18話 人にはそれぞれ性格がある
のんびり回!
焚き付けたのはいいが……実際の目的は、この街を抜け出して何処かにある街に行く事なんだがな。
考え込んでいると、2人組が俺に近づいてきて「なんでお前みたいな外国人に、指図されなきゃならねぇんだ?」「キモい~」など言ってきた……と思ったらこいつら待ち合わせした時に、話かけてきたやつらか。
2人に向き合って「別に指図はしてませんけど……自由に動いていいと思いますけど」と言うと、何か言いたそうにしながらも、俺が入ってきた方向に歩いていった。
そっちに行ってもいいが、まだあの虫が鉄格子のところにいると思うんだけど……まぁ俺には関係ないか。
「今、この街は占拠されています……ですので、ログアウトしたい方や付き合ってられない方は落ちても構いません」
「ログアウト出来るの~?」
みんなを見ながら言うと、疑問に思ったのか御梅が聞いてくる……出来るはず、拠点か安全地点で行うことって書いてあったからな。
御梅に「出来ると思うよ」と言うと、それを聞いてログアウトする人が半分以上だった。
ほとんど女性の方だけど、男性も落ちてる人がいた。
「俺達はやるぜ!」
「そうだ、やられっぱなしも嫌だからな!」
「ありがとうございます」
近づいてきて言う男性2人にお礼を言って頭を下げる……でもこの2人何処かで見たことあるんだよな……。
2人は同じ高校生だろうか、仲良さそうな感じだし、派手に暴れさせて満足してもらったほうがいいかもな。
頭を上げながら、そんな事を思って……周りを見ると、半数以上は落ちたようだ。
「それで、ハルこれからどうして行くんだ? てお前ら!」
「金田じゃねぇか、お前もこのゲームやってたんだな!」
「それよりも聞かせろよ! こんなキレイな女性と親しそうじゃねぇか」
ということは俺らが通ってる学校か? セナが俺以外に友達いるとは聞いてねぇし、俺もいないがな。
話さない奴の事は、基本覚えない事にしてるんだ……覚えてる時があるとすれば、有名人くらいだ。
セナは「あれだ、道歩いてたら色々あって出会っただけだ」と言っていた……適当すぎるだろ。
「話進まないから、進めるわね……目的は、次の街へ行くこと」
「街の開放じゃねぇのかよ!」
「そうしたいのは分かるんだけど、どう頑張っても勝てないから、仲間を呼ぶという内容なの」
クエストはあくまで次の街へ到達することが達成目標のはずだ、しょうじきこの街を出ようとするだけでも……全滅することも考えられたと思うんだけど。
人数は10人くらいだ、A区? だっけ、そこで救出や転移が出来たのが25人程度だからな。
セナが来れたって事は、俺らが落ちた所はA区に入るらしい……知った所で何の意味も無いが。
『件名:先生は帰ったよ
飽きちゃったみたいで「先に帰るわ」とか言ってたよ。
後は、ゲーム時間はほどほどにな……とか。
私はまだいるけど、早めに戻ってきてね、夕飯もあるし今15時くらいだから』
「……先生は帰ったか」
「何かメールでも来たのか?」
「うん、問題は無いよ」
小声で言うとセナが反応してくる、それに一緒の家でやってることをバレない様に無難な答えを言っておく……先生は元から飯を食べるためだったしな。
というか、こんな会話していたらそこの2人に……て思ってたら、凄いニヤニヤしながら見られてるんだが。
頭を抱えるしかねぇ、こいつらが学校で叫んだ瞬間に色々まずいことになるぞ……多分性格的な意味で、叫ぶタイプだろ。
「俺ら仲間だったのにな……」
「勝手に仲間入れるんじゃねぇ!」
「だって、なぁ? こんなに親しげなら時間の問題だぞ」
3人でやりとりしてるが、話を進めたいんだが……弁解したいが、この姿じゃ逆効果な気がするし。
手をパンパンッと叩いて「後5分くらいしたら、抜け道を探して街を出ようと思います」と言って、仕切り直す……のだが聞いてる人もまばらだな、焚き付けた意味が無いな。
すると、出ていった2人組が走って戻ってきた……意外と時間かかったな。
「ちょ、ちょっと何よあそこ!」
「あんなんいるなんて聞いてないぞ!」
「だから言ったじゃない、行動は自由だって」
言葉をかけると憎まれ口を言ってきたが、とりあえず無視をして、奥に扉があるからそこから出れるんじゃないか?
1人で歩いて行くと、セナと御梅が小走りにこっちに走ってきた……さっきの2人は自分達の話で夢中に鳴ったようだ。
2人は「そういえば、こっちの出口見てないな」「3人でいい気がするんだけど~」と言っている。
「様子見と場所把握かな?」
「どこに繋がってるのか分からないしな」
「ハルって、無駄に冷静だよね」
御梅の前では見せなくてよかったかもな、現実でかなり叫んでたから、かなり意外に見えるだろう。
そういえば、あの両親と子供は落ちたんだな……まぁ確かに危ない目に遭わせた上、危険だと分かっていてやるとは言わないだろう。
一言も言わない辺り、邪魔しちゃいけないと思ったのか……どうだったかは知らないがな。
「扉を開けるぞ」
「頼みます」
「行こう~」
特に苦も無く開いた扉には、暗くてよく見えないが……階段とその奥に小さな光が見える。
階段を躓かない様に、歩いて行くと……なんか後ろで言ってるな「スカート覗かないでよね!」「覗かねぇよ!」というやり取りが聞こえる。
俺もそうだが、暗くて見えないだろう……ちょっとした拍子で見えるかもしれんが。
「これ……扉になってる?」
「上に持ち上げるタイプだな」
「みんなで持ち上げよう~」
全員で「いっせいのっ!」と言うことで開けると、巨大な無視がこちらをギロッと見てきた……。
俺らはそれを見て、静かに扉を降ろした……奥で「ソコカ!」という声と共にガンガンッと叩く音が聞こえる。
壊れる様子が無いからいい物の、危なかったな。
「無理だな」
「無理だね」
「うん」
虫の足の隙間から奥に見えたのが間違いで無ければ、温泉施設の所だった……あの温泉マークは見間違えようがないからな。
さてと奴が去るまで待った後に突撃だな……上手く行けばいいが。
階段を降りつつ、3人に「どこに言ってもデカイ虫ばかり」と呟く様に言う。
「なんで虫なんだろうな、そこが気になるぞ」
「あんな気持ち悪いの、2人共大丈夫なの~?」
「嫌いな人もいるかも知れないけど、私は大丈夫」
ボスが虫に統一されてるのは、何かしら意味があると思うが……数が異常な上にあの見た目じゃ、気持ち悪いのは確かだな、2足歩行だし。
爆発させた時にも思った事だが……街のオブジェクトは破壊されないみたいだ、されるとすればクエストによるものじゃないか?
でも、正直に言って……やられそうになるとかは楽しいから俺に取っては大満足だがな!
「ハルが不気味に笑ってる~」
「こいつ……どんな状況でも冷静にやるからな、そして笑うし不気味だ」
「ちょっと、どういう意味よそれ」
扉は閉めたため暗いけど、不気味だった? 表情は見えたのか2人に言われる……そんなに不気味だったのか。
自分の顔は見れないからな、楽しい事あれば笑うだろ?
そんな事を思いつつ、拠点に戻っていく。
次は、12月26日までに更新します