12話 誰かやるとは思ってた
次から新章です!
ほぼVRオンリーの予定です
ひとまず片付けを終えた後に、2階へ行こうとしたらセナも慌ててついてきた。
御梅はこっちに来ていたがどうするんだ? まさかパソコンまで持ってきたりするのか?
御梅に「パソコン持ってきてないよな?」と聞くと「持ってきてるよ~何も用意してないのに、こっちに来ないわけないじゃない」と言ってきたので、問題ないだろう。
奏世先生は、食事が終わってから利用規約を読んでいる。ソファーに寄りかかるようにしてるから、その内疲れて投げ出すんじゃないか?
部屋に戻る為に階段を登りながら、セナが「あのクエストってやつ、誰も受けてないといいな」と呟いていた。御梅はそれに「流石に最初で、やる人はいないでしょ」とセナに返していた。
おい……それフラグにしか聞こえないんだが、起きない起きないと言って……起きるパターンだぞ。
「女の子の部屋っぽくない!」
「昨日まで、男だったんだ。無理に決まっているだろう」
部屋に着いて、御梅が珍しげに見渡しながら呟いた。正直言って、これで女の子の部屋だ~って言われたらどうしようかと思ったぞ。あ、いたわ……横にいる奴が。
ニナが部屋に入ってきて「何か面白そうな事が起こりそう!」と言ってきた。
お前が言うと、本当になりそうで嫌だ……。
「俺は先に入ってるぞ」
ゲームを起動して、VR装置を付けて意識を手放す……。
意識がゲームの中に入る瞬間、警告音と共にシステムの声が聞こえてくる。
『セーフティが解除されています。キルされた場合、クエスト終了するまで復活出来ませんので注意してください』
は? 俺、街で落としたよな? そしてセーフティが解除されてる? そして復活出来ない。
そして、聞いたことがあった……つい数時間前に『クエスト』と。
ゲームの中に意識がいくと……街は炎が燃え上がり、モンスターに追い掛け回されるNPCの姿。
プレイヤーは迎え撃っている様だが、全くといって刃が立っていない。
「……これはどういう事よ」
周りを見渡しながらも、モンスターの出方を伺うため「ステルス」と言い、自分を見つからないようにする。
プレイヤーは4人でモンスターを囲む……剣を持っている3人と斧を持った男達だ。モンスターは骨、名前は分からないが……スケルトンだと思う。
斧の男がスキルだろうか……大ぶりに振り回して当てる。しかし、ダメージを受けていない如くスケルトンは持っていた剣を、男に斬りつけた。
そして、男の姿は……光となって消えた、あれはシステムで言っていたキルだろう。
『件名:おいおい、なんだこれ
インしようしたけど、これ俺が行っても死ぬだけじゃねぇか』
『件名:ハル待ってて
私はインする、ハルと同じ隠れるスキルはあるから
……多分』
セナは来なくてよかったな……インした瞬間にモンスターに斬られるだろうよ。そして、御梅……多分かよ!
それにしても、原因はあのクエストだよな……状況的に、あのクエストと同じ内容の筈だ。
次の街へ進めと言っていたが……ここからどうするか、まずは御梅を待つか。
「ハル!」
「それよりも早く隠れて!」
御梅がインした瞬間、俺の名前を叫びながら周りを見渡していた。声が聞こえたのか「隠れる」と言って、俺と同じ様な……体が極めて薄くなり、影だけが見える。
モンスターが通り過ぎても、見つかる様子はない。
なんとかやり過ごしたようだが、御梅らしき影がこっちに近づいてくる。
「ハル、だよね?」
「はい、もしかしたらですが……この街の外、何処かにある街を探さないといけません」
「この街の外~? 今の状況無理じゃない?」
そう言って、落ちる前にフィールドに出る門を見ると……大きなクワガタの様な赤い甲殻、黒い斑点のモンスターが立っていた。
おい、これ勝てるのか? いや、見つからないように歩いていけばいいか?
言い出す前に、御梅が歩いて行く……しかし、見えているかの様に、ギロッという音がしそうな目で見られていた。
「うん、無理!」
「ですよね」
これからどうしたものか……誰がしたなんてどうでもいいから、のんびりゲームを楽しみたいんだがな。
若干短くなって申し訳ない