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二人のゲーマー

こんにちは! クロです。


いきなりですが、どうぞ。

第56話! 二人のゲーマー

 霧島宅、ほむらの部屋。


「あ、あ愛してる!?」


 僕からの家族としての愛の告白を受けた妹は、自分の殻から飛び出るかのように、顔を真っ赤にして焦っている。


 だけど……。


 ほむらは、今まで暗くて狭い空間で生きてきた人間だ。


 でも、それでも外の世界に出てみたいと思うのだろう。


 だが自分を守ってくれる人が居なく、恐怖のあまり外に出れなくなってしまった。


 それを僕は許さない。


 世界で一人の家族として、愛してるほむらじゃない。


 許せないのは、自分の可愛い子供なのに、守ろうともせず部屋に閉じ込めた両親だ。


 こんなにも、感受性豊かな可愛い妹を……よくも。


「お兄ちゃん? 何でそんな怖い顔してるの……?」


 あれから冷静になったであろうほむらは、僕から起き上がり、僕の頬に手を添えていた。


 さっきとは逆の風景に少し溢れ笑みをしてしまったが、僕もほむらの頬に手を添え。


 お互いが、お互いを思いやり、差し出され差し出している手は。


 二人共、絆を探るかのように右手から手繰っていた……。


「いや、何でもないよ。ほむらと一緒に外で遊んでみたいなってさ」


 この時のほむらは、少し怖がっていた顔をしたのをよく覚えている。


「それって……。分かって言ってるの?」


 それは外が怖い妹にとって、辛いことだとは僕でも分かる。


 でも、このまま一人で遊んでいるのも物足りなくなるぐらい、ほむらには楽しんで欲しいと思った。


「ねぇ。お兄ちゃん! 私、不思議とお兄ちゃんと遊ぶの楽しいんだ」


 ほむらは振り返りながら、僕から離れてコントローラーを取る。


「だからさ、お兄ちゃんとなら、どこでもいける気がする。これからよろしくね!」


 何の屈託も感じさせない笑顔を見せながら、僕の妹は、外に出るための硬いドアをぶち破るかのように。


 僕の分身と呼べるゲームのキャラを、場外へと落としていった……。


「あーあ、負けちゃった! でも僕も楽しいよ。これからいろんなとこに行こうね。よろしく! でも次は負けないよ」


 そう言いながら、次は負けないと意地を張る兄は、コントローラーを手に取った。


 それから三回の真剣勝負は、兄が勝ち、妹が負ける。


 だけども、凪はふと感じる。


「ねぇ。ほむらってさ、何で攻撃してこないの?」


 僕達が今行っている勝負は、格ゲーと呼ばれる格闘ゲームで、もちろん攻撃しないと勝利という栄光をもぎ取れない。


 だから、三試合とも一切攻撃を加えて来なかったほむらが理解出来なかった。


 だがそれは、ほむらの方が格が上と自分で認めると同じ事だ。


「えへへ。それはね! 次のお楽しみ」


 何かを含めた様な笑い方をした妹は、可愛い見た目とは裏腹に、えげつない考え方が隠れている様な気がする。


 まあ、僕も実は本気を出しておらず、ほむらの行動を見てから本番にしようと考えていた。


 三試合の真剣勝負は、兄の勝ちなのだから。


『エイ! タァ!』


 などと、可愛い声を出して相手に攻撃を与えてる様を見ると、少し気が引けるが。


 あくまでゲームなので何も言えない。


 それよりも、本心では妹の言葉が気になっている。


 次のお楽しみとやらが、楽しみで仕方なかったのだ。


 だから、少し様子見をしてみようと思った矢先、妹から声が掛かる。


「ねぇ。お兄ちゃん! このゲームってさ、簡単すぎるよね。ただ単に攻撃をさせれば良いんだから」


 その自問自答していた内容は、直ぐには理解出来る内容では無かった。


 確かに相手は攻撃をするが、させれば良い?


