記憶の夢
こんにちは! クロです。
いきなりですが、どうぞ!
第四十九話、記憶の夢
霧島宅、居間。
?「ねぇ〜、霧島くん……。私、ここまでなのかな?」
あの子は、そう言いながら、ぽろぽろと大粒の涙を流していた。
ただ泣いているのでは無くて、自分がこの先どうなるのかという不安から来ている涙だと、直感する。
凪「そんなことないよ。この先もずっと僕達と遊んでいくんだよ」
僕も、下を俯きながら、あの子の手をとって泣いていた。
?「そうだよね。ほむらちゃんの為にも生きないとね」
夕立が差し込む、真っ白な病室の中で、あの子は微笑む。
そして、僕の手を握り返して、『死にたくないよ』という気持ちを訴えかけてきた気がした。
凪「そうそう。ほむらの泣いている顔は見たくないから」
二人は小さく笑いながらも、引き攣っている顔で、冗談交じりの会話を交わす。
でも、少なくとも僕は、自分が言った言葉は冗談ではないことは分かっていた。
?「相変わらずのシスコンだね。あ〜あ、私も霧島くんの妹さんに産まれたかったな」
にっこりと微笑む姿に、僕は安心を覚える。
この会話が出来るのだから、この子が死ぬのはありえない。
そう感じれたが。
?「でも、生まれ変わりってあるのかな?」
凪「どうしたの!? 急に」
?「冗談だよ! 驚きすぎだよ。霧島くんは」
今のこの状況で、そんな冗談を言われたら、誰だって驚くに決まってる。
それは何故か、この病室のベットで、ぐったり力が入らないように寝そべっているあの子は、とても苦しそうだから。
時々、辛そうに体を動かす姿を見てれば、僕も辛くなる。
でも、この子は、つい先日に轢かれて直ぐに病院に運ばれて、手術を受けたのだ。
仕方ないと言ってしまえば、仕方ないのだろう。
凪「はは、誰でも驚くよ。多分、君が死んじゃう振りをするだけでも気絶しちゃうかも」
?「ふふ。なら振りは、絶対にしない方がいいね」
?「でももし……。私が死にそうになっちゃったら……」
あの時、君は何て言いたかったのだろうか。
私が死にそうになっちゃったら、何をして欲しいのか……、それとも、何が欲しいのだろうか。
その言葉に続く、様々な意味を考えても、答えは出なかった。
ーーーーーーーーーーーーーー
「お兄ちゃん。お兄ちゃん!」
ふと、記憶の夢から目を覚ました瞬間に、ほむらが叫ぶように、僕を呼んでいて。
つい思いふけてしまう。
また妹の目の前で急に倒れて、記憶を思い出していたのか……と。
「お兄ちゃん。一回、目を開けたんだから、そのまま起きてよ」
ほむらには、もう起きていることがバレているみたいなので、目をさましながら、ゆっくりと体を起こしていくが……。
今になって、自分の頭の下の柔らかい感触に気がつく。
いつの間にか、僕が倒れた時には妹が膝枕をしてくれるようになって、気がつかないうちに記憶の夢から帰って来れたと、安心するようになっていたのだった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
お疲れ様です。
今回は、あの子との記憶を思い出して、凪の心情を書いてみました。
あの子と凪が、これからどんな展開を迎えるのかを、楽しみにしていただけたら嬉しいです。
今後ともよろしくお願いします。
では、また次回でお会いしましょう。