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イヴを殺せ  作者: ふぁくとりー
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5/6

5 迷走と仲間

超お久しぶりです。

更新遅れてすみません!

 壁の中に吸い込まれるように入っていったひとみの後を追うと、一瞬にして視界が開ける。

 大きなトンネル状の天井に、明かりがいくつもぶら下がり、室内は明るく保たれている。プレハブくらいの造りの二階建ての家屋がすっぽり収まっていて、奥に広い空間が開けている。

 と、一人の少女が目深にキャスケットをかぶったまま歩いてきた。膝上十五センチのバルーンスカートに、七色の縞のニーハイソックス。上にはダボっとした赤いパーカーを着ている。帽子の影の部分から、瞳だけが見えてきらりと光る。

「よっす、そいつが新人?」

「ああそうだ。倉戸優輝、殺しても死なん便利道具だ」

「それは酷いからな⁉︎傷つくぞ‼︎」

「お前が傷ついたところで——私が楽しいだけだ」

 ユウキが膝から崩れ落ちたのも、無理はないだろう。

「ああ、こっちのガキは吉川出流(よしかわいずる)。多少憎たらしいところはあるが、荷物を運ばせるならこいつにすべきだ」

「俺は運送屋じゃねえええええ‼︎ちきしょう、道具扱いしやがって!」

「よ、よろしくな…吉川」

 ひとみの口撃で同類感を感じたユウキは、吉川とがっちりと握手を交わした。

 その時、背後から一人の女性が近づいてきた。猫のような顔立ちに、ショートカットの髪。ロングピースを咥えてニカッと笑っている。

 そして、女ソルジャーのような黒のミリタリーパンツに軍靴、肌にぴったりあって若干透けている赤いアンダーの上に、黒のタンクトップを羽織っている。

 その胸の大きさ、腰のくびれ、まさに男の理想を体現したような体つきだ。

 だが、優輝はそれに動じることなく彼女を見返した。これが同年代でも枯れているとか、ジジイとか呼ばれてきた所以だろう。

「よーぅ、新人。アタシは古間(こま)(ひなた)。コマさんと呼んでくれや」

「あ、どうも初めまして、倉戸優輝です。ユウキと呼んでください」

「ん。…ふぅ——……そういやお前さんをひとみが見つけてきたんだっけね」

 コマが煙草の煙を吐き出しながら言うと、二人は握手をする。ふと、コマが首をかしげる。

「ユウキ、お前その服一体どうした?血まみれじゃないか」

「ってか今まで突っ込まなかった方がおかしいがな。こんだけ血まみれなの見て、気づかない方が変だろう」

 ひとみのもっともな言い分をコマがうんうん、と賢しらに頷いて流す。と、その背後にユウキはちらりと白い髪を見て首をかしげる。その視点の移動とともに、コマの背に隠れている一人の少女が目に入った。

 眼帯をした、アルビノの少女。野いちごのような目に、透き通るような肌や髪。来ている服はゴスロリだ。顔はこれぞ美少女というべきだろう。

 スタイルは黙秘するべきだが。

「初めまして、倉戸優輝です」

「ひゃん⁉︎」

 少女の対応に彼が解せぬといった顔をしていると、ひとみが「当たり前だろバカか貴様は」と嘆息交じりに悪態を吐く。

 呼吸をするが如き罵倒に優輝は若干気圧される。

「血まみれの少年に笑顔で握手を求められたら誰だってそんな反応になるわ馬鹿者」

 その言葉に彼は状況を理解し、同時に服に視線を落とす。今更ながら首が飛んだ(・・・・・)ほどの傷であることを考えれば、前面にべったりと真っ赤に着いた血は妥当なものだろう。

