第8話 初心者? 経験者? ☆
ザークとレイム、ラーグの3人は見学者用として用意された音楽室にある椅子に腰をかけている。
「みんなは初心者?」
「それとも、経験者かな?」
オペラとアールが彼らに問いかけてきた。
「初心者? 経験者?」
ラーグがその言葉にピンとこず、1人で悶絶している。
ピアノの近くでリヴァルと話していたロゼが「2年生は難しい言葉を使わないの」とやんわりとした口調で声をかけた。
「ごめんね。さっきの分からなかった人がよね? 「経験者」は中学校からとか一般楽団とかでやったことがあるよという人の意味で、「初心者」は高校から始めてみたいなと思っている人のことだよ」
彼女が分かりやすく説明をするラーグは「あぁ」と呟き、なんとなく分かった模様。
彼は「僕は初心者ですね」と苦笑しながら答えた。
「俺は経験者です」
「僕も」
一方のザークとレイムは聞き慣れている言葉であったらしく、経験者であることを伝える。
「経験者が2人で初心者は1人……なるほどねぇ……」
アールが複雑そうな表情をしていた。
なぜならば、彼女は初心者のラーグが途中で辞めないかどうか心配していたからである。
「今の3年生は全員初心者だったみたいだから、安心してね。もちろん、言ってる私も高校からだから、説得力がないけど……」
オペラがラーグの顔を見て、ロゼとリヴァルを指さす。
彼は彼女に「本当ですか!?」と問いかけた。
「本当だよ。ですよね、リヴァルさんとロゼさん?」
「うん、そうだよ。確か、2年生はアール以外は全員初心者だったはず……」
「ハイ。さっきも新入生に話しましたがー」
「まぁ、どの部もそうだけど、初心者も経験者も大歓迎だからね!」
「私たちは全員初心者だったからエズミ先生がかなり苦労してたみたいだけど……」
「分からないことがあればなんでも言ってね! 私たちもフォローに入るから!」
「ありがとうございます!」
ロゼたちはラーグにこう話すと、彼は少し不安が取り除けた模様。
一方のオペラは「先輩達に完全に流された!」と悔しそうに落ち込んでいた。
彼女はレイム達に「慰めて…」と言われたので、「ど、どんまいです」と言葉をかける。
部員達によって作り上げた複雑な空気を吹き飛ばすかのように「みんな、こんにちは! おっ、部活の見学にきてくれてありがとうね!」と1人のふくよかな女性が元気よく音楽室に駆けつけた。
2017/02/11 本投稿