1 支配された世界
二作目の投稿になります。一話だけだと分かりにくいので、二話以降もどんどこ更新したいです。
拙いですがよろしくお願いします。
2020年、4月21日、午後3時21分。
ハイヒールの音が響き渡り、会場をざわめきが支配する。
「お集まりの皆さん、ごきげんよう」
一人の亜麻色の髪の美しい日本女性がにこやかに笑い、国際会議の壇上に立っている。何人もが警備員に支持を出したが、全く動こうとしない。
「世界はーー支配されました」
これが、世界が支配された瞬間、後に『彼女』により『入学式』と名付けられた出来事である。
五年後、世界は何事もなく回っていた。
倉戸優輝は目覚ましのけたたましい音と共に起き上がる。歯を磨き、「今日も街は第一班のおかげで平和です」と流れるのを聞き流す。
戦争も、事件も、何もかもが平和でぬるま湯のような生活。
彼はいれたコーヒーをぐいっと飲み干し、学校カバンを持つ。彼の身体に染み付いたと言って良いほどのルーティンワーク。
「今日も、何事もなきゃ良いけど」
彼の不穏なつぶやきを他所に、級友の佐島梨花が「おっはよー!!」と肩をよろめくほど叩く。
「いって、何すんだよ」
「油断してるやつがいけない」
「ちょっとそこの、いちゃつくなー」
軽口を叩くのは優輝の親友とも呼ぶべき高橋大和である。
「そんなことしてねーよ!」
「言っておきますけどあたしも彼氏いるんだから!」
「はいはい。ジェームズ.M.田中でしょ」
「あれ?ジェフリー.E.山田じゃないの?」
「な、ななななんでもいいじゃん!?とにかく……あ、やばいもうすぐ五分前!?」
「まあ、予想はしていた」
「『朝礼』に遅れるわけにいかないでしょ!」
そうだ、と彼は緩みかけた顔を戻す。
『朝礼』。朝の九時に学校、職場、地球の裏側でも、同一時間に行われる放送のことだ。放送にはせんせえ自身が出演する。
そしてそこで一つの簡素な命令ーー例えば『隣の人と握手』『右半分が挙手』などの簡単な命令を下す。
たまに不適切なものもあるが、やれないことはない。常識の範疇ではある。
優輝は初めて見た光景に驚愕した。三年前以上の記憶がない優輝は、見よう見まねでやったのだが、自分以外が誰一人それを異様に思わないことを気持ち悪いと思った。
だが、従わなかった人間が泣き叫びながら第一班に引きずられてゆく様を見て、反論の言葉を飲んだ。
引きずりながら彼らは笑みを浮かべていた。
こんなに不穏当な『朝礼』は当たり前になってしまったのだが、と思索しながら閉められる直前の校門に滑り込んだ。
読んでくださりありがとうございます!
この話はだいぶ昔から練っていたのですが、設定の難解さゆえ後出しも多くなってつじつま合わせが大変です。
頑張って書き続けたいです。