家族
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第62話。家族
公園。
「そういや、なんで和希達がここに?」
普段、和希達は姉貴と呼ばれている人と溜まり場にいる。
そこに何度か僕も連れて行って貰ったんだが、皆んな気さくで、とても良い人たちだった。
最初は、立ち入ることすら怖かったけど、和希と姉貴と一緒に過ごしている時間は楽しくて。
それに呼応されてか、溜まり場にいる人たち全員と仲良くなっていき、俺たちと一緒に来ないか? と和希に言われたが、僕はほむらを選ぶことになる。
「あぁ……今日、姉貴は外せない用事とやらで居ないから、偶にはな?」
偶にはいつもの溜まり場ではなく、公共の場所に居たいということなのだろう。
そんな予感がした。
「それより、凪が選んだ妹さんはこの子なんだな」
ほむらは未だ後ろに隠れているが、さっきみたいに震えていない。
多分、和希の柔らかな笑みで、ほむらの緊張感も解けてきたんだろう。
「そうだよ! あの時はごめんな。折角誘ってもらったのに」
あの時、和希の誘いを断った時、和希は勿論のこと。
姉貴や他の皆んなからも驚きが入り混じった叫びをあげていたけれど、ほむらの事情を説明すると、皆んな一心になんかあったらいつでも頼れよと言ってくれた。
その時に、姉貴からの餞別は……。
「いや良いって! でもなぁ、まさか姉貴からの餞別がハグだなんて。あれでまた驚かされたよ」
あの餞別の瞬間、耳元に小さな声で言われたことは、姉貴と僕だけしか知らない。
それは。
『妹さんを大事にしろよ』
この優しい言葉で、僕は心の決心がついて、様々な勇気がふつふつと湧き上がってきた。
他の人の言葉なら、きっとこんなに心に響かないだろう。
前に、姉貴と一対一で話し合った時に聞いたお話……。
ーーーーーーーーーーーーーー
姉貴達の溜まり場。
「さてと、お前には話さなきゃならない事があるんだ」
姉貴達が集まる溜まり場は、もう使われていない倉庫の裏にある。
そこには、ドラム缶やらパイプ椅子やらが収納されていたらしいが、姉貴の仲間達が勝手に使っているらしい。
倉庫の裏の奥側に、一つの座れるような大きさのドラム缶が転がっていて、そこに姉貴は腰を下ろすと、僕に話を持ちかけてきた。
「分かったよ。真剣に聞かしてもらうね」
「おう、頼むぞ」
そんなこんなで前置きを並べていくと、姉貴が話したい事の本題に移る。
「実はな、凪は皆んなと結構仲良くやれてると思うが、彼らは他とはあまり馴染まないんだ」
他の人には、他の人の事情がある。
それは絶対に変わる事のない鉄則だが、凪は一つ気になってしまった。
姉貴が言うには、彼らは馴染めないんではなく、あくまでも馴染まないのだと言う。
皆んな、僕が和希に連れられてきた時に我先にと気軽に話しかけてきてくれた。
それは和希のおかげだと思うけど、それだけではないとも思う。
これだけは、姉貴の言う事に不信感を覚えてしまい、他とは馴染まないということに質問する。
「そうなんだ……。でも、なんで僕がここに初めて来た時はあんなにも話しかけてくれたのに」
その問いの答えは、僕の考えなど、遠く及ばないところにあった。
「それはな……。和希が、これから連れてくる男は、俺の友達であって家族だ! ってこの倉庫の端から端まで届くような大きな声で宣言したからだよ」
「そして、ここの皆んなは……。私を含めて家族の誰かを亡くしてるんだ」
姉貴が、皆んなに姉貴と言われている理由を察した。
なぜ察することが出来たのかは、姉貴の表情を見ればすぐ分かる。
姉貴は、家族をとても大事にしていて、何ものにも変えがたい想いが確かに存在した。
だって、姉貴は……。
とても悲しそうに、目から雫を零していたのだから……。
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