4 能力と疑問
短めです。
こんなことがあっていいはずがない。
「嘘だ、」
父親から危険を承知で入らされた高校で、ようやく見つけた仲間とも言えるべき存在。密かに能力を想像しては、どんな風に戦い、どんな風に生きるのか、今までどうしていたのか。
ひとみは彼の事を密かに気にかけ続けていた。
「あは、ははははははぁ…次はお前か」
白い刃からぬめりをもった赤い液体が滴り落ちる。彼女の足は、すでにまともに動かなかった。今までに仲間をなくした事など幾度もあった。
だが、目の前で唐突になくした事はなかった。
「ダメか…動け、……動けよ、あたしの脚だろう…」
歯がカチカチと音を立てる。男が汚く脂にまみれた歯を見せながら笑い、白刃を振りかぶった。
「ああ」
ゴンッ!!
激しい音が響き渡り、目の前にはーー。
「ゆう…き?」
「何か知らんが生きてる!走るぞ!」
震えが一気に止まる。脚にはみるみる力がみなぎる。優輝が血まみれのシャツを脱ぎ捨てると、血が垂れなくなった。
「この先だ!」
「ふぃー……いやあ、びっくりしたぜ。俺死んじゃうかと思ってた」
「頭…転がってたな」
沈黙が流れる。その上をたくさんの人間の靴音が通り過ぎる。ここはマンホールの下で、複雑に入り乱れた地下水道は絶好の隠れ家なのだ。
「とにかく議論した所で始まらない。行こう」
「あ、うん。俺どうして死んでも大丈夫だったんだ…?」
仮定としてはいくつか上げられるが、とひとみは前置きして言う。
「1、傷を治した…これは可能性が薄い。首千切れてたしな。
2、プラナリアのように生えて来た。だがあの場に頭部はなかった。
3、不死。これが一番可能性が高いな…何にせよ、調べる方法はあるが一回は死ななければわからん」
「そっかー…何か前にも死んだ事あるかもしれないな俺」
優輝の言葉に、ひとみは首を傾げる。
「どういうことだ?」
「俺の記憶がないんだよ。もちろん歴史とか数学とか、読み書きには困らないし、ぶっちゃけ博識すぎるくらい。でもそれまでの絆とか、親とか、通帳が俺名義で残ってるだけ。しかも一千万だぜ、笑っちゃう。それで、いろいろ興信所でも調べてもらったけど、まったく何もないし、常識じゃ考えらんない専制支配もあるし」
「記憶喪失…そうか。悪い事を聞いてしまった」
迂闊に聞き返したことをひとみは詫びる。
「私の能力も知っておくべきだろう。私の能力は、ズバリ『見ること』だ」
「見ること……何か地味だな」
「相手の持つ能力の詳細が、見るだけでわかってしまう。無論、発動中のみ見えるだけだが。動体視力と視力も上がって、ロングレンジで狙撃銃を使う時は風速などを勝手に判別し補正までしてくれる、スコープいらずの優れものだ。応用で、相手が次にする動きを筋肉や呼吸、心音などから勝手に判断してくれる」
優輝はほう、とため息をついた。
「要するに、俺が発動ーーすなわち生き返れば能力が判明するって判断でいいのか?」
「そう言うことだ。そろそろだ」
ただのまっさらな壁が出現する。何もないじゃないかと首をひねっていると、ひとみが壁へと手を伸ばした。そしてその手は、打ちっぱなしのコンクリートの壁へ吸い込まれて行く。
「な⁉」
「ほら、入るぞ」
優輝も恐る恐る手を伸ばすと、どうやら幻のようで、全く何も触れない。彼が腕を回していると、ゴン!と何かにぶち当たり、思わず悲鳴を上げる。
「大丈夫か?」
「うゔ…痛い」
彼はクスッと笑ったひとみの後につづいて、壁の中へと入っていった。
前回更新よりだいぶ経ちましたが、更新できました!ストックを乗せ切ってしまったのでペースはガタ落ちします。
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