3 反抗と逃走
まさかの展開を迎えます。説明回でもあります。ブクマしてくれた方ありがとうございます!
「うぎゃあああああ!!」
猫が感電した位の声を上げながら地面に衝突しそうになる。
「や、やばいやばい死ぬーー」
ぎゅうっと目を閉じる。三秒ほど経って優輝は地面に衝突しないのを感じ、目をおそるおそる開ける。
暗い裏路地。学校の校庭ではないのか、と首を傾げる。
「よっす、新人」
声がかかりそちらを見ると、目の前には赤いキュロットの、帽子を目深にかぶり顔の見えない少女がいた。
「ここは、」
「あと少しだけど三人分はムリ。俺は先に戻るぜー」
そう言うと、目の前からふわりと消えた。
「えーと、藤原、さん」
「ひとみと呼べ、敬称もごめんだ。呼び捨てにしろ、気色悪い」
「あー、じゃあひとみ。質問」
「スリーサイズか?体重か?」
「なんでそんな地雷質問すると思われてんの!?」
「お前はツッコミか。そろそろ私一人では捌き切れないんだ。後はお前に託す」
「いやツッコミ要員かよ!その前に託した後お前どうする気だった!?」
「ツッコミ放棄という名のボケをしようかと」
「それ一番困るから!一人であちこち突っ込んでると大変なんだからな!?」
「スリーサイズは上から99、99、99だ」
「教える気さらさらねぇ!……って、そうじゃないよ。こんなとこで漫才してる場合じゃないって。俺をお笑い養成所に連れて行くわけではないんだろ?」
「まあな。ここは人通りが少ないからしばらく身をひそめよう。ーーまずは、せんせえのことから」
せんせえ、その実は超能力者だ。彼女の能力は「声を聞いた者の服従」。内容がわからない世界中の人が従っているのもそういうことだろう。
だが彼女には致命的な弱点がある。
それは他の能力者に能力が無効であること。しかし立ち向かう勢力はいない。そんな中生まれた初めての勢力ーーレジスタンスだ。
私達は五年前から仲間を集めつつ反撃の機会を伺ってきた。そして、抵抗するユウキ、お前をレジスタンスに誘う。
嫌といえば死ぬだろう。
受け入れれば苦しいだろう。
選べ。
足掻いてみたくはないか?
「ーーで、俺が超能力者だと」
「ああ、心当たりはあるだろう?」
「ない。全く」
「……………ハァン?」
「ない」
長い沈黙が場を満たす。
「ちょっとも?微塵も?浮いたり心の声が聞こえたり時が止まったりしないか?」
「ない」
大きく、長いため息が漏れた。
「だがせんせえの能力が効かない以上なんらかの能力を持っているはずだ」
眼鏡を外し、そのつるを噛む。
「とにかく本部へ行って調べてみよう、移動すーー」
ひとみの言葉が止まったのは、ボケるためでも説明し忘れていたためでもなんでもない。
ただ、声が出る前に全ては始まり、悲鳴と同時に終わった。
ユウキの心臓を正確に貫いた日本刀が、ズブリと抜かれる。ユウキの口から大量の血がこぼれ出た。
「あ、あっ…」
「殺す、殺す、殺すーー」
男は薄ら笑いを顔に貼り付けて刀を振り上げる。某然としたユウキの首を狙って。
「しねぇえええ!!」
「ユウキ!!」
彼の首が、鈍い音を立てて転がり落ちた。
読んでくれてありがとうございます。
主人公が三話めにして呆気なくお亡くなりに。
いやー話どうしましょうかねー(棒)