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秘密のマイカちゃん  作者: 鈴波 潤
3/9

第3部

これは40年前の、高校生の物語です。

今と違い、テレビで普通におっぱいが出て来るのに、女性の下半身がどうなっているのかは、毛も含め謎だった時代。

主人公、朱雀還流ミナミメグルは、ようやく肥満児から脱出した童貞の男子高校生(被イジメ歴あり)。

少しだけ頑張って、ようやく入学した高校で、彼は運命の人と出会います。

彼女、桃澤マイカは、ごく普通の女子高校生。普通よりちょっと可愛く、普通よりちょっとおっぱいが大きくてとても形がいいだけの、普通の女子高生です。

彼は彼女と結構衝撃的な出会いをし、付き合う事になりますが…。


この時代まだ生まれていない若い方にも、

お父さん、お母さん(おじいちゃん、おばあちゃん?)の青春時代。

「携帯がなくて、女の子が普通にブルマで体育してた時代。」

の1970年代を楽しんでいただけたらと思い、この作品を書きました。

■松竹梅■


悶々として寝不足で通学していた頃、ある日末松が俺に話があると言って来た。

こう言う時は間違いなく厄介なお願いだ。しかも恋がらみ。

末松は同じ中学で、俺は実は苦手だった。

お調子者の噂好き。

俺がイジメられた中一のクラスにはいなかったが、いたら間違いなく率先してイジメる側に回っただろう。そういう面白そうな事大好きな奴なんだ。英語の教材で、面白がって池に石を投げる子供に

「アンタには遊びかもしれないが、俺たちには命がけ」

と蛙が抗議するイソップの話が乗っていた。ヨッコが隣の席の俺にこそっと

「末松くんの様な子ども」

と言った時、おれは深く同意した。

回りも常々そう思っていたらしく、末松がいしだあゆみの歌の一節、

「私のどこがいけないの」

と口ずさんだ時、その場の全員が、

「全部だよ」

と突っ込んだのも覚えている。愛嬌があり、悪気は無いのだが、今で言う空気が読めない奴。俺もイジメを受けるまでは、そんな奴だったと思うから、近親憎悪かも知れない。


末松はこう言うのだ。

「ミナミ、お前の彼女T組だろ?だったら何とか俺と綸子姫の仲を取り持って欲しいんだ。頼む。このとおりだ」

末松は腰に手をあてて、そりくり返って言った。ここで突っ込むのはマズい。この態度を指摘すると、

「じゃあこれで」

といきなり土下座をして、そのギャップで言う事をきかせるのが奴の手だ。


マイカと付き合い始めて数日後、俺は放送室で、翌日のDJ音楽の編集のため残業していた。レコード(アナログのね)と言うものは、どうしても傷が入り易く、深い傷になると、針が同じ所を永遠に繰り返すリフレイン現象が起こって、番組が台無しになる。

ヨッコはいつもは落ち着いた大人の女声のDJをやるのだけれど、ハプニングに弱い一面があり、トラブルが起きるとパニクってしまう。そんな時の彼女のDJはオクターブ高くなるのですぐ判る。だから俺たちは、必ず音楽を一旦テープ(オープンリール)にダビングして使っていた。DJ担当が所用で昼に来れない時は、前の日までにDJも録音して、一番組まるまる録音で流したりした。


ちなみに当時の選曲の定番はクラシックかイージーリスニング。フォークもメッセージ性の強いものは駄目。ロックは不良の音楽だった。ポールモーリアとかかけておけば教師のうけも良かったが、ロック+プログレ少年だった俺は、時々ロックをかけて問題になっていた。キングクリムズンの

「21世紀のピー(今は書いちゃ駄目なり)」

をかけた時は、顧問の英語教師がすっ飛んで来たなあ。2年になった新歓で、放送部は短い部紹介テープを講堂で流したが、ビートルズの”Come Together”をBGMに使ったら、評判が良くて新入部員が増えたりした。ウォークマンもiPodもない時代なので、昼のDJは結構評判良かったんだよ。


