31話 服は着れさえすればいいで通らないのか
次で最終章の『予定』です。
改稿工事します。なお、もしかしたら遅れる可能性もあります。
6月14日工事→6月23日完了
今更だが、セナはなんでニナと一緒に来たんだ? と思った。
1人で来るもんだと思っていた。
それに加えて、ニナは2人でやっていた? らしいが、俺は抜きだと考えると少し寂しいな。
「……言ってくれれば良かったのに」
「どうしたのハル?」
「ううん、なんでもない」
最近の俺はおかしいな。
ゲームなんて1人でも楽しめればいい、なんて言ってたのに寂しいなんて思うなんてな。
ニナに俺の呟きは聞こえてはいなかったようで、首を傾げていた。
「こいつ意外と寂しがり屋だからな、教えてもらえなくて拗ねてるじゃねぇか?」
「そ、そんな事無いよ」
笑いながらこっちに来たセナにそう言われて、図星なので即座に反論が出来なかった。
デタラメで言っているだけ、セナにそんな事が分かる訳がない、第一言ったつもりもない。
そんな事を考えていると、後ろから御梅が抱きついてくる。
「大丈夫、ハルを置いてみんなでやるなんて事しないから」
「別に」
あの時1人で何しようか考えてたし、やることあったから。
御梅に抱きつかれながらそっぽを向くと、みんなからかう様に笑った。
それよりも、ここに居てもただ時間が過ぎるだけだ……別に俺はこのままでも構わないけどな。
「これからどうするの? 何もしないよりは、なんかした方がいいでしょ」
「あぁ……そうだ、最初の街でやることあるから俺はあっちに戻るぞ」
「用事? なんか怪しい」
セナは何がだよ! と御梅に問いただすが「さぁね~」と知らん顔をしていた。
1人で出来る事って言ったら、レベル上げか? 制作系はコツコツと1人で上げるしか無いし、手伝える事もないだろう。
ニナはこちらに来て「どうするの?」と聞いてきた。
「セナはレベル上げでしょ?」
「あぁ、お前なら分かってくれると思った。素材とかは頼めるか?」
「え? もしかして、ハルに気があるの?」
変な言い方やめろ、それにニナなんでそんなに食いつく。
素材は、それこそマケボ探せとしか言えん。
俺だってレベルが高い訳でも無ければ、燃費の悪いボマーなんて職業だし。
「こっちの街で何かあっても面倒だから、前の街なら安全だと思うし一緒に行こう」
「……そうだな」
「ほら、さっさと歩く」
少し考えるセナの背中を押しながら、御梅とニナにも声をかける。
俺は道が分からない為、結局セナとニナに案内してもらわないと行けない。
湖のあった草原から、歩き続けると傾斜が少なくなって奥に大きな建物が見えた。
「こんなにデカイ街だった?」
「あぁ俺も外側を見てびっくりした」
近くに寄るにつれて、その大きさが異常だと言う事が分かる。
よく言われる東京ドーム何個分? くらいの大きさだろう。
最初外に出た時は周りの風景を見てた為か気にしてなかった。
街へ入る為の門に入ると、和服を着た人が歩いていた。
よく見ると、NPC以外にもプレイヤーが着て、おめかししている人さえもいた。
「着物に和傘なんて、あるんだな」
「場所に違和感を感じなかったから、後あの時はプレイヤーの方が多かったのもあるね」
「ねぇ、ハル! 着物買おうよ、着てみたい!」
お前、ゲームの方のお金あるのか? いや、それよりも店に売っている物なのか? 制作物だったら……。
セナの方を見ると「じゃっ!」と言って、走り去った。
お前逃げたな、売ってなかったら無理やり御梅が作らせそうだし、俺は逃げられないか。
「私は別に今の服で構わな……」
と言って去ろうとしたら手をガッチリ掴まれる。
振り返ると、ニナが笑顔でそこにいた。そして、御梅も逃さない様に俺の空いた片手を持っていた。
やめろ、連れて行くんじゃない……2人共笑顔が怖いから、本当に。
「2人で、楽しんできたら?」
「ほら、学校に通う様にならないと行けないんだから、女の子と遊べるようにね」
「そうだよ、女子は大変なんだよ?」
この2人是が否でも着せようとしていらっしゃる。
手をガッチリ掴まれながらも2人は「どこに売ってるんだろう?」「外観見れば分からないかな?」など喋っていた。
「多分、中に入れば分かると思うけど……」
そう言っている自分がいた。
楽しんでいるのではと、思っている自分を振り払いつつ、一緒になって探している。
歩き続けると、包装紙が置かれている店があった。
見た目を分かりやすい様に、そうなっているのかは分からない。
「中に入ってみよう!」
御梅とニナに半強制的に入らされていく、もちろん腕は固定されたまま。
入ると、畳に正座している店員が「いらっしゃいませ」とお辞儀をした。
2人に買い方を尋ねられたため、教えながら商品を探す。
そして――
「凄~い、本物の着物みたい!」
着物買えました……俺のお金で2人が買いたい物を買ってあげる事に。
男物と違って帯の辺り締まってるし、なんかスースーするのは……いやワンピース着てた時から思ってたけど。
かんざしなんかもあったりしたけど、長い髪をそのまま下ろした状態。
着る自体は簡単な事、メニュー欄で装備を変えるだけだから。
でもさ、これ動いたら見え……。
「お前ら買ったのか」
店の前で喜んでいる2人を見ていると、どこから来たのかセナが話しかけてくる。
そして俺の方を見て「ありだな」と言ってきたので、殴りかかってみる。
見切られ空振り。
「それでここでどうしたの?」
「いや、ここに店があるって言おうと戻ったら居なかったからな、出戻りだ」
それに、とセナは続ける。
「裁縫だからレベル上げるのここなんだよ」
確かに思えば、素材買うにもここだろうな。
必要な物はゲームでは意外と、こういう店で売りに出している。
ということで、と言ってセナは中に入っていった。
「もう、ハルには言って、私達には感想無し?」
「酷いよね」
面倒事を避けたかったのだろうが、逆効果になっているな。
そこに居ないセナに怒る2人から視線を外して空を見上げると、夕日が出ていた。
ゲーム内ではそろそろ夜になっていくのか。
すると電話がかかってくる。
「何?」
『明日、制服の採寸しなきゃ行くわよ』
あれ、珍しい母親からだ。
「唐突過ぎない!?」
『もう少しで春休み終わるんだから、そんな事言ってられないでしょ』
あれそんなにもう経ってたっけ?
それだけ伝えると、母親は電話を切った。
マジか、いや分かっていたけど、制服の存在を忘れてたわ。
「ハルどうしたの?」
「親から、明日制服の採寸行くって」
「あぁそういえば、制服無いもんね、ニナの着ていくにも胸が……」
そんな事を御梅が言うものだから、ニナに頬を引っ張られて「ひたい、ひたい」と言っていた。
とりあえずセナにも言っておくか。
春休みが終わりか、なんか色々あったけど……主にこの体のせいだが。
楽しかったんじゃないか?
そう思って、2人にも言って、今日はお開きにすることにした。
セナはどうせ暇だし、レベル上げしていくとのこと。
次は6月26日までにです




