ロッドの回想①
僕が13歳の時、両親と妹が交通事故に遭った。
両親は奇跡的に命をとりとめたが、妹の方は助かる見込みはなかった。
RAIとして妹の記憶をAIに残す道はあるが、莫大な費用がかかり、身内の承諾が必要だった。
両親の意識はまだはっきりしていなかった。
「君の姉さんはまだ到着しないらしい。待とうと思ったが、手遅れになるかもしれん」
「RAIとして再生させるかね?」
「……」
(何……?)
一瞬、何も考えられなくなった。
次に、恐怖が僕を襲った。
RAIを一度見たことがある。
今まで生きて動いていた妹が、あの鋼鉄の中に?
「君の両親が費用を払えるかどうかわかるかね?」
どうしてそんな事を僕に聞くのだろう。
お金のことなんてわからない。
父に払えるのか?
わからない、わからない、わからない……。
両親が目覚めた時、僕はすぐに近付けなかった。
(僕は……)
父と母は僕を抱きしめた。
そうして、すべてを知ってこう言った。
「お前のせいじゃない」
「……」
父は僕に選択を迫った関係者をひどく責めた。
「なぜ、子供にあんな重荷を背負わせたんだ!」
母は繰り返し、僕にこう言った。
「自分を責めないで」
理屈はわかっていても、僕は自分を許せなかった。
大切だったのに。
守りたいと思っていたのに。
「操作を知らない子供を運転席に座らせたようなものだ」と誰かが言った。
ならば、僕は大人でありたかった。
判断のできる大人に。
助けられたかもしれないのに。
姉は、「私のせいだわ。」と言った。
違う。
大人は忘れても僕は忘れない。
僕が殺したんだ。