さて、そんな残業を夕方までしながら、

「今日はマイカと帰れるかな?」

などと一人ニヤニヤしていたら、外から

「頼もう」と言う、思い切り時代錯誤の声がした。

「すざくかんりゅうどのは居られるか?」

「はい、僕がミナミメグルです」

ちょっとびびって俺は答えた。時代劇の道場破りみたいな武家言葉でありながら、声の主は凛とした女性の声だったからだ。

「あ、失礼しました。さっきまで後輩の指導をしておりましたので…」

どんな指導だと思ったが、入って来た姿を見て納得した。剣道着姿のすらりとした長身美少女が、そこにいた。

「お初にお目にかかります。2年T組の青梅綸子と申します」

まあこっちはお初ではなかった訳だが。


一年の頃、俺は恋を夢みながら、通り過ぎる美少女を眼で追い、気になる子を見つけると、ヨッコに聞いたりしていた。

「青梅?あれは無理。あの子は段持ちで入学して来たバリバリの剣道少女だよ。剣道部の顧問の愛弟子で、言い寄った男は、全員剣道場で正座さ」

それは怖い。俺は即座に諦めた。

「大体あんなスポーツウーマンが、あんたのプヨプヨな腹を好きになる訳ない」

男を筋肉で評価する女、恋人の割れた腹筋であみだくじをやる女ヨッコはそう断言した。中学時代よりは肥満児から脱出したんだけどな…。


学内の美女を網羅した末松データベースによると、


青梅綸子おうめりんこ

ランクAAA。

T組ファッションショーの特選モデル。

身長175cm。

おさげの可愛い純和風美女。

剣道初段。別名は

「鉄火のマキちゃん(顧問のお孫さん命名)」

その名のとおり、義理人情に熱いアニキな性格。

スレンダーでしなやかな体形。

胸の発達は不明(ガード堅し)。


甘いな末松。小振りだが美しいお椀型の胸なのは、ファッションショーの日に確認済なのだよ(これ内緒)。


放送室に入って来た彼女は、驚くほど率直に物を言った。

「あなたの人物を拝見しに参りました」

T組は女の園。縦割りの授業も多く、ファッションショーも3学年合同なので、自然先輩LOVEな後輩も多くなるが、青梅綸子には熱狂的なファンクラブ

「凛綸組」

が存在し、その宝塚男役スタァ的カリスマで、剣道部に女子部員が大量発生と言う、弱小部の部長には、何とも羨ましい事態になっていると言う。

さっきの時代錯誤な武家言葉も、どうしてもと頼まれて使っているそうだ。だが普段の一人称の

わたくし

も、きりっとして、ちょっと美人秘書みたいで(会った事無いけど)なかなかいい。

「まさに錦絵から抜け出した様な…」

生粋の美少女剣士、それが青梅綸子なのである。


T組では綸子やテケップとは別の意味で(放っとけない…)人気のある

「もも先輩(桃澤マイカ先輩)」

に彼氏が出来た、と言うのは衝撃的なニュースで、現にヨッコは廊下で、

「あれがもも先輩を毒牙にかけたケダモノね」

という一年の会話を聞いたそうだ。

先回のファッションショーで、俺はT組でも知られる様になったが、放送部員としては有能でも、マイカの恋人としては、首を捻る人も多いとか…。

2T一の人格者と尊敬され、マイカの大事な親友である綸子が、T組を代表して俺をリサーチしに来た訳だ。。


「ミナミさん」

「なんでしょう?」

「貴方はマイカを一生幸せにする自信がありますか?」

「まだありません。でも一生愛し続ける自信はあります」

切れ長の目を一杯に見開いた綸子は、胸ポケットの辺りをおさえた。ポケットの中の生徒手帳に、いかなる写真がしまってあるか。その時の俺には知る由もなかった(伏線にもなってない。その日の内にマイカに聞いちゃった)。

「わかりました。貴方とは友達になれそうな気がします」

凛綸組が聞いたら失禁しそうな言葉を残して、青梅綸子は去っていった。

合格だったらしい。


という大変な綸子姫なので…。

末松には無理。


第一、綸子には想い人がいる。

佐竹は俺と同じ中学から来ており、あだ名は殿様。

天文クラブ部長。

秋田に佐竹という大名が居たが、傍流の末裔という噂だった。

奴は俺の親友というより、大げさに言えば命の恩人で、中一のイジメの時、2ヶ月程学校を休んでいた俺が、ようやく登校出来た時、

「ミナミと口きいたらただおかねえ」

というクラスの凍り付いた雰囲気の中、それまで殆ど知らなかった俺にいきなり話しかけ、護ってくれた。 ちなみに女子で最初に口をきいてくれたのはヨッコだ。

佐竹は無口だが、本当に頼りになる奴で、天文倶楽部は奴が創立したクラブであった。その行動力は驚く程で、学校に掛け合い、顧問を頼み、部員を募集し、クラブの主な行事で、カップルに特に人気のあった

