強制力
何故、今更になってこんなものが家に届くのだろうか。
中学三年の卒業と同時に受けさせられた試験。
受験者には、合格した場合にのみ連絡が行われる事になっていて、それと同時に、学校のパンフレットや諸々の書類等が強制的に贈られてくるはずだった。
もちろん、期日内に連絡がない場合においては、一切の連絡はないので、
連絡のない家の者同士でお祝いをしたりと安心感と同時に号泣する者が多くいた。
それに、もう別の高校に通っている。
中学では生徒会に所属していたし、
内申や成績なども学年でTOP3に選ばれるほどで
超が付くほどの進学校にも合格した。
青春を謳歌出来るはずであった少年は、ひどく落胆した。
そして、最後の一文に目を向けた。
『なお、拒否した場合において、本人を含め六親等までの者の国籍をはく奪、または処罰の対象とする。』
「あの時と同じだ…。」
遙には3つ年上の姉がいた。
姉の奏は人として何処かおかしい所があった訳でも問題行動があった訳でもない。
少なくとも自分の知っている姉は悪いコトは悪いと言える人間であったし、冗談だって通じるようなお堅い秀才という訳でもない。どこにでもいるような人だった。中学も三年間普通に通っていたし、いじめがあったとか誰かに何かしたとかそんなコトも聞かなかった。
卒業式を終え4日ほど過ぎたあたりで今手元に持っている封筒と全く同じものを姉が持っていた。
中の書類を持って震える姉に声を掛けたが、心配しないでと一言言われただけだった。
親は母だけの片親だったが行事の毎に母は仕事を休み、僕たちのために時間に都合を付けてくれていた。
4月に入ると僕と姉のどちらかの入学式に顔を出してくれると言っていたが結局恥ずかしいのもあって僕は断っていた。
それでも、母は僕の入学式に顔を出してくれていた。姉が居なくなったからだ。