38話 笑って楽しめれば苦行もまた楽しみ
は、早く投稿出来た(大丈夫かな……)
何故かそのままズルズルと明日まで手伝わされて、今度は全員で来いとか怪しくてしょうがない。
流石にずっとゲームしている訳には行かないので、身の回りの事とか手伝えと愚痴を言うと。
普通に手伝うから憎めない。
全員という事はニナと御梅辺りだろうという事で連絡を送りつつ、セナの待つところへ向かう。
「よっ、すまない。他の奴らが来るまで制作してるから待っててくれ」
少し前に来た着物を買った店に着くと、セナがこちらに気づいて声を掛けてくる。
制作とは言うが、こちらからは光る玉の様な物を急かしく何かやってる様にしか見えない。
というより、何をしてるか分からん。
「ねぇ、これって……」
「クオリティーレビュー……ウォークヴィジョン、エレメンタルクリエイト……」
聞こうと思ったが、セナが話す合間も無いように凄く早口で呟いている。
手も順調じゃない速さで動かしてる……いや何してるか分からないのだけれど。
生産職というのも、割と大変な物なのかもしれない。
することが無い、というよりは見てるしか無いと言ったほうが良い。
ボーッとするのも無駄なので、笑顔のままの店員に聞いて物を覗いていた。
『件名:なんか怪しい
私もニナと一緒に来るけど……なんか怪しいんだよね~
手伝ってたみたいだけど、何か知らない?』
メールの内容を見て訝しげにする御梅の顔が浮かぶ、実際の俺も知らないし、適当に返しておくか。
ロクでも無いことは確実だしな。
というより、何故知ってる? あぁ……ニナなら多少予想かセナ本人に聞いたか。
「と、そういえば。制服は届いたのか?」
「ん? あぁ~、まだじゃない? 学校始まるのは明々後日だし、今日か明日って所だと思うけど」
集中してると思ったからびっくりした。
体がビクッとなったし、突然話しかけるのはやめてくれ。
数分すると、2人が到着した。
セナの方に文句言いながら作業を覗き込むと、高速の手付きに早口でギョッとしてた。
「呪文?」
「スキルだと思うけど、数が段違いに多いとか言ってたね」
呟きを聞き取ったのか、そんな感想を漏らしていた。
恐らく本人は普通の物を作ってるのだろうけど、傍から見たらただの怪しい人だからね。
憎まれ口を叩いても反論してこない所見ると、本当に集中してるんだな。
「そういえば、結局どうするの? ゼ、ノ、君?」
「……ちょ、ちょっと沙月」
「決めてある、けど。言うのは少し待ってほしい、俺にも心の準備が」
そんな事言ってると、他の誰かに取られちゃうよ~? とか意地悪な笑顔で茶化しながらも、御梅は明確な言葉を待っていた。
ニナもそれには同意の様で、御梅の横で頷いていた。
気持ちも多分、分かる。
本当はすぐ答えを言えるといいのだけど、今までのが壊れそうで嫌だ……。
「よしっ! 終わった~!」
突然の叫び声。
その瞬間に考えていた頭が切り替わって、呆れた声を自然と出した。
「それで? わざわざ集めたのはなんで?」
「俺の渾身作、それぞれに渡すから着てみてくれ!」
何の服だという問を言うよりも早く、トレードを申し出てくる。
はぁ、さて吉と出るか凶と出るか……いや、確実に凶だな。
交換に応じて上下の服を渡される、意外と普通そうだが? いや、なんかこの服見たことあるぞ?
セナを追い出す。
2人はやり方を知らないらしく、教えて着替える所まで行ってから自分もその服に着替えようか。
とりあえず装備に服をセットしてみる。
うん、絶対アレだよな。
「わぁ、凄~い!」
「うん、これ凄い」
2人が感心しているのを見て、そちらに視線を送ると。
御梅にはくノ一に合わせてなのか忍服、ニナには職業が決まってない為私服の様にシンプルなワンピース。
ただ気に食わない、何故? それは。
「何故メイド服なの?」
「似合ってるよ~、ぷふっ」
ノリで着てしまったが、入ってきたら速攻で殴ってやる。
御梅は元の姿と比べて笑ったのだろう、多分。
恥ずかしいだろ普通に。
そんな事を思っていると、能天気に入ってきたセナの顔面を不意打ちのつもりで殴る。
「終わったか? 職業にあわ……ぐはっ!」
「合わせてないでしょうが! 確かにボマーはイメージ付きにくいけど、メイド服は無いでしょ」
大げさにセナは倒れているが、痛みどころか押されたという感覚だけの筈だ。
ヒラヒラのスカートに、可愛げのある背中のリボンとか、貴様の趣味以外無いだろうが。
元男の友人にこんな物送るアホがいるか? こいつくらいな気がする。
「でもお前なら分かるだろ? 男のロマンだ」
「まぁ分からなくもないけど、自重しろ」
「男ってこういうの、好きなんだ……」
つい、ボロを出してしまった。
これは御梅にひたすらいじられるな、最近は無いと思ったが慣れてきたのか何時もと変わらない会話になってる。
ニナは少し俺の姿を見て呟いていた。
「それに性能は悪くないと思う、ハルに関してはずっと鎧系統を着ないで戦闘してるだろ? くらわないのが一番だが、生存高まるだろ」
「しても趣味が悪すぎる」
「素材が取れればいいんだが、鎧とかは鉱石に加えて上のモンスターが必要だしな」
それっぽい事を並べているが、着てほしかっただけだろう。
入ってくるプレイヤーを俺の方を見てるし、視線が気になる。
まぁ、自分の作ったキャラだったし……うん、可愛いな。
「だけど、普通には着ないかな」
「私も戦闘ある時は着るかもしれないけど」
ゲームの中だけど、流石に恥ずかしいと言って着替えていた。
俺も着替えるか。
あぁ、勿体無いとセナが呟いた。
「私はこのままでも良さそう」
ニナだけは普段着に近い感じで、そのまま嬉しそうに笑っていた。
セナと話しているときに、御梅と何か喋っていた様だけど、まぁ今は気にしない。
着替えた俺達にセナは床に手を付いてガックリしていた。
「何故……」
「いや、普通でしょ」
「うん」
セナの嘆きに2人で容赦なく言い放つ。
その後、セナが御梅に詰め寄って抗議しているので俺は呆れて、ニナの方へ顔を向ける。
ニナは2人の様子に笑いながら見ていた。
「ねぇ、ニナ」
「うん、どうしたの?」
「この後、いいかな」
どうなるか分からないのなら、もう逃げるのは止めた。
すぐに同じ形に戻らなくても、きっと戻れる筈だ。
ニナに「現実で話をしよう」と聞く。
まだジャレあっている2人に先に落ちていると断りを入れてから、ログアウトする。
会う場所は前に行った、お爺ちゃんがいる喫茶店でいいだろうか。
深刻な話をする場所では無いけれど。
昔話と共に答えを言おう。
次は、9月27日までに




