何も知らない彼女の始まり
「ん…んん…ここは…?」
目が覚めると、木に囲まれているところにいた。どうやら、本当に知らない場所に放り込まれたらしい。
「夢だったら…って、思ったけど…夢じゃないらしいわね…一先ず、ここから出ないと…」
手で服の汚れを払い、この森を出ようと歩き出そうとした時、私は気付いた。
「どこに行ったら出れるのかしら…何か目印になるものは…あれかしら。」
辺りを見回すと、草が少なくなり道のようになっているところがあった。きっと、ここから出れるに違いない。そう思い、私はその道らしいところを辿った。
「本当に…これからどうしよう…一人暮らしもしてないのに一人で生きていけなんて…」
辿りながらそのようなことをぼやく。今まで、お父さんや周りの人の支えで生きてたのにいきなり知らない場所に連れてこられて生きていけって言われる。本当に無茶苦茶だ。全く話ができてないようなストーリーみたいだ…
そんなことを何回も考えながら、歩いていると。草むらがザワザワと揺れる音が聞こえた。
「…?動物、かな…」
足を止め、その草むらを見つめる。その時、全く聞いたことのないような鳴き声が聞こえ、ウサギの顔を更に凶暴化したような生き物が出てきた。
「な、なに…あれ…!?と、とにかく…逃げないと…!」
生命の危険がした私は道を一気に走った。後ろで鳴き声がまだするけど…今はそんなのに気を取られている暇なんて無い…
「本当に…ここは…違うんだ…!あんなの…見たことも聞いたこともないっ!」
自分は本当に…知らない場所に来てしまったと思った…
暫くして、鳴き声が聞こえなくなった後、私は木に引っかかって転けてしまった。
「うわあっ!?い、たた…!」
足から血が出る…そして、後ろからは再び聞こえる鳴き声…さっきより数が多い気がする…もうダメだと思った時
どこかから声が聞こえた
「おーい、誰かいるのか?」
どうやら、人らしい。そう思った私は思いっきり声を出し、助けを求めた。
「た、助けてください!誰でもいいですから!」
「そっちにいるんだな!分かった、すぐに助けてやる」
その声が聞こえ、ホッとしたのも束の間。私の前にさっきの動物が群れをなしてやって来た。
「っ…ぁ…助け…て…」
声にならない声を出し、助けを求めたその時
「またせたな!もう、大丈夫だ!」
自分の前にいた動物達が吹き飛び、横から男性が現れた。
「怪我は…あるのか。少し待ってろ、治療してやる」
その男性が私の傷口に手を触れると、血が止まり、痛みがなくなったような気がした。
「あ、ありがとうございます…!なんと言えばいいのか…」
「何故、そのような格好でそこに居たのかは不明だが…まあ、任せてくれ。追い払ってみせる」
その男は剣を取り出し、構えた。すると、奥にいた動物達が風で飛ばされたかのように吹き飛び、道が開けた…魔法なのだろうか、あれも…
「さあ、行こうか。君は どこの街の人なんだ?」
「あ、あの…えっと…分からないです…ここがどこなのかも…」
「まさか、記憶がないというのか…?なら、俺の住む街まで一緒に行こう。それからどうするかは、向こうで決めようか」
そう言われ、手を引かれると私はその人について行った。本当に良かった…真面目そうな人で…何か怖い人だったらどうしようかと…
「そういえば、名前は?」
「か、神奈です…」
「カンナか…俺はクライドって言うんだ。」
クライドさんの話を聞くところによると、どうやらここら辺は魔物の動きが活発になっていて、時々、近くの街の人たち…クライドさんの知り合いも見回りに来るらしい。それが無ければ本当に危ないところだったと聞いた。
「もうすぐ街が見えてきたな。あれが俺の住んでる街、トウデンだ」