 ハロウィンでもなければ、「署まで同行願えますか?」と言われること間違いなしだ。

「おいおい、こいつほんとにダイジョーブなんか?ひとみ」

「待て待て吉川。ひとみ様の深い心は私にも計り知れんのだ…」

「なーるほどぅー。流石ひとみ様やー」

 二人がははーっ、と一斉にお辞儀をするとその頭頂部に回し蹴りが入る。

「「ぶぎゃっ⁉︎」」

 女子らしくない悲鳴をあげて、二人は吹っ飛んで行ったが、優輝は吉川の帽子が飛ばないことに若干感動を覚えていた。

「だ、大丈夫ですかー⁉︎」

 例の少女が駆け寄っていき、二人の顔面に手をかざすと、あっという間にその怪我が治る。二人は同時にサムズアップ。

 仲がいいのはわかるが、ふざけずにいられないのだろうか。

「あの子は西川(にしかわ)雛乃(ひなの)という。あの二人が着ていた赤い服は、あの子が作ったものだ。そして彼女はいわゆる治癒師(ヒーラー)。もう一人姉の揺乃(ゆりの)という子がいるが、そっちは今スパイ中だ」

「す、スパイ…」

 すでに優輝の脳の処理速度は限界を超え始めていた。が、そこに二人の人影が現れる。

「おぅ、新人ってそいつのことか?」「うわー、男だ。男だよ〜」

 一人は、酒瓶を片手に挨拶をしてきた。まだ9月の初めだというのに厚手のコートを羽織っている。40代くらいのオールバックで、顎に剃り残したような髭がポツポツとある。目つきがすこぶる悪いというのがもう一つの印象だろうか。そして酒の匂いをプンプンとさせている。

 もう一人は非の打ち所のないイケメンだ。それ以外に何と言おう。とにかくリア充なら十中八九イケメンと言うほどの顔つきだ。

 が、しかし。

 襟の開いた白いワイシャツだけなのだ。ダボっとしているから下は見えない。

「ユウキ。そいつ穿いてないぞ」

「ふぁっつ⁉︎」

 もはや優輝は混乱を超えて冷静になった。

「ってパンツ穿けよ⁉︎んでおっさんはなんで昼間っから飲んだくれてる⁉︎」

「かーてぇこと言うなって。こんなん水だ水。海外じゃワインと同じなんだよー。はーっはっは」

 優輝のツッコミに酔っ払い理論を押し付けられるが、そこはひとみが睨みつける。

「よくないな。非常によろしくないぞ、榊原雄吾。貴様私が昼間にいないからといって禁酒令破ったな?」

「禁酒令…ねぇ。これは水だよーん」

「ふざけていると殺すぞスカポンタン」

「二人とも!僕のために争わないで!」

 二人の間に割って入ったイケメンは同時にチョップと「テメェはすっこんでろ!」とのお叱りを受けた。が、優輝はまた驚く。チョップと同時にぽん!と音がして、イケメンが子供になった。小学生くらいの茶色のくせっ毛の男の子が、頭を押さえて半泣きである。

「…ふうぇ、いっててて。やっぱこの犬猿親子じゃダメかな」

「親子って…」

 確かに、人を射殺しそうな目つきがそっくりだ。犬と猿ではなく、雄吾が蛇でひとみが鷲といったほうがあってるんじゃないだろうか?

 優輝がそんなことを考えていると、ひとみが彼をジロリと睨む。

「今何かとても失礼なことを考えただろう?」

「ソンナコトアリマセンヨ⁉︎」

「図星か。やれやれ…仕方のないやつだ。二度目はないぞ。これが私を仕込んだ種馬の榊原雄吾だ。こっちの露出狂が横井瑞稀だ」

 ここで二人の反論が入る。

「流石に種馬はないんじゃねぇの父親(パパ)によ⁉︎ひとみ!」

「私の父親が昼間から酒をかっくらう人物だとは認めたくなかったんだ」

「僕の格好にケチつけないでよね!」

「パンツを穿いてからそれを言え変態が。ガキだと思って甘く見るのはあと1年だぞ、横井」

 確かに、若干はだけていたワイシャツはダルンダルンになって、肩が若干露出している。若干下着の件が薄れそうだが、彼シャツレベルと大差ないだろう。どちらにせよ穿いて欲しい。

 問答無用で服を着せたくなる。

 そして、二人にもやはり容赦のない言葉を浴びせるひとみ。

「もしかして、ここでの常識人枠ってひとみサンと雛乃ちゃん…?」

『そうだけど?』「常識人枠って何でしょうか…?」

 皆と一人(ひなの)の答えに、優輝は膝から床に崩れ落ちるのであった。

いつか暇になったらキャラ絵とか載せたい…

次もいつ更新できるかわかりませんが、頑張ってエタらぬように尽力します!

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