表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北の風  作者: 超カブト
1/2

ベランダ

大学生活もあと一年、そろそろ就活でも始めるかと周りを見ながら始めたものの特に何もやってこなかった自分を恨みながらエントリーシートやら企業説明会やらと手を出してみたはいいものの、頭も体もついていかずどうしようもなくなった。

それから一か月家にこもるようになり一歩ぐらい外に出るかと考えてベランダに出た。

外の少し肌寒い風が心地よかったが隣のベランダからタバコの臭いがしてその元凶を発見。

「あの、臭いんですけど」

「あーそれは悪いことをしたね」

言葉だけの謝罪が返ってきた。

全くやめる様子はない。

それが彼女との出会だった。






-------------------------------------




隣に人が住んでいるのは知っていたがどんな奴なのかは知らなかった。

ここ最近は外に出ることもないし、家に引きこもっていたし。

それからベランダで会えば少し会話するようになってわかったがどうやら彼女も3年前から住んでいたらしい。


「ほぼ同時に住みはじめたのに全く見たことなかったんですが、外出てます?」

「出てないね、全く」

会話終わり。

まあ聞いたら答えてくれるだけましか。

「彼氏いるんですか?」

「いるよ」

「どんな人?」

「かっこいい人」

なんだ彼氏いるのかよ。

引きこもり女のどこがいいんだか。多少顔はいいかもしれないけど。

「タバコやめろとか言われないんすか?」

「別に」

どうやら盲目的な彼氏のようだ。

「今の時代、ご近所トラブルとかもあるし、吸える場所も無くなってきてるんだからやめた方が得ですよ」

「そっちこそ男のくせに女みたいなかわいいボブにしてるけど短髪にした方がいいよ、就活に対しても女子に対しても受けが良くないと思うけど」

反撃が来た。就活してたのばれてるんかい。

「長い方が朝早く起きる必要がなくて楽なんですよ」

「それはわかる」

「それよりタバコやめてくださいよ。風でこっち来るんですけど」

「あーごめんごめん」

これはやめる気ないな。

彼女との会話はタバコを一本吸い終えるまでの数分程度だ。毎日ではないがタバコの臭いがしだすと大体ベランダにいる。

いつの間にか彼女と話すのが日課になっていた。


「普段なにやってるんすか?」

「寝てる」

「金は?」

「ある」

一体何者なんだか。

「いいですね。こちとら貧乏だから常に金欠ですよ」

「働け」

ダメ人間から正論を言われた。

「どうにも就活がピンとこないんですよね」

「そんなの当たり前だろ。みんながピンとくるものをやっているわけじゃないんだから。それなりに妥協してそれなりの仕事に就けばいいんじゃない?」


きっとそんなものなんだろう。考えすぎても仕方ない。

ポジティブでもなんでもないがなるようになるか。


「音楽に関係することでもしてみれば」

「なんでですか?」

「たまに下手糞なギターがきこえるし」

「下手糞は余計です」



少し前にちょっといい人かもとか思ったのを後悔した。

ていうか聞こえてたのかよ。

就活とギターを頑張ろうと思った。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