17 ルーク視点
ルーク視点
アルボーン男爵令嬢、フローラ・アルボーンについて調べさせていたが、どうやら魅了の使い手だったようだ。フローラの場合、目を合わせると発動するようだが、高位貴族の多くは保護魔法をかけるか、もしくは魔石、魔具で保護をしていて魅了にはかからない。
そのためか、学園に在学中は低位貴族と懇意にしていたようだ。それも複数の。
なんとも汚らわしい。
低位貴族の中には、フローラに入れあげて家の金を持ち出し、借金まみれで没落しそうな家が何軒かあり、また、実際に没落してしまった家もあった。
今はその家の追跡調査、またアルボーン男爵家の内情を詮索させている。
今日は兄上にアリスを紹介する日であった。結婚の許可はすでに取ってあるので、あの兄上のことだ。打ち合わせ済みの婚約の書類だけでなく、おそらく婚姻届まで用意していることだろう。
「ふふっ」
思わず声が出ると、レイから気持ち悪いと言われた。
レイは遠慮がない。
そろそろ時間なのでアリスを迎えに行く。途中、新しい寝室とアリスの部屋の前を通った。
侍女たちには、王城に行っている間にだいたいの荷物をアリスの新しい部屋に移しておくように伝えてあるため、侍女が移動先の部屋を入念に掃除している音がしていた。
アリスの部屋として使っている客室に声をかけながら入室すると、想像以上に綺麗な、そして美しいアリスがいた。
うれしすぎてアリスを抱き締めた。このまま二人きりでずっといたい。
「あぁ、行きたくない。アリスを閉じ込めたい」
「ルーク様、お時間ですよ」
レイは…やはり遠慮がない。
もう少し堪能させてくれ。堪能したい。
王城までは馬車を走らせる。王城までは近いが安全のためである。
馬車の中でもアリスを膝の上に座らせると、アリスの顔が赤くなる。外を見たそうにしていたが、どこでだれに目撃されるか分からないので我慢してもらう。
そろそろ、俺の膝上が定位置だとインプットされてきただろうか。
王城に着くと、すぐに王の私室に通された。レイはドアの前で待機している。兄上の護衛も下がっている。
「兄上、こちらの部屋でよろしかったのですか?」
「かまわぬ。この部屋の方が話が漏れないからな。
アリス、よく来てくれたね」
「お初にお目にかかります。工藤有栖と申しま ―――――」
「あー、よいよい。弟の奥方になるのだ。堅苦しいのはなしだよ」
アリスは習った挨拶を遮られてしまって残念そうであったが、そんな顔もかわいかった。
ソファーに座ることを勧められると、いつも通りアリスを膝に座らせようとしたら、アリスに断られた。隣に座るというので、腰だけはホールドしておいたが、これ以上は譲歩できない。
「ルーク、ちょっと前からは想像できない姿だね」
兄上に笑いながら言われたが、当たり前です。他人とアリスは違います。
アリスについては俺が物心つく前から家族には話していたこともあり、兄上はアリスにもずいぶん優しく接してくださった。
「ルーク、先に事務手続きだ。
婚約の書、結婚契約書共に用意しておいた。問題がなければ、今、私の許可書を出すがどうする?」
「では読ませていただきます」
ここまでは打ち合わせ通りだったので、さっさと確認し、アリスにも見てもらった。
元の世界にはこういった書類はあまり見たことがなかったようで、読みながらたまに驚いた顔をしていたが、最終的に了承してくれた。
これで正真正銘の婚約者だ。
「ルーク、アルボーン男爵家についてだが、侯爵家がバックについているようだ。次の王家主催の夜会で婚約、結婚を発表するがあいつらには気を付けろよ。リアンが気にしていたぞ。調べが進んだらまた知らせるが、アリスを必ず守れ」
「もちろんです」
侯爵家がついているのか。そちらの方は兄上にまかせて、こちらはこちらの方で調べているものに力を入れさせよう。
アリスの護衛については選定を急がなくては。
思案していると兄上からの提案があった。
「今、ついでに婚姻届を書いていくか?婚姻していた方がアリスを守りやすいだろ?」
やはり兄上は用意していた。ここは全力で提案に乗るしかない。
これで晴れて夫婦になったのだ。
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