「観星会」

を主催していた。まあ学校のお墨付きで、星空の下の屋上デートだから人気がでるのは当たり前だが、佐竹は

「動機はなんでもいい」

と、気にも止めない。


綸子は端で見てて、けなげな程惚れていたが、佐竹は恋愛にはあまり興味が無い様子だった。マイカによると、二人きりの時、佐竹の事を話す時の綸子は、きゃぴきゃぴの恋する乙女の様だと言う。

もったいなさ過ぎるぞ、佐竹よ。

俺も何度か見かけた事があるが、佐竹の前の綸子は子犬の様に可愛い。175cmもある綸子だが、相手が更にデカイのだ。俺の柔道部と同じく、入学式の時いきなりバスケ部の部室に拉致されたという程でかい。190cmは超えている。いつもは周囲を睥睨する綸子が、頬を染めて佐竹を見上げる姿は、縮尺を忘れる程可愛い。

「あ…あの」

「どうした青梅さん」

「これ…」

「これは?”天文ファン19●●年7月号”!」

「はい。部室の本棚に、この月だけなくて」

「そうなんだ。どこに売ってた?」

「京極堂で…」

「あそこは古文書専門…、盲点だった。他にも天文関係が?」

「はい。で。今度いっし」

「今度行って来るよ。ありがとう。代金は?」

「いえ…。いいんです」

「それは困る。”友達同士でも金の貸し借りは厳禁”が佐竹家の家訓」

「に…、にひゃくえんでした。…ともだち…」

こんな数分の会話を、マイカは延々数時間聞かされる事になる。もちろんまる一日を費やして古書店巡りをし、ようやく発見した喜びとか、百円玉2つは宝物。一生使わない。とか…。


佐竹は決して美男子ではなかったが、男子にも女子にも惚れられる男で、奴にはかなわないという思いがあった俺は、綸子繋がりでマイカが観星会に行こうよと行った時、ちょっと嫉妬してしまい、曖昧な返事をしていた。


「お前は佐竹に勝てるか?」

と言われた末松は力なく首を振った。

まあ奴は惚れっぽいので、また次を見つけるだろう。うちの1年部員にも目をつけ、かなり引かれていたし。

去り際に末松が、

「そういや、お前の彼女さ。グリーン教室だった奴に聞いたんだけど、田岡と噂があったんだってな」

やっぱりこいつ嫌いだ。


人間、つらい事は後回しにしたくなるもの。試験前になると、なぜか勉強放っぽって部屋の模様替えをするように、ずっと頭から離れなかった、

「俺はジョージ・ワシントン少年になるべきか?」

という悩みはひとまず隅に

「置いといて(NHK、”ジェスチャー”の仕草で。知らないか。)」

マイカと田岡先生との噂の真相を確かめたいと思った。

顔色の変わった俺を見て、末松はまずい事言っちまった事を悟り、そそくさと立ち去ろうとした。平和主義の俺だが、急を要する案件のため、ちょっと胸ぐらなど掴ませていただき(そう言う時この体は便利)、辛うじて噂の出所であるグリーン教室に通ってた奴のクラスと名前を聞き出す事に成功した。

「ああ、マイカね。途中から突然田岡先生が連れて来てさ。月に二回位、マイカは学校休むんだけど、その日は私服着て田岡先生の車で塾に来てた。おっかしいわよねぇ。大人が中学生なんか相手にしないと思うけど、マイカ胸大っきいからなあ…」

その子は俺がマイカと付き合ってる事を知らないらしく、チェリオ一本でぺらぺら喋った。


田岡先生は、グリーンとオレンジを掛け持ちと言う事は聞いていた。古いスバル360は、生徒のからかいのタネだったが、先生