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閑話 殺人鬼


ホラー映画が観たい……。

あまり今後の関係ないですが、グロ流血ありです、ご注意を!






 アメリカのとある地下鉄。そこは最終電車の中だった。他に人気などない走行中の電車の中を、一人の女性が命からがらの様子で走っていた。

 長く癖のある黒髪は艶やかな光を放ち、長い睫毛の下の黒い瞳も人を惹き付ける美しさがある。しかしその黒い瞳は迫りくる恐怖を映し、彼女を駆り立てた。

 アジア系ではあるが色白で、幼さが残る顔立ち所謂ベビーフェイスの持ち主であるが、ブラウスでは隠しきれない豊満な胸と引き締まったウエストの美しい女性だ。どこかのパーティーの帰りのように、気品あるタイトスカートを履いていて、走ることに不適切な高いヒールを履いている。

 彼女を追い回すのは、斧を片手に迫る男だった。鉛色の斧を彼女の血で染めようと、大股歩きで追い掛ける。

美しい彼女を壊す。その快楽を想像するおぞましい殺人鬼の鼻息は荒い。


「お願いっ……来ないでっ……!」


 涙ながらに言う女性の逃げ道は、ついになくなってしまう。次の車両に行くためのドアが、開けられなかった。

ドアを背にして、女性は懇願するしかない。


「お願い、殺さないでっ……殺さないでっ」


 猟奇的な殺人鬼にとって、そんな懇願は無意味に等しい。

怯えた彼女を見て、ニヤリとただ笑う。どこを見ても美しい女性を眺めると、やがて斧を両手で掲げた。

 不幸な女性の悲鳴が、走行中の電車の中で響き渡る。


 ――――はずだった。


悲鳴はない。殺人鬼は斧を振り下ろしてもいない。

彼が振り下ろすより早く、女性が右手を振った。

 その右手にあるものは、ナイフだ。鋭利な輝きを放つナイフ。

それは殺人鬼の首に、赤い一筋の傷を作った。そこからだらりと血が溢れ出て流れ落ちる。殺人鬼はわけもわからず、膝から崩れ落ちた。


「あら……少し深すぎたわね」


 先程の怯えた様子など欠片もなくなった女性は、左の指先で髪を掬い耳にかけると足元の殺人鬼を無情に眺める。

 ナイフをタイトスカートの中にしまいこむと、白いブラウスを脱ぎ始めた。

赤い下着姿をさらけ出したまま殺人鬼の上を跨ぐと、白いブラウスを敷いて座席に座る。

 そこに置かれていたワインレッドのブラウスを着て、ボタンをしめながら「死なないうちに食べていいわよ」と一言告げた。返事はない。


「電車であたしを殺すなんて、傑作だわ」


 一人言を溢しながら、女性はコンタクトレンズを外した。血に濡れたような紅い紅い瞳だ。


「そう思わない?」


 ぺたりと、女性は窓に一枚の写真を貼り付けた。

紅い瞳が見据える写真に映るのは、隠し撮りされた白銀の髪の青年。


「白い牙の番犬」


 フェンリルファミリーのボスの右腕、ヴォル・テッラ。

 紅い瞳の魅惑な女性は、ニヤリと紅い口紅が塗られた口元で妖艶な微笑を浮かべて写真を見つめた。




20140806

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