三本から一本へと
こんにちは! クロです。
早速ですが、どうぞ。
第51話、三本から一本へと
「う、うーん……」
何時もではありえない、眩しい光に包まれ、まだ眠い目を少しずつ開ける。
今までは、朝起きるときは必ずと言っても良いほど、薄暗かった。
何故、今日は眩しいのか、まだ寝ぼけている脳を働かす。
「おはよう。お兄ちゃん! かえでさんは下にいるよ」
『まだシャワー浴びてるから、洗面所には行かないこと!』と僕に告げて、僕の部屋から出て行った。
……、そうか。
僕は昨日、かえでとほむらとの三人で寝ていたんだ。
ようやく脳が覚醒したことで、何故眩しいのか判明した。
それは、今出て行ったほむらが、僕が起きる少し前にカーテンを開けたことで、部屋が外の光で眩しくなっているんだ。
そんな単純な事に少しだけ馬鹿馬鹿しくなり、優しく、頭の髪を解くように、頭を掻く。
「じゃ、下に降りようかな」
誰もいない静かな部屋の中で、一番最後に体を起こした少年は、下に行くことを独り言で告げた……。
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「そういえば、聞いてなかったんだけどさ……。私って、いつまで泊まって良いの?」
かえでは少し困惑したような表情で、僕達兄妹に問う。
僕とほむらは、目を合わせながら、少しだけ苦笑してしまった。
確かに、普段誰かが家に泊りにくる。
という、イベントには慣れてなくて、事前に話し合うのを忘れてしまっていたのだ。
そういう事で……。
「かえでさんが泊まりたいだけ、泊まっていいよ?」
ほむらは目線を兄から、兄と自分の友達へと移して、答えというより質問のような言葉を返した。
だけど、好きなだけ泊まっていっていい。
これには、なんの異論も無いし、逆に賛成なんだけども、かえでは困ると思う。
「え……? 分かった?? え!?」
案の定な答えが返って来たけど、僕達の親は、全くもって家に帰ってくることが無くて、帰ってくるとしても、夜遅くに帰ってくるし、朝早くに家を出る。
だから、誰が遊びに来て、泊りに来ているというのは全く分からないらしい。
もう殆ど、兄と妹に任せた親なのである。
「まあ〜、帰りたくなったり、かえでの親にも申し訳ないから、何か言われたら帰るといいよ」
「それはありがたいんだけど、洗濯物とかもあるし……」
まあ〜、そうだよな。
かえでは女の子だから、他の家で洗われるのも嫌なのだろう。
だが、ほむらは……。
「私が洗うよ? それと、お兄ちゃんが普段入れない部屋あるし。もしそれでも嫌だったら、かえでさんが洗濯機使ってもいいけど……」
さすが、女の子としか言えない。
だけど、普段人見知りな妹が、一日でこんなにも心を開くなんて正直驚いた。
そこまでして、ほむらはかえでに泊まって行って欲しいのだろう。
今は長期休み……。
休みは、まだ二週間程度も余っているのだから、僕もまだこの三人で話していたい。
「分かった! 一応私も余分に着替え持ってきてたし、そういうことならよろしくね! ほむらちゃん。なぎ!」
「おう! よろしくね」
「うん! よろしく! かえでさん」
かえでという人物が、凪とほむらの距離を今まで以上に縮め。
ほむらという人物が、かえでと凪の距離を縮めて。
凪という人物が、ほむらとかえでを出逢わせ、新たな繋がりを作った。
この三人は、互いに良い関係を築き、大事に……、大事に三本の線を絡めていく……。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
お疲れ様です。
今回から、かえでの登場機会が増える事になりました。
そして、この三人と凪の記憶について楽しみにして頂ければなと思います。
では、また次の話でお会いしましょう。
これからも、よろしくお願い致します。




