一つのきっかけ
こんにちわ! クロです。
それではどうぞ!
第65話、一つのきっかけ
「そうだ! あのボートの乗らない?」
青く輝く広大な湖の一角に、白鳥の形をしたボートが佇んでいる。
今日は、ほむらと初めて一緒に外に出てこれて嬉しさを隠せず、沢山の良い思い出を作ろうと考えていた。
その方が、ほむらはまた外に出てくれると身勝手に信じてみたくなったのだ。
「良いよ! わぁ〜、可愛い白鳥のボートさんだね」
そう大きい目をパッチリと開き、その目は宝石みたいに輝かせている。
それに比例するかのように、小さい体をぴょんぴょんと跳ねらせて、愛おしく見えてしまった。
まあ……愛おしく見えてしまうのは、いつも通りなのだが。
「はは! そうだね。じゃあ乗ろうか」
「うん!」
そうして僕たちは、首が長くて、目が丸く輝く白鳥型のボートに乗った。
それから数十分後。
「………………」
凪とほむらは、お互い俯きながら沈黙が続いていた。
なぜかと言うと、ほむらから何であのグループに関わったの? という質問が幾つかきて、それに答えられない状況が続く。
「言いたくないなら、別に良いよ? 私は気にしないことにするから……」
ほむらは俯いたまま、悲しそうに呟く。
そんな表情をされると、自分のことの様な感じがして、何よりほむらにそんな顔はして欲しくなかった。
「分かった。話すよ」
僕はそう言って、ほむらの目を見ながらしっかりと、話す事にした。
僕達二人は、家族というものをよく知らない。
前にも話した通り、両親や血縁者が他に居ないことではない。
ただ単に、両親は仕事が忙しくて、家に帰ってこれないだけなのだ。
帰って来れば、お疲れ様って言いながら楽しく話をする。
だけども、それは偶にしか無くて、家族が全員集まってご飯を食べることは無かった。
そのせいで、ほむらは一人で部屋にこもってしまったのだが、なにもほむらだけがそうなわけじゃないのだ。
霧島凪という人物は、暖かく温厚な性格で、絶対に不良と言われているグループには関わんない。
少なくとも僕は、そう思っていた。
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「お前……家族はいないのか?」
僕を見下しているのか、少し強い口調で問いを投げかけてくる。
この時の僕は、あまり他の人と話をせずに、一人の世界に閉じこもっていり、ほむらとは少し違うのだけども、心ここにあらずという毎日を繰り返し送っていた。
そのせいか人と話す事が怖くて、目も合わせることすら出来なくなっていたのだが……。
「お前さ、これから俺たちとつるまないか?」
その瞬間、ずっと暗かった世界から一筋の光が見えた気がして、そこに向かってただひたすらに歩いていこうと感じれたんだ……。
それが、あの不良グループと呼ばれる様々な愛情を探し求める集団との繋がり。
そして、それから僕はより一層、ほむらのことを気にかける様になった……。
ありがとう、和希……。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。お疲れ様です!
長らくの間、投稿出来ていなくて申し訳御座いません。
これからも続けていきますので、次回もどうか宜しくお願いします。




