番外編〜私たちの秘密〜
こんにちは! クロです。
今回は、番外編なので、キャラ視点が変わります。
凪→ほむら
それでは、どうぞ!
第四十一話、番外編〜私たちの秘密〜
霧島宅、居間。
「お兄ちゃん? まだ〜?」
そんなに探すの大変なのかな?
あれから一時間は経っているんだけど、全く降りてくる気配が無いから、声をかけてみた。
でも、そこから返ってくるお兄ちゃんの声は、一つもない。
「どうしたのかな……かえでさん。ちょっとお兄ちゃんの部屋に行ってみよ?」
「う、うん。どうしたのかな……なぎ」
かえでさんも、私と同じ気持ちだった。
それが、何となく、少しだけど嬉しくなる。
「分かりません。でも、もしかしたらお兄ちゃんは……」
「どうしたの?」
「いえ、何でも無いです」
もしかしたらお兄ちゃんは、あれを見てしまったのかもしれない。
私が……ちゃんと隠さなかったせい。
ごめんね。お兄ちゃん……
「……そか。なら行こ?」
私の表情を、悟ったような表情をしたかえでさんは、深く入り込んで来なかった。
まだ何も知らない筈なのに、相手の気持ちになれる事は、私も見習わなきゃと感じた。
「はい……無事で居てね。お兄ちゃん」
そして私たちは、お兄ちゃんの部屋に向かうことにした。
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霧島宅、凪の部屋。
「お兄ちゃん!! 大丈夫!?」
「………………」
お兄ちゃんの部屋のドアを勢いよく開けて、大声で叫んじゃったのに、返ってくるのは、さっきと同じ静寂だけ……
「……うそ!?」
かえでさんが、何かを自分に言い聞かせるように言ってたから、少し顔を覗いてみるが。
でもその顔は、口を両手で覆いながら、目はハトが豆鉄砲でも食らっていたかのように驚いていた。
そして、数十秒の時が流れてやっと、事の重大さに気づく。
「……お兄ちゃん?」
うそ!? 何で倒れてるの? お兄ちゃん!
心で叫んでも意味が無かった。
私のお兄ちゃんは、倒れたままで、身体を起こさない。
その手には、とある写真が握られていた。
「これって……お兄ちゃん」
その写真の人物は、私のよく知るお兄ちゃんと……。
もう一人、私たちが良く知っている女の人が写されていた。
「ごめん……ごめんね。お兄ちゃん」
本当に、ごめんなさい……。
「……起きろ! なぎ!!」
少し前まで、私の肩を優しく掴んでいたかえでさんは、人が変わったかのように怒って。
次に、うつ伏せになっているお兄ちゃんを仰向けにして、手を振り上げる。
やめて……やめてよ! かえでさん!!
私のそんな願いは、声にならないで、心に秘めてしまった。
私、勇気ない……
ぽろぽろと零れ落ちた涙が、更に私に勇気がない事を伝える。
だけども、そんな私を見ていたかえでさんは、私に優しく話しかけてくれた。
「私が好きな凪はね……こんな風に何かを見て気絶してしまうような人じゃないの。それに、ほむらちゃんを悲しませるなんて、もってのほかだよ!」
それに続いて言う。
「だから私は、凪を起こしたい! だから許して!!」
想いを込めて、振り上げていた手を、勢いよく振り下ろす……。
私のお兄ちゃんで、初恋の人の頬に、かえでさんの小さな手が強く当たった。
『バチィーン!!』
静かな空気に、頬と手とで、ぶつかった音が、盛大に鳴り響く。
たけど、私一人の願いだけでは、届かなかったのに、二人なら届いたようで……
「ん……んん!? ど、どうしたの!?」
やっと目が覚めたんだね……お兄ちゃん!
「なんか、頬が痛いんだけど! ってあれ? この写真って……」
お兄ちゃん!? 見ちゃ駄目!!
それを見たら、また倒れちゃうと直感的に感じた私は、かえでさんを避けながらお兄ちゃんに飛び込む。
でも、きっと未だ痛むのだろう。
お兄ちゃんは、かえでさんに叩かれて、痛々しく腫れて、あざになっていたところを抑えていた。
でも、それを言い訳にしないで、私たちに話しかけてくれる。
「え!? さっきからどうしたの? かえでとほむら」
でも、未だ混乱しているみたいで、少し笑っちゃうけども、お兄ちゃんの少しだけ頼り甲斐のある手から写真を取る。
「えへへ! 何でもないよ。お兄ちゃん」
そう言い残して、かえでさんに小さな声で、これを私の部屋に置いといて! とお願いした。
元の元凶は、あれなんだけど。
いつか、お兄ちゃんとかえでさんに話さないと駄目かな……。
これには、お兄ちゃんと私、そしてもう一人の秘密が詰まっていた……。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
お疲れ様です。
さて! 番外編は、この作品で二回目になりますが、キャラの視点が変わりますので、どうかよろしくお願い致します。
それでは、また次回でお会いしましょう!