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第5話 定員割れの学校は新入生の争奪戦!? ☆

 2050年4月14日……。


 入学式を無事に終え、ちょうど1週間が経ったある日のこと……。


 1年生の教室がある3階の廊下にはたくさんの部活動勧誘のポスターが貼られている。


 そして、彼らの手元には新入生ガイダンスの時に配布された部活動紹介のパンフレット。


 そのパンフレットには手書きやパソコンの印字で活動場所や部員数、入部に必要なものなどが書き記されている。



 ♪



 その日の昼休みのこと……。


「ザーク、部活の仮入部期間が始まるから、今日辺りから行ってみない?」


 レイムが水筒に入った飲み物を1口飲み、そのパンフレットを見ながら、ザークに訊く。


「そうだな。どこ回る? レイムも吹奏楽は絶対だろ?」

「もちろん! 入学式の時にホルンを吹いてた先輩と話してみたいし……」

「そこっ!?」

「うんっ!」


 その時のレイムは目をきらきらと輝かせていた。


「お前ったら……」


 ザークは彼が言ったことに対し、呆れていた。

 レイムは何かを思い出したかのように、


「僕は他に写真部の見学に行きたいな」


と言う彼につられ、


「実は俺もパソコン同好会の見学に行きたいと思ってるんだ。いずれは役に立ちそう」


とザーク自分の候補を挙げた。


「でも、実際に少子化だから新入部員の取り合いだよね」

「だよな」

「部活の種類はいろいろあるけど、運動部は団体は無理なんじゃないかと思うんだ……」

「剣道とかテニス、バドミントンは個人戦はあるよな? 陸上だとリレー以外は個人種目だし……」

「団体戦があれば個人戦があるものもあるね。この高校に通ってる僕の知り合いの先輩が言ってたんだけど、サッカー部と女子バレー部は助っ人がいないと試合にならないというわけで今年の新入部員の集まり次第で廃部だって」

「マジかよ。これぞまさに争奪戦じゃん!」

「そうだよ。定員割れの高校の先輩たちは毎年、必死らしいよ?」

「俺たちも早いところ決めないとな」

「そうだね。『入りたい部活があったらお早めに!』って感じだね」

「早く決めないと先輩にロクに活動してない(ところ)に強制的に入れられそうだよな」

「だから、そういうことが嫌だから早めに回り始めるの!」


 2人の深刻な話をしている時に、


「2人とも、吹奏楽部の見学に行くの?」


と1人の彼らのクラスメイトであろう眼鏡をかけた少年が彼らに声をかける。


「あっ、ラーグ君」

「ラーグも吹奏楽やってたのか?」


 ザークはラーグと呼ばれた少年に問いかけた。

 彼は肩をすくめて、


「ううん、やってないよ。中学校の時から少し興味があってね……。吹奏楽部ってハーレム状態っていう噂を訊いて少し行きづらくて……」


と溜め息混じりに答える。


「その気持ち、よく分かるよ」

「俺も最初は行きづらかったな……」

「僕はリコーダーくらいしか吹けないから、見学だけでも行ってみようかなと思って。もし、よかったら一緒に行ってもいいかな?」

「うん!」

「いいよ」

「2人とも、ありがとう!」


 3人はその日の放課後、吹奏楽部の見学をすることになった。



 ♪



 同じ頃、音楽準備室……。


「そろそろ新入生の見学期間が始まるね! 今年は去年よりも多く入ってもらえるように頑張ろう!」


 入学式の時に指揮をしていた女性が張り切った口調で2人の女子生徒に言う。

 彼女らはどちらも眼鏡をかけており、そのうちの1人はレイムが気になっているロゼの姿があった。


「エズミ先生、今年の新入生は2クラスじゃないですか」

「1人も入らない可能性だってあるんですよ? あの新入生の人数で部員を確保しようとどんなに頑張っても3、4人くらいしか入らないと思いますよ」

「それに私たち3年生4人が学校祭を最後に引退ですが、今年の新入部員の人数によっては活動停止あるいは廃部になるかもしれないんですよ?」


 女子生徒たちは今年の新入生の人数と今の吹奏楽部の現状を交互に言っていく。


「リヴァルにロゼ、落ち着いて」


 エズミと呼ばれた女性は一旦言葉を区切り、ロゼたちに


「この高校は定員割れだけど、それだからこそできることがあるんだよ」


とニタリと笑いかける。


「それはなんですか?」


 リヴァルと呼ばれた女子が首を傾げながら彼女に問う。


「もしかして、見学した新入生は速やかに入部させるということですか?」


 一方のロゼは自分の考えをエズミに言う。


「リヴァルはこれまでと同じ方法でということかな? まぁ、ロゼのは間違いではないよ。半強制的みたいな。ただ見にきただけで強制的に入部させるのは可哀想だからね。」


 エズミは彼女らの考えを汲み取ったようだった。


「強制的ではなくて……」

「半強制的に……」

「それが今年の『新入部員の争奪戦』の作戦だよ。部長のリヴァルと副部長のロゼが中心となって他にも作戦を練ってもいいからね。」

「ハイ」

「分かりました」


 彼女らは音楽準備室から出たあと、


「今年の部員集めは難しいな……」

「そうだね。どうする?」

「んとね……。私は今まで通りプラスアルファで……ね?」

「ロゼったら……」

「まぁ、今いるメンバーで頑張って部員を集めよう」

「うん」


 彼女らの新入部員の争奪戦はこれから始まる……。

書き下ろしエピソード


2015/10/18 本投稿

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