39話 よく分からない感情より友情を優先する
やばい、改稿案件がまたもう1つ増えてしまった。
全力シリアス、なぜこうなった?
遅れて申しわけありません!
ゲームからログアウトした俺は、2階から1階へ降りて連絡しようか悩んでいた。
ニナに待ち合わせするか考えていると、玄関が勢いよく開かれた。
誰だと思って玄関を覗くと、ニナが立っていた。
「ごめん、ね……急いで来ちゃった」
「あ、あぁ構わない」
少し予想外だった、と言えばそうかもしれない。
家が近いと言っても、歩いて7分程かかる距離だったはずだし、何故そこまでしてと思った。
息を整え、走った時に乱れた髪を触りつつ、こちらに笑顔を向けていた。
「少し出かけ」
「ここでいい」
「そうか……」
気をつかったつもりだったが、ニナにとっては違うらしい。
もしかしたら、飾った言葉よりも『俺自身の言葉で聞かせてほしかった』のかもしれない。
だとすればこの場でお互いが知っている素の自分で話す他ないな。
言葉は無くても、ニナの真剣な表情はそんな事を言ってる気がした。
「お茶を入れるから、ソファでゆっくり話そう」
「うん、でもなんか……その、ちょっと気恥ずかしいね」
「そうか? まぁ両親も似たような事してるしな」
ニナの言った意味とは違うかもしれないが、仲いい両親も喧嘩はする。その時はこうやって互いに向き合ってお茶を飲んでた。
だいたい下らない事だったが、幼い頃から見ていて喧嘩の少ない両親の事だからよく記憶に残ってる。
温かいお茶を自分が座る近くのテーブルと、向き合った位置にいるニナの近くに置いた。
俺は静かに座って、話始めた。
「さてと、改めて話す事じゃないけど、俺はこのままの姿で居たいと思ってる」
「うん、一緒に話していても……そんな事1つも言ってくれなかった」
「あぁ、俺は楽しかったんだ。お前らと一緒に、こうやって馬鹿みたいにはしゃぐのが」
3日か4日前か、オナさんから言われた言葉が無かったらまだ俺は迷っていたかもしれない。
何故なのか、今なら分かる。自分が本当にどっちでもいい存在になっていたからだ。
この女性の体で過ごしていた時間と、今まで男として過ごした時間。
変わらなく生きれば、結局変わりもしない。
「なんで……? そんなの何時だって出来るのに、今までそうやって一緒に遊んできたのに!」
ニナの声は震えて、今にも泣きそうな顔が見える。
正直、誤魔化したいと思っていた、もう少しとはいえ時間がまだあったから。
でもそれじゃダメなんだ、それはニナが苦しむだけだ。
もし、俺がこの気持ちの意味をもっと早く気づいて、その思いと共に過ごしてしまえば違っていたかもしれない。
今までありがとう、それは過去の自分からの感謝。
そして今は、これからもよろしくと言えるように、割り切られるように。
「前の俺は、死んでしまっても構わないなんて思ってた。それがゲームを始め、こんな体になるなんて思っていなかった」
最初はそうだった。
「お前が俺だと気づいてから、1つ1ついろんな事が起きた。赤飯とか馬鹿みたいにな」
自分の感情が壊れてたのかもしれない。セナが言ってたようによく笑うようになったのは多分そういうことだ。
「これだけじゃない、他にも語りたい事がいっぱいある。今までの俺では考えれないことだった」
「……本当に、もう戻る気はないの?」
俺が言い切ったとき、ニナは小さくそんな事を呟いた。
ニナの方へ顔を向けると、頭が下がり前髪の茶髪で顔が隠れて見れない。だけれど、分かってしまった。
体が震えて、1つ1つ床の方に雫が垂れているのに。
あぁ……セナと約束したのにな、またやってしまった。口約束とも取れない言葉だったが、こういう友達のは守りたかった。
「ニナ、俺は許されない事だと思う」
「許さない……許したくない、絶対。じゃないと私が知ってるゼノが居なくなる」
「それでも、俺は元には戻らない。だからお願いだから……」
「言わないで!」
「元の俺を忘れてほしい」
どんなに頑張っても記憶は消えない。それも好きという感情を知ってしまった今なら余計に。
だからこそ、前の俺を忘れてほしかった。
ニナが俺の名前を呼ぶ時、他人が居てもゼノと呼ぶのはそういうことだろう。
先にも後にも、俺の事を思ってくれるのは嬉しいと気づけた。だからこそだ。
「それじゃ、誰がゼノの事覚えるの? 私だけ覚えていてもいいじゃない」
ニナは泣きながら俺に訴えた。
気持ちも分かる……いや、分からないか。
覚えてくれるのは嬉しい、だからこそ思った事だ。
難しいかもしれない、俺も自分を忘れようとしているから。
「一緒に、楽しい時間を過ごそう。前と同じようには行かないと思う、だけどあいつらとも遊べばいい」
俺だけじゃない。他の奴らも思う所があると思う、もちろんセナや両親だってそうだったはずだ。
だから、ニナも割り切れるように、一緒に楽しんで……忘れられる様に。
ニナは嗚咽を漏らす。
言葉と共にさりげなく握った手は、冷たかった。
そんな時、2人にメールの着信が鳴った。
『件名:おいちょっと来てくれ
御梅のやろう、俺が頑張ったって言っても信じねぇ。
俺らのコンビで魔物狩ってやろうぜ! どうせ話してるだけだろ?
さっきと同じ場所だからいい機会だし、見せてやる』
真面目な話をしていたってのに、こいつらは。
そのメールを見て俺は笑っていると、目の前からも小さく笑い声が聞こえた。
ニナも御梅からメールが来たのか、涙を拭って笑っていた。
まぁいいか、こいつらに救われたってことにしてやろう。
「ニナ、あの馬鹿共の所へ行くか」
「そう、だね。泣いてたのがバカみたい」
そう言って、俺はニナの手を引いて、再びゲームの中へ入っていった。
次は10月17日までに
後2話ですよ(早く投稿しろと何度も……)




