19 運命の初恋
二章です。遊視点中心で書いていきます。
一年ぶりですね。療養していたから仕方ない……すみません。
「けっこんして!!」
白銀の髪で翡翠の瞳の持ち主の少年・ヴォル・テッラは、一目見た瞬間に恋をした少女に求婚した。四歳になったばかりの気弱な少年の精一杯の勇気だ。
「イ、ヤ」
しかし、黒髪と青い瞳の持ち主の少女・ローム・ヴォルフは即答で断る。
そしてビデオカメラを向ける父親シリウスを振り返って「パパとけっこんするー!」と満面の笑みを向けた。
「おおー! 嬉しいねッ!!」
ロームを溺愛するシリウスは大喜び。
しかしヴォルのことを忘れていない。
「でもヴォルに、もう少しチャンスをあげてくれないかい?」
「えーやだぁー。ヴォル、なきむしだもぉん」
ブーと唇を突き上げてロームは一蹴する。
泣き虫と言われ、結婚を断れて泣いたヴォルは更に泣いた。
「そう言わず。ね? ローム」
シリウスはカメラを持っていない方の左手でロームの頭を撫でる。
「じゃあっ、あたしのふさわしいかっこいいおとこになったら、けっこんしてあげる」
ヴォルを振り返ったロームは、無邪気な笑顔で一つ歳上の少年にチャンスを与える。強気で眩い少女の言葉に、ヴォルはコクコクを首を痛くなるほど縦に振った。
「ねぇ、ローム。どうしてそんな意地悪を言うんだい? ヴォルのこと、一目見て好きになったんだろう?」
ヴォルに聞こえないように、シリウスはロームに問う。
「ヴォルは、うんめいのひとだとおもうの」
ロームは声を潜めてシリウスに答えた。
「でも、ヴォルはもっともっとかっこよくなれるから、がんばってほしいの! ないしょだよ、パパ」
「ふふ……うん、パパとロームの秘密だね。ヴォルをかっこいい男になれるように育てるよ」
シリウスは約束した。ロームのために。
そして。
「ヴォル。かっこいい男になるんだぞ。ロームを、守り抜いてくれ」
ヴォルの頭に手を置いて、告げた。
◆◆◆
「……で? そのためにこの少年を育てたってわけ」
それは遊が初めてヴォルフ家の豪邸に着いた日のことだ。ビデオを見せられた遊は、腕を組みシリウスを見下す。
ビデオの中の少女と同一人物だとは、到底思えない。
それでも遊とロームは同一人物なのだ。
「覚えてもいないのに……婚約なんて認めるわけない」
「あはは。そうかな。君とヴォルは運命の赤い糸で結ばれていると思うよ。こうして再会も出来る」
「貴方が気晴らしに来るように言ったから来ただけのこと。貴方が仕組んだ再会にすぎないでしょう」
ビデオの中では無邪気に「うんめいのひと」と言っていたロームは見る影もない。バッサリと言い放った。
「本気でくっつける気なら、無駄だから」
「まぁそれは置いといて、ね。ローム」
椅子に腰をかけていたシリウスは立ち上がって、机の前に移動する。
「ローム。君に俺の後継者になってほしい」
「……は?」
遊は黒い瞳を大きく見開いた。
「……私に、マフィアのボスになれと?」
「そうだよ」
「……私に、マフィアのボスになれと?」
「二回目だけど、そうだよ」
確認のため、二回問うた遊はやがて、フッと笑みを溢す。
迷うことなく、机の上にペーパーナイフを取り、実の父親であるシリウスを刺そうとした。
そこで現れたのは、成長したヴォル・テッラだ。
「やぁ、ちょうどいいところに来たね。紹介しよう」
羽交い締めにされて引き離された遊が、ヴォルを見た。目を合わせた瞬間、遊は力を抜く。じっと見上げてしまう。
自分より背が高く、白銀の髪、翡翠の瞳。立派の成長したヴォル・テッラは、遊の好みだった。
遊には悔しいことに、一目見てヴォルのことを気に入ったのだ。
それこそ、運命かのように。
20170728




