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午後はこの国の歴史を軽く習った。
カインによると、アルト王国の起源は女神様の加護により始まったのだと言っていた。
一組の男女に加護を与え、魔力を与えたのが最初で、それから徐々に人口を増やしていった。最初の王の名前がアルトだったことからアルト王国となったらしい。
この国では当たり前の魔法も、国によっては全くない国もあり、幸いなことにアルト王国、隣の三国からなる大陸では魔法がある。
四つの国はいずれも独立国であり、また、同盟を結んでいることもあり、ここ数百年は対立もない。至って平和な関係を築いているとのことだった。
「そういうわけで、アルト王国に騎士団はありますが、たまに出る魔物の討伐が主な仕事になりつつあります。もちろん、王族警護が一番の重要な任務ですが。」
「魔物がでるのですか?」
「でますが、アリス様がご覧になる機会はないかもしれませんね」
魔物とは魔力をもった人ではない生き物で、おとなしいものから討伐しなければならないものまでいろいろいるらしい。
「魔物についてはレイ様に聞いた方が詳しいですので、興味がおありでしたら聞いてみてください」
「ま……またの機会でいいデス」
魔物だなんて怖い。
知らず知らずのうちに小さく震えていた。
それに気がついたカインが、話をすばやくかえた。
「そういえば、アリス様。本日、婚姻を結ばれましたので部屋の移動がございます。
今までは客室をご利用頂いてましたが、今日からはルーク様と寝所が同室になります。
個人の部屋として隣に個室がありますが、理由が特になければ寝所は同室にしてください」
警備の都合です。とのことだったが、婚姻したからってことは、初夜ってこと?
キャーーー!!
わーすーれーてーたー!!
私も十九歳ですから、初夜がどういうことかは分かる。同級生の中でも早い子はそういうことを致している子もいたし……。
きっと私は遅い方だけど、あんなことや、こんなことの知識だけはあるわけで………。
いや、知識しかないわけで……。
でも心の準備と言うものが……。
友達はやったときなんて言ってたかな……。もっと聞いておけばよかった!
それに、ルーク様はどう思ってるのかな……?
いや、そもそもこの世界に初夜があるかもわからないし、ルーク様お忙しそうだし……。
「……ス様、アリス様! 大丈夫ですか?」
ハッと顔をあげると、カインが心配そうに覗き込んでいた。下を向いたまま長い時間考え込んでいたらしい。
「お疲れでしょうし、今日の勉強はこれぐらいにしましょう。今から新しいアリス様のお部屋にご案内いたしますね」
やってしまった……。
人前でエッチな妄想をしてしまった……。
穴があったら入りたい……。
心の中で小さく反省しながらカインに案内された場所は、先日入ったルークの部屋の二つ隣で、寝室はルークと私の部屋に挟まれた部屋らしい。
私の部屋に案内されると、先ほどまで使っていた部屋と同じようにヨーロッパ風のかわいい家具でまとめられていた。一つ一つのお値段はかなり高そう。
ソファーとテーブルのセットに、簡易キッチン、お風呂やトイレ、ベッドまであり、かなり充実していた。また、衣装部屋には、新しいドレスがたくさんあって、さらにはアクセサリー類もたくさんあった。
すごい量に驚いたが、マリンからはまだまだ足りないぐらいだと言われた。
そんなにあっても着れません……。
「家具やドレスなどはルーク様がアリス様のために選んでおいででしたよ」
と、マリンが言うので顔が赤くなる。こんなにかわいいもので揃えてもらってうれしいやら、恥ずかしいやら。
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