最終話 今楽しめるなら隠し事も悪くはない
最終話です、おおよそ……改稿案件です。
何度も考えましたが、内容変更も考えています。
学校の登校日だったはずだ。
俺は眠い体を持ち上げて、2階から洗面所へ歩いた。
リビングでは母親が飯を作ってる姿が写っていたが、とりあえず顔洗おう。
母親はなんでこんな時間に? あぁ……一応学校まで送るためか、昨日メールで言ってたな。
「時間が無いんだから早く用意して」
1人そんな事を考えていると、さっきの足音で気づいたのか母親が飛んでくる。
時間は6時、まだ間に合うだろ……こっちは眠いんだから。
眠そうな俺に対して、母親は俺の髪を直したり顔を洗う手伝いをしていた。
俺がやると言っても、どうせ時間かかるなら自分がやったほうがマシ、と言われてなすがまま俺は立っているだけだ。
家から出て車に入る頃には、別行動のセナがメールで愚痴を言ってくる。
始業式が行われている頃の時間だと思うのだが……。
『件名:暇だ、相手してくれ
話長い校長や他の……なんだっけ?あの話長いわ。
ニナも半分寝てるし、俺も立ったまま寝るか。
いいなぁお前は、終わって紹介までこっちこないだろ?』
携帯取り上げられても知らないぞ……。
あいつ分かっていないな、始業式終えた校長に会ってその後に生徒全員にあたかも初対面に見せなきゃならないんだぞ。
勘ぐられる事はまず無いと思うが、変な事は言いそうで怖いわ。
あいつの携帯の音鳴って怒られる姿を楽しみたかったが、その場で見れないのでメールは控えておいた。
「着いたわよ」
「はいはい」
母親に連れられて、学校の中に入っていく。
新鮮って訳じゃないが緊張するのはなんでだ? 新入生でも無いのにな。
そういえば、去年の奴らにはほとんど話しかけた事が無い奴ばかりだからいいが、面倒事に巻き込まれるのだけはごめんだから弁明出来るようにはしとかないとな。
始業式から戻っていないのか、誰も居ない教室を通り過ぎて学園長室の前に着いた。
「失礼します」
「はい」
母親がノックすると返事が返ってきたため、2人で入室する。
俺が学園長に向かって1礼すると、関心したように声を上げた。
柄に合わなすぎるな、やっぱり適当にして……いや、母親に睨まれそうだから止めておこう。
その後、学園長は母親と少し喋っている姿を見つつ、廊下に足音が聞こえてくる。
「そろそろ、貴女がこれから通う教室を紹介しましょうか、そろそろ担任の先生が来ると思いますので」
「はい、お願いします」
母親は仕事があるらしいので、先に帰るとのこと。
帰り際に、鋭い視線を送られた気がするので、適当にやったら承知しないということか。
ゲームの中よりもう少し大人し目の方がいいか? いや変に考えるとボロが出た時大変そうだ。
奏世先生が入ってくると、口には出ないほど小さな溜息を出していた。
学園長に「くれぐれも失礼の無いように」と釘を刺されて、俺の案内をすることになった。
「貴女の学園生活が素晴らしいものでありますように」
そう言って、学園長は俺達2人を笑顔で送り出した。
最近ニナとかに仕込まれたが、まだ女性らしくってのが良くわかってないな。
そんな事考えていると並ぶように歩いている先生が、ごく自然にこちらに話しかけてくる。
「様になってるが、大変だったろ?」
「さぁ、割と自然と出来たつもりですよ?」
口調と態度はそのままで、横に歩く先生に答える。
その言葉に先生は「嘘つけ」と言いつつ、笑った。
まぁ実際には、まだ全然過ぎてニナとか母親にグチグチ言われそうな気がしてならない。
「あのゲームも程々にしろよ、それで体調悪いとか言われたら強制的に連れ出すからな」
「その時は無理やり休もうかな~」
こんなふざけた話を出来るのも、事情を知ってるこの先生だからこそだな。
話をしていると、先生が立ち止まって「ここの教室だ」というと。
中ではざわざわした声が聞こえてきた。
雑談も含み、期待の声だろうか。
正念場か、緊張してたのは本当だが、いざとなるとやばいな。
「先に行く、呼ばれたら入ってこいよ」
転校したわけじゃないのに、新鮮だな。
奥で話をしている声が聞こえる。
生徒の声と混じった先生の声に反応出来るようにしておく。
「入れ」
中に入ると、教室内の男子も含んだ全員がこちらを見つめてきた。
こうなることは思っていたし、嘘がバレないと程度に誤魔化すか。
「黒旗春乃といいます」
そして俺はみんなとは違う緊張をしつつ、自己紹介をした。
女子とかの質問攻めに四苦八苦しながら、男子は遠目に覗かれて内心ぐったりしたまま、放課後になった。
