確認
姉が居なくなってからの母は少し変わった。僕が何か間違ったことを言うと直ぐ様叱るようになった。
僕もこの国の決まりの事は知ってはいたので特に問題行動は起こさないように振舞っていたし、成績も上位を死守していた。
客観視してもこれほど生徒の見本として相応しい者は居ないのではないだろうかと自負する部分さえあった。
だけれども、それは届いてしまった。
ひとまず、落ち着こうとキッチンまで移動し冷蔵庫からペットボトルを取り出し部屋に戻る。
「何かの手違いじゃないのか?」
1人でにそんな思考になっていた。
飲み干したペットボトルはそのままに、すぐさま役所に確認へと急ぐ。
役所へ着いた少年は正面の受付に足を運んだ。
中にいた女性に送られて来た封筒と中身を見せた。
「こちらでは受付しておりません、奥の特別封鎖地区受付までお越しください。」
特に珍しいモノでもないのか女性は淡々と場所を説明してくれた。
石の造りのタイルをパスパスと音を立てて歩く、夏休みではあるがあまり人がいるようには思えない。役所内部を歩いて行くと一つの案内板が目に入った。
『特別封鎖地区受付はこちら→』
案内に従って歩くと小さな窓口が見える。
チャイムを鳴らし人を呼ぼうとした時後ろから声が聞こえた。
「何かお困りでしょうか?」
後ろを振り向くと1人の優しげな中年男性が立っていた。
「こちらで特別封鎖地区についての受付があると聞いたのですが…」
男性は一瞬眉をひそめたが直ぐ元の笑顔に戻し、話し出した。
「確かにここで合ってるよ、私がここの受付担当なんですよ。こんな時期に人が来るとは思わず少し休憩に入っていてね、お待たせしてしまったようで…。」
「いえ、今さっき正面の受付でこの場所を聞いて来たところなんです。」
と説明をして手元に持っている封筒やパンフレットなど男性に見せた。
中身を確認する男性は再び眉を潜め言った。
「今の時期になってコレが送られてくるなんてねぇ、普通は試験後数週間以内には知らせがあるハズなんだけれど、どういう事なんだろうね、少し確認をしてくるからこっちの部屋で待っていてもらえるかい?」
そう言って男性は受付の隣にある部屋へと案内してくれた。
「直ぐに確認をしてくるからもう少し待っていてくれるかい。」
そう言い残し部屋を去っていった。