 それに悩んでしまった結果、起きる事と言えば……。


「甘いよ! お兄ちゃん。 もうお兄ちゃんの攻撃は見切った」


 そう大きな声で発言する小さな女の子は、僕の分身の攻撃をカウンターで弾き飛ばした。


 そう、悩んだり怒ったりした結果起きる事とは、攻撃や防御の単調化である。


 それをほむらは、見切ったと言い、絶妙なタイミングでカウンターをしてきた。


 このゲームのカウンターというのは、二番目に難しいテクニックで、ありとあらゆる偶然が重なって、ようやく出来るものなのだ。


 それにより、攻撃力も高めに設定されている。


 カウンターのタイミングは、相手の攻撃を受ける一秒も無い瞬間の出来事に、カウンターが設定されているボタンを押さなければならない。


 それに僕は、コントローラーを落とさなければならないほど、動揺していた。


 人間同士が対決するゲームにおいて、コントローラーを落とすというのは、戦意喪失を表す愚行である。


 それを見たほむらは、私の勝ち! と喜びながら僕のキャラクターを場外へと落とす。


「嘘だろ? まさか、ほむらはカウンター型?」


 天性の才能だった。


 初めてのゲームで、狙った様に偶然が重なってようやく出来る技を行使したのだ。


 それに驚き、僕も本気を出さないと妹に失礼だ! というゲーマー脳になり、次の勝負をお願いする。


「そうなのかな? でも直感的にお兄ちゃんの動きが分かったんだよね。それとお願いは受けるよ! もっとお兄ちゃんと遊びたいから」


 そのほむらを全力で負けさすのは、心が痛い。


 だが負けず嫌いの凪は、このゲームにおいて圧倒的な力を示す。


 そして、次の試合が始まった。


「一応言わしてほしいけど、もし圧倒的に負けちゃっても意地を張らないでね?」


 さっき意地を張った兄は、心で引け目を感じる。


「うん! 私より強いって分かれば、もっとお兄ちゃんと遊べると思うし!」


 そう言われて心が楽になり、凪のキャラの動きが今までと一変した。


 そのキャラは、相手の微妙な動きにも対応して、何かを狙うように刀を構えている。


 凪は、今まで使っていた激しい動きのキャラとは違う、風林火山をイメージする侍キャラを操っていく。


 カウンター型とは、相性が全くもって良いとは言えないキャラにほむらは首を傾げていたが。


 次の瞬間、目を疑う事実が起き、ほむらは理解せざるおえなくなる。


「うそ……。今、攻撃が全く見えなかったんだけど」


 そう! このキャラの真骨頂は、素早い攻撃速度に加えて火力が安定しており、攻撃を受けても、余程の強い攻撃じゃない限り怯まない。


 だけども、風林火山の火を抜いた様な行動に呆気を取られたのか、カウンターという手を捨てて、アウトレンジで戦うほむらにとって効果的な戦法だった。


 実はこのキャラは、二段階の特殊能力があって、一つは先ほど使っていた抜刀モード。


 もう一つは、納刀モードという投げ技と回避しか受け付けない、意味が分からない特殊能力なのだが。


 納刀時、徐々にプレイヤーには見えないゲージが溜まっていって、カウンターボタンを押すと……。


 なんと相手に向かって、必殺の一撃と呼べる閃という技を叩き出し、体力が全く減っていない妹の分身を真っ二つに切り裂いていく。


 この閃という技は、一度出すと約三秒の隙が出来て、直ぐに必殺技を出されるから使い難いが。


 その反面、使い難い技には協力な一撃が込められているという、運営の意向がこのゲームを更に面白くしているのだ。


 そして何より大事なのは、この技には即死範囲、二分の一範囲、攻撃無効範囲というのがあり、それが更に使いにくくしている事。


 二分の一範囲は、相手のキャラに命中する刀が真ん中より柄に近い部分が当たる判定で。


 即死範囲は、真ん中より切っ先に近い距離が即死判定。


 そして攻撃無効範囲は、刀が当たらないのと、居合切りをした時に柄が当たる範囲は無効。


 それに、この技が使えるのは各ラウンド2回という、多いのか少ないのか分からない量だ。


 因みに、ほむらが操作するキャラに当たった部位は、切っ先より少し下の即死範囲だと思う。


「それとさ、この居合切りは両プレイヤーとも見えないという、良いのか悪いのか分からないから余計に使い難いよ」


 見えないから、運営に公言されている攻撃命中範囲以外は全くもって分からない。


 つまり、器用貧乏と呼ばれるキャラクターなのだ。


 だって、剣を振った時にどこまで伸びるかは分からないのだから……。


「でもお兄ちゃんはさ? 私のキャラの何処に剣が当たるか分かっていなかった? 私は感じちゃったけど……。」


 ほむらが不思議に思って、声に出すのだろうが、全くのその通りなのだ。


「うん。分かるよ! ほむらは天才のカウンター型だから分かると思うけど、普通の凡人には分からないんだ」


 僕達の考えはこうだ。


 見えないのなら、感じ取れば良い。


 それが、カウンター型の天才と後に呼ばれていく兄弟であった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。お疲れ様です!


今回は、途中からゲームの話になってしまいましたが、これは、ほむらがかえでに圧勝した理由を書いていきます。


これから、二人の壮絶な戦い「ゲーム」が待ち伏せておりますので、どうか楽しみにして頂ければなと思います!


では、また次回でお会いしましょう。

次の話も、よろしくお願い致します!

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