無意識の願い
こんにちは! クロです。
それでは、どうぞ!
第四三話、無意識の願い
霧島宅、凪の部屋。
「……。準備は、良いかい? ほむらちゃん」
「ええ……。大丈夫です! いつでも来てください」
「……。なにこの緊張感。これ遊びだよね?」
僕達は、トランプで遊んでいる。
トランプというのは、カードゲームの一種で、基本的にババ抜きや・七並べ・大富豪といったものが一般的なんだが。
今は、その中のババ抜きをしていた。
だけどもこの空気感は、遊びと言ってしまえば、二人の闘いに水を差す事になってしまうので、黙る。
でも、一言も喋らない様にしてたんだけど、その一言を出してしまった。
それを最後に、さっきまでの緊張感とは、全然違う感じが、僕の部屋に漂う。
「あーもう!! お兄ちゃん! 何で喋るの」
「ほんとだよ! 何で喋るの? なぎ」
実を言うと僕は、この二人より早く上がっていた。
つまり、一位だ。
それなのに、この緊張感を壊してしまった事には、罪悪感が芽生えてきたから謝る。
「ごめんね。二人が、鬼の形相で睨み合ってたから、ここに居づらくて……」
すると、直ぐに言葉が返ってきた。
「大丈夫だよ。なぎ! 私もなぎが居ること忘れてたから」
「うん。平気だよ! お兄ちゃん。私も忘れてた」
多分この二人は、僕のことを励ましてくれたのだろう。
でも言葉的には、ここから去って! という風にも聞こえる。
心から不意に湧いてくる気持ちは……
ここ、僕の部屋なのになぁ〜。
という、何とも言えないものだった。
「ありがと! 励まして……くれたんだよね? まあ〜、ジュース取ってくるよ。何が良い?」
そう言って部屋から出ようとした時、後ろから声が掛かる。
「そうだよ。お兄ちゃん! じゃ〜、オレンジジュースが良い」
ほむらは、可愛らしい笑顔で、オレンジジュースを所望してきた。
妹は、やっぱり笑顔が一番似合うな……と思いながら、かえでにも聞く。
「かえでは、何が良い?」
「うーん。私もオレンジジュースで!!」
「分かったよ。じゃ、行ってくる」
かえでも同意見だった。
二人は、僕が考えたよりもずっとお互いの仲が良くて、きっと友達になれたのだろう。
「「行ってらっしゃーい」」
その言葉を最後に、部屋から出た。
ーーーーーーーーーーーーーー
霧島宅、居間。
僕は、少し考え事をしていた。
かえでが寝てから、ほむらと話し合う、あの子のこと。
正直に言うと、何でここまで引きずっているのかも分からないし、ましてや、あの子に関する記憶があまり無い。
なのに何で……! ッ!?
そう、この通り無理やり思い出そうとしたり 、詮索すると頭が痛くなる。
もう一つの原因としては、さっきみたいに、写真を見ただけでも気絶してしまう。
それは、僕自身が無意識に、このことを忘れたいと願っている様にも感じた。
「はぁ〜。ほむらの言った通りなのかな」
ほむらの言った通り、これからも苦しんでいく事になるのかな……。
『私がついているよ。お兄ちゃん……』
そう呟きながら、優しく抱きしめられた感じがしたけど。
ここに居る筈も、抱きしめられる筈もないが。
「そうだね。ありがと……! ほむら。」
それに加えて。
「どうかしちゃったのかな……僕は」
そう呟きながら、ほむらが大切な妹だということを自覚出来た気がした。
よし、そろそろ戻ろうかな……心配させちゃ悪いし。
二人の所望した飲み物と自分の分を、お盆に置いて、それを持ちながら、足を自分の部屋へと進ませたのだった……。
兄と妹の過去についての話。
二人の決定事項まで、あと少し……。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
お疲れ様です。
もし宜しければ、ブックマークや評価なども是非!
それでは、また次回でお会いしましょう。
次回も、お願い致します!