが並んだところで公爵から順に挨拶を受けていく。私はそれを横で眺めながら勉強した名簿を思い出していた。
若い女性の多くが、ルークを見て顔を赤くしているが、当の本人は私に顔を向けた時以外は無表情になっていて、『氷の王子』の異名は本当だったと今更ながら感じた。
「ルーク、笑顔じゃなくていいの?」
ルークに小声で聞く。
「アリスは私にだけ笑いかけてくれればいいですよ」
うん。聞きたいこととちょっと違う。けれど、そうはいってもルークは私とお揃いの青い生地で作られた服がとても似合っていて、見るだけで顔が赤くなる。
このカッコいい人が私の旦那様かと思うと自然と笑顔が出てしまう。いや、にやけてしまう。
アルト王国では、公爵、侯爵、伯爵までしか国王には挨拶ができない。それでもかなりの数あり、挨拶だけで1時間は経った頃、やっと並ぶ列の終わりが見えてきた。
列が途切れたころ、宰相であるレイの父、リアン・オーキッドが壇上に上がった。
「国王陛下のお言葉を賜ります。陛下よろしくお願い致します」
「皆の者、よく来てくれた。今日は夜会の前に報告がある。我が弟のルーク・ローズが、この度婚姻を交わしたことを報告する。ルーク、アリス、こちらへ」
呼ばれて二人で壇上に上がると
「ルークの妃はアリス・ローズである。彼女は召喚の儀により参った異世界のものである。突然の発表となったが、式は花の日に小規模で行う予定。二人を暖かい目で見守ってやってくれ」
そういうと、一斉に拍手が起こった。ルークと私は促され席に戻ると
「では今から会を始める。今宵は楽しんでくれ」
と開会の宣言が国王によりあった。
まずは王族によるダンスで、私たちはホールに降りた。自然と中央から人が広がり、練習をしたワルツが流れ出した。
「練習通りリラックスして楽しみましょう。アリス、私と踊っていただけますか?」
「喜んで!」
ルークのいつもの言葉に緊張がとけ、1曲目は少し固いながらもなんとか踊りきった。2曲目は踊っている人数が増えたが、1曲目よりも楽しく踊れている。そんな中、
「ルーク大好き」
気持ちが溢れてつい言ってしまった。
ルークは破顔して「私もです」と耳元で言ってくれた。
うれしすぎて、楽しすぎるダンスの時間となった。
ダンスが終わりルークとお互いに挨拶をしていると、ダンスをしている別のペアの男性がぶつかってきた。
「わっ、申し訳ありません!」
ぶつかった男性は頭を下げると女性を連れて人混みの中に足早に消えてしまった。
「アリス、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。ちょっとぶつかっただけなので」
話していると、私たちのダンスが終わったと判断した令嬢たちがルークにダンスの申し込みにきて、私はその波に押し出されてしまった。その際足を挫いてしまい、直後からじんじんと痛みだした。
すぐにカインが現れ手を貸してくれたが、この痛さは経験上骨折か靭帯をやってしまったかなあと考えていたら浮遊感があり、気がついたらカインに横抱きにされていた。
「アリス様申し訳ございません。お嫌かとは思いますがこのまま医務室にお運びいたします」
そういうと足早にホールの出入口から出て、王城の医務室まで連れていかれた。
カインはそっとベッドに私を下ろすと、靴を脱がせてくれた。
「こんなに腫れて…。私に治療魔法が使えたらよかったのですが…」
そう言いながら医務室の医務官を呼び治療するように伝えた。
だが、医務室には助手しかいなかったため治療ができず、医務官の戻りを待つことになった。
その間、カインは魔法で氷を作りタオルに巻いて足を冷やしてくれた。
「カイン、ありがとう」
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