2 『朝礼』、逃亡
二話めです!スラスラかけて嬉しいです。
よろしくお願いします。
「はーい、席についてください。『朝礼』が始まりますよ」
クラス全員が見える様に、前に映し出されたモニター。優輝は首を前へうなだれる様にしながら、それを見つめる。
『皆さんごきげんよう』
おはようございます、ではない挨拶に身体がはねそうになり、動悸を必至で隠す。それを横目で見ている少女がいるとも知らずに。
『うーん、今日はどうしよっかな。たまには面白い方が良いよね、うーん…』
クラス全員が画面を見つめている。その顔は生気が抜け落ちた人形のようだ。
『うん!よし、じゃあ部屋の真ん中の子を後ろにいる人が殺して?』
間引きもできるしね、と笑顔でいうせんせえに戦慄を覚えながら、心の中で俺じゃない、と息を吐いたその瞬間。
その期待は後ろから来た佐島梨花によって別の方向で裏切られた。
全くの無表情で、彼女は優輝の机にカッターナイフをことり、と置いた。
何が起こっている?
彼の頭はオーバーヒート寸前だったが、がたがたと震える手は関節が白くなるほど強く握られている。
「早くして?」
恐ろしいほどの戦慄。
彼の震える手はカッターナイフを手に取った。狙いが定まらないほど震えた手がスッと前に突き出されーー。
「…………できない」
彼の悲痛な呻きにきょとんと首をかしげ、得心がいったようにうなずく。
「せんせえに、逆らうんだ」
「何とでも言え!俺はっ…ぐぅ!?」
喉を鷲掴みにされて床に叩きつけられる。受け身を取っていなかったら、後頭部を打って昏倒していたかもしれない。
「う、ぅぐっ、」
「殺してくれないなら、せんせえに逆らうってこと。逆らうなら死ぬのは当たり前でしょ?」
女性とは思えないような馬鹿力でぎりぎりと締め上げながら彼女はいつもの様にしゃべる。
優輝の意識は剥がれかけ、ほぼまともな思考ができない。床を爪が引っ掻いて、口の端から唾液が漏れる。
これで、終わり。存外呆気ないものだ。
彼のそんな思考は一瞬にして吹き飛ばされた。
彼の目から入って来た情報は、何一つ反応をくれなかった。
「……チッ、手間のかかる」
梨花はその小さな体躯ごと他の机を巻き込んで、数名を戦闘不能にしていた。
鮮烈な蹴りの一発。
「え、と……」
「やれやれ、クラスメイトの顔くらい覚えろ。藤原ひとみだ」
眼鏡をかけた黒髪の少女が、切れ長の目で睨む。
「立て。おりるぞ」
立ち上がった彼の手を、乱暴につかむ。
「え?降りるってどこ、」
教室を走り抜け、彼女は窓枠に足をかけて無理やり優輝を引きずり出した。
「ちょ、ここ三階ーーうわああああ!?」
読んでくださりありがとうございます!
次回、説明が大半ですが最後に……。