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これが俺のスキル


「スキルは神様からの贈り物。神様が持つ神秘性をほんの少し分けていただいたもの。だから人に発現するスキルはどんな奇跡でも起こり得るのよ」


 小さい頃、村の協会でシスターさんが言っていた。当時の俺はどんな奇

跡でも起こるなら変じゃないかと納得していた。近所の子供たちも大して騒いでなかったし、そんなスキルもあるだろうと思い込んでいた。


 でも今ならわかる。俺のスキルはかなり歪で、特殊で、あり得ないものだと。






「すまんな、攻撃面も防御面も安定しないお前とじゃパーティは組めねぇわ」

「そ、そうか……」

 通算百回目のパーティ申請の拒否。剣士風の男性の後ろ姿を見送り、俺は深いため息をはいた。

「ご、ご主人さまぁ……元気だしてくださいですぅ」

 俺のスキルの特異性その一。喋る。


「大丈夫だロッテ。もう慣れた」

 先程からぎゅっと俺の手を握って離さない幼女に空いている方の掌で撫でる。


 その二。触れる。

 その三。人の姿をとる。

 その四。食事をする。

 その五。痛覚ある、呼吸する、学習する、エトセトラエトセトラ。

 もう全部まとめて変なスキルってことで。


 ここはハンターギルド。害獣や危険なモンスターなどの討伐、未開の地の探索や薬草の調達を委託する場だ。

 俺ももう十五と、自分で食っていかねばならない歳なわけで、仕事には困らないハンターギルドに来たわけですが……。


「え、なによく聞こえなかった」「その幼女がスキル? あ、ごめん友人に呼ばれてるんだった、この話はなかったことで」「おう……そうか、じゃあな」


 ロッテをスキルと言うとこの反応であった。ここで俺はロッテというスキルが異常であることに気が付く。

 ロッテを妹という設定のもと、再挑戦したが……。

「ごめん、そんな変なスキルに背中は預けられない」「レアスキルみたいだけど運に頼りすぎるのは……」「おう……そうか、じゃあな」


 惨敗である。最後のおっさんに至っては二連敗だ。


「ロッテ、今日も近場でスライム狩りになりそうだな」

「はいです! なんとか今日も宿屋に泊まれるように頑張りますです」


 両手の拳を上に突き上げ意気込みをあらわにする俺のスキルに、自分の惨めさが込み上げてくる。

 仕事を探し、上京してきてはや数週間。ずっとスライム討伐しかこなしていない。

 仲間さえ、仲間さえ見つかれば……。

 無い袖を振れるはずもなく、俺は常設の依頼板からスライムの木札を取り、受付へと持っていくのだった。






「さてロッテ。今日も頼むぞ」

 顔馴染みになりつつある門番に挨拶をして門を抜けた先。数十メートルで止まる。

「はいです! んしょっ……と」

 ロッテが地面に触れるとそこからにょきにょきと円盤が生えてくる。その円盤は三六区分されており、赤と黒の数字が交互に書かれている。数字はロッテがこの円盤を出す毎に変化していて、俺のみたことある数字の中で一番大きかったのは一〇八だった。

 円盤がひとりでに回転を始める。


「ま、マスター。今回は青玉みたいです……」

「うわぁ……青玉かぁ今日もキツくなりそうだ」

 ロッテが手元に出現した材質不明の球体を見せてくれた。その色は青。思わず酸っぱい表情になる俺たち。

「まぁ投げてくれ」


 玉が円盤の外周を走った。やがて数字が書いてあるポケットのひとつに入り、ロッテが宣言する。


「ブラックのNo.008 スキル『石ころ』です! 青玉なのでレベルは一なのです」

「はい、作戦会議ぃぃぃ!!!」

 若干どや顔の白髪幼女に今日を生き抜くための作戦会議を発動した。


「そもそも石ころってどんなスキルだよ」

「はいなのです。石ころはその辺に落ちてある石ころのように扱われるスキルなのです」

「ごみぃぃぃぃぃ!! どう使うんだよこんなスキル」

「因みにパッシブスキルなのです」

「さらに使えねぇよ!! なんだよ蔑まれるパッシブって! 俺、今日一日ずっと蔑まれなきゃいけないの!?」


 俺のスキル『ルーレット』はこのように日に一度スキル自体が変化する特殊なスキルである。変化先、スキルレベルは毎回ランダムで戦力としてのムラが激しすぎるため、命懸けの仕事もあるハンターギルドでパーティを組めない最大の要因である。

 効果は一律夜の十二時までだ。


「ま、マスターにはロッテがついてるのです!! ロッテがなんとかするです!」

「なんとかって言ったって……」

 ロッテはスキルであって見た目も幼女だ。もちろん力も外見相応。完全に戦力としては宛ににならない。


「あ、スライムです!」

 やる気をたぎらせてるロッテの標的にされた青い雫の形をしたゼリー状の魔物。半透明のその体の中央にある赤い石のようなものを引き抜くか壊せばすぐに死んでしまう最弱の魔物だ。

 しかし繁殖力が強く、何でも消化してしまうその食性から、放置しておくと魔物から街を守る防御壁などに穴を開けてしまう厄介なやつである。


 とてとてと走っていき近くで拾ったであろう木の棒でペチペチ叩くロッテ。


 ロッテの攻撃!

 スライムには効果がないようだ。

 スライムの体当たり。ロッテは泣いてしまった。


「負けてるじゃんか!」

「まーずーだぁー!! いだいでずぅー……」

 はいはい、よしよし。ロッテをなだめて俺はスライムへ近付く。

 驚いたことにスライムは俺にまったく警戒心を持たず、真下の雑草を食んでいた。いつもならこの距離で脱兎のごとく逃げ出すのだが……。

 もしかしてこれって魔物にも有効なスキル!?


 手をスライムの中に突っ込んでみる。反応なし。

 そのまま核を引っこ抜くとゼリー状の体がばしゃりと弾けてあっけなく死んだ。


「……」

「……」

「……あれ? 結構使えるスキルじゃね?」

「……なのです?」


 このあとめちゃくちゃスライムを乱獲した!





「すいませーんスライムの討伐終わりましたー」

「……」

「あのー!!」

「……」

「スライムの討伐終わったです!」

「あら、ロッテちゃん! お兄さんは?」

「ここにいるです!」


「石ころなんて拾ってどうしたの?」


「Oh...これが石ころのスキルか……」

「なのです……」

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