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「いってらっしゃいませ」
ライトやマリン、他の侍女たちからお見送りを受けた。
始まる時間からは早いが王城に出発する時間になり、私たちは馬車に乗り込んだ。ルークは膝の上に座らせると、レイもカインもなんとも言えない顔をするのはいつも通り。
王城につき、王の謁見の間に通されるのかと思ったら、また王の私室に通された。
今回はレイやカインも同席している。
「ルーク、アリスよく来たね。今日は忙しくなりそうだけど、気をつけて、そして楽しんで。きみらの婚姻の発表なのだから」
「ありがとうございます、兄上」
「ありがとうございます、お兄様」
「時間より前に来てもらったのは妃を紹介しようと思ってな。アリスはまだだったからね。もうそろそろ来るだろう」
すると、ちょうどノックの音がし、お兄様が「どうぞ」と言うとかわいらしい女性が入ってきた。
「アリスにごさいます。以後お見知りおきを」
立ち上がり挨拶をした。
「まあ!ありがとう。リリーです。堅苦しいのは家族ではなしにしましょうね。姉様と呼んでくださいね」
お互いに挨拶をすると、お兄様はリリーお姉様を膝の上に乗せた。普通に。
ルークの言うとおりこれが標準だったらしい。
それを見てルークが膝の上に乗せようとし一応抵抗してみたが、強い力で座らされた。は、恥ずかしい。
「アリスちゃんに夜会の前にお会いできてよかったわ」
「ルークが屋敷から出さないから、なかなか機会がなかったが、これからお互いに妃同士、仲良くしてやってくれ」
「お姉様よろしくお願いします」
暖かい空気を感じながら、改めてルークに感謝をした。この世界に呼んでくれてありがとう。もう家族の暖かさはないと思っていたから。
「さて、じゃぁ控え室に行こうか」
準備はできてるか?と問われてるように言うお兄様にルークは真剣な顔で頷いた。
控え室に行く途中ルークから魔石を受け取った。
「これは保護魔法が込められた魔石です。毒や精神魔法、攻撃魔法など跳ね返します。必ず身につけておいてください。」
「はい、分かりました」
ルークは聞かせるようにいつもよりゆっくり話した。
「こちらは私の分です。アリスと同じ保護魔法がかけてあります」
ニッコリ笑いながら、やっぱりゆっくり話した。
「では、控え室に行きましょう」
ルークは私の腰に手を当て、エスコートして控え室に入った。
「うまくいったか?」
控え室に入るとすぐにお兄様から声がかかり、ルークは「おそらく」と答えていた。この控え室は王族専用で部屋に結界が張ってあり、話したことが外部に漏れることもないそうだ。魔法って便利だ。
ルークはソファーに深く腰かけると私を膝に座らせた後ろから抱き締めた。
「もうすぐ始まりますがあまり心配はしないでください。
入場すると参加者が挨拶にきます。その後兄上が挨拶をしたら、王族はダンスの披露をします。
今日は私たちの婚姻の発表なのでしばらくはいますが、他のものとはダンスはしなくていいです。私から離れずにいてください。もし離れてしまったらカインが対応します」
「はい」と頷くと抱き締める力が少し強くなった。
いよいよ夜会が始まる。
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