もちろん、ぐったりする動作はしないが、疲れた。
ただやっぱり救いだったのは。
「ハルも大変だね、人気者~このこの」
「やめてください」
「あはは……沙月も意地悪がって、質問してたのに」
この場に参加していないセナと、ニナと御梅が一緒のクラスな所だ。
御梅はともかく、ニナは質問攻めに対して色々気を使って沈めたりしてくれていた。
ニナとの関係について聞かれたが、親経由で先に知り合ったという話にしたため、割とすんなりと受け入れられた。
「セナはどうしたの?」
「中に入りづらいとか言って、メールだけ送るって言ってたよ」
「来てました?」
御梅の質問にニナが答えるのを聞いて、メール来てる事を気にしてなかった。
すると内容は『さすがに、知り合いとはいえ入りづらいわ』という内容だった。
それには同意するが、先程まで囲まれてた俺じゃ説得力もないか。
そうだな『今日ゲーム付き合ってやるから、それで許せ』とでも返しておくか。
「……れで今日、どこか寄らない?」
「……いかも! 私も寄りたい所あったの」
放課後なのに、この2人は元気だな……ゲームやろうとしてる俺が言うのはおかしいか。
メール送信してたため、全然聞いていなかった。
「それでハルはどうする?」
「え? 聞いてなかった……」
「これから少し食べに行こうかなと思って」
すまんセナ、遅れる事になりそうだ。
それに乗じて、女子生徒が数人一緒に行きたいと言い出したり、大変だった。
後は部活の勧誘とかも含めて大変だった。
帰る頃には少しの時間しかないが、まぁいいだろう。
セナにメールを送ると、文句も含んで了解との事だ。
風呂入る前にゲームやってそれから……と色々考えてVR機器を付けてゲームの中に入る。
「まったく、これだから女子というやつは……」
「それ私に言ってもしょうがないような気がするけど」
ゲームの中に入って、セナと合流すると、口々にぼやいていた。
こいつも学校の中では俺と同じやんちゃだからな、一緒にふざけられないのは、つまんないんだろう。
まぁその分ゲームでふざければいいか。
「そうだ、ハル。これから遊びにくいからさ、作りたい物あるんだが手伝ってくれるか?」
「話が急すぎ、別に構わないけど、支障ないようにね」
「あぁ、ギルドを作ろうと思ってな。そうすれば、場所も分かるしメールも送りやすい」
ほぅ、ギルドか。
どうやって作るかはこいつが調べてるだろうから、しょうがない付き合ってやるか。
セナは「他の2人にも頼んである」お前には他の事頼むからな。
すると、ゲーム内から2人がメールが届く。
内容はなぜか長かったので、要略しなきゃならないが。
『1人で厳しそうだから、手伝って><
セナの奴なんでこんな敵要求するの!
無理!』
『お金稼ぎ難しいから、余ったらお願い。
私もみんなとやりたいし、一緒にがんばろ?』
この2人もやる気なんだな。
リアル時間のアラームみたいな物探しておこうか、こんな事続けたら確実に寝坊コースだ。
セナの要求はというと。
「お前は、これだ」
「これはメモ用紙?」
ちょっと待て、お金は分かるが2人に頼んでこの数か?
そんなに1ヶ月以上かかりそうな、数なんだけど。
採掘や園芸も含めてあるから結局色々やるようじゃないか。
「半分は俺がやるが、早めに終わったら頼むな」
無駄に綺麗な顔で言いやがる。
そんなセナに俺は呆れつつ、今日できそうな事を考えつつセナと分かれる。
本当の空じゃない夜空を眺めつつ俺は、1人考える。
ゲームを始めてこんな事になるとは思っていなかった。
だけど女になってよかったと思える事もあって、楽しめそうだと思っている。
これから現実は大変だと分かってるけど、今までの何もやる気起きないほど疲れてもいない。
少し変わってしまっても、ゲームの中で一緒に遊んでバカみたいにはしゃいで。
みんなと楽しめるなら俺はこれからも、この人生を楽しんでいけるだろう。
ゲーム始めた時に言っていた新たな人生を楽しませてもらう。
おそらく、誰にも言うことの無い1つの秘密。
利用規約を見ないで偶然やってしまった事実を。
性別が変わることを用語ではTSというらしいが、どうでもいい。
利用規約を見ないでゲームを始めたらTSした事なんて今後誰も言うことは無いだろう。
そして俺は、1つのゲームを楽しむ為、街の外へ駆け出した。
42話という短い期間でしたが、だいぶ時間を取って作りました。
全話誤字修正→内容見直し→確認作業を繰り返していきます。
ありがとうございました~。
(外伝とか作るって言ったけど、内容どうしようか……)




