10話 姿変わってから褒められると喜べない
心の中で自分に後悔しつつ、カレーの食材を買ってレジに並んでいた。
奏世先生は、何を買いに来たんだろうな? 1人寂しくカップ麺でもすするつもりだったのか? 結婚してるとは聞かないしな。
ニナも気になっていたのか「こんな所に何しに来たんですか?」と聞いていた。
少し照れくさそうにして。
「いや、昼食の弁当を買って……酒と一緒に食おうと思ってな」
「栄養偏りますよ?」
「興奮して鼻血出すんだから、栄養取ったほうがいいと思うけど」
ニナはジト目で見ている。奏世先生は結局買い物はおつまみ用くらいだった。
レジのおばちゃんが「おや、こりゃべっぴんさんだね。何処から来たんだい?」と言ってきたので。どう答えようか迷っていると、ニナが「最近ここら辺に住み始めたんですよ」と答えた。
よく、そんな事すぐに出てくるな……。
「そういえば、誰の家で作るんだ? 車で送ってってやるよ」
「いいんですか、それじゃ……黒旗さんの家までお願いします」
「ゼノの? こう言っちゃ何だが、少し遠慮しないか?」
この姿を見られて誘った以上、言うしか無いよな~。自業自得だけどさ……信頼は出来る人、だと思うから……いいけどな。
最悪、色仕掛けするか? いやいや、ダメだ。俺が気持ち悪くて吐きそう。
悩んでいた顔が出てたのか、ニナが「ちゃんと説明しなさいよ」と言ってきた。
「どうした? まぁ……ニナがいいなら俺は何も言わん」
「その事に着いては、家に着いてから話します」
「そうか? 何か訳有なら、話くらい聞いてやる」
セナと同じように、突っ込まなきゃいいけどな。
会計を済ませて、荷物を持とうとすると。さり気なく、奏世先生が持ってくれて「女に持たせるのは、主義に反する」とかカッコつけてる。言っておくが、元男だからな? 教えてないけど。
ニナはニヤニヤして「女ね……確かに女だよね」と言ってきた。お前、わざと面白がってるな。
車に入り込んで、そこまでかからない家に乗せてもらった。
降りると、玄関で誰か立っていた……あの姿はゲームで見た、御梅だ。本当にそのままの姿なんだな……。俺のはやっぱりあれが原因か。
「あ、ハル~。本当に姿、変わっちゃったんだね」
「姿が変わったってどういうことだ?」
「げっ、先生がなんでこんな所にいるの」
全く俺と同じ反応したな。割とこの奏世先生は、問題児の処理とかを任されてるからな。知ってる人が多い……ただ、興奮すると鼻血出すけど。
御梅への質問を返さなくて、首を傾げてる。奏世先生は、買った物を持ちながら車から降りて鍵をかけた。
ニナは御梅の近くに行って、中に引きずり込んでた。
「説明は後です、行きましょう?」
「あ、あぁ……」
謎が解けなくてモヤモヤしてるのか、疑問に悩ませる奏世先生を押していった。
リビングに着いて、セナが御梅に叫んでいた「何で来たんだよ! 来なくてもいいだろ!」というのに対し「いいじゃん~、というか1つ屋根の下で一緒にゲームとか。襲わなくていいの~?」とか笑いしながら、言ってる。
奏世先生が「おっす、セナ」と言うと……セナが「お、おぃ……何でここに先生までいるんだ?」と俺を見て言ったきた。
「すまん、つい何時もの癖で誘っちまった」
「その口調……もしかしてゼノか?」
いや、何で気づくんだよ! お前ら俺の存在口調だけか? 体とかどうでもいいのか? いや、確かに30代超えのおじさんにしか見えないけど……。
セナは頷いて「あぁ……ゼノだ」と言って、続いてニナが「今、名前は春乃」と言った。
奏世先生は「何があったんだよ……普通に過ごして、姿ましてや性別なんて変わらないだろ」と言ってる。
「それは俺が説明する」
そうして、3度目の説明をした。正直、面倒だから文章として渡してしまいたい。昨日の出来事言って、理解するのこいつらだけじゃないか?
説明し終わると。
「利用規約見ないでゲームやったらなった? 馬鹿言うな、体付きも変わるわけ無いだろう」
「触ってみる?」
「ハル、触らせちゃダメだからね? 下手したら鼻血出されるんだから」
案の定、信じなかった。そう、これが正常だよな。普通信じる訳ないだろ!
冗談で言うと、ニナに睨まれた。いや、流石に触らせないぞ? 男に触られて興奮されるとか、怖いわ! なんで奏世先生残念そうなんだよ!
そういえば、御梅何処に行ったんだ? と思ったら、後ろから胸を鷲掴みされた。
「何このボリューム~、私だってこれくらいほしいよ~。ニナ~」
「胸がもみしだかれて……ぶふっ!?」
「おぃ! 鼻血出すんじゃね! 掃除が大変なんだぞ!」
そうだよ、鼻血出すんじゃね! と思ったら、鼻血を即座にティッシュで抑えていた……手慣れてやがる。
後、セナ……掃除するの俺だぞ? お前は脇でテレビ見てるだろ、絶対。
本気でもまれてるんだけど……「御梅、本当に……」と講義するけど、一向にやめない。
「だって、卑怯だよ~」
「そうよね、この足のスベスベ感とか」
「お前ら! 触るんじゃね!」
ニナは止めるどころか、足を触ってくるし。ちょっと本当にやめ……。お前ら、見てないでこいつら剥がして欲しいんだが!。
2人して顔を赤くしてんじゃねぇ!
「お前らいい加減にしないと、飯作らねぇぞ!」
「「はい……」」
引き際良すぎだろ……飯そんなに大事なのかよ。2人は「セナ、いいもの見たな」「あぁ……そうだな」とか言ってる。とりあえず、止めなかったしセナを殴っとく。
奏世先生は沈んだセナを見て「あいつは相変わらずだな」と言ってる。
ニナと御梅はテレビ見始めて、2人して振り向かないまま「飯出来たら、教えて」とか言ってる。お前ら……手伝う選択肢は無いのか。
「奏世先生も待っててくれ、セナはそのまま床に置いといていい」
「あぁ、お前料理出来たんだな……その姿だと様になってる」
嬉しくねぇ……多分誰に言われても、その感想しか出ないわ。
そうして、カレーを作り始めた。
次は、11月25日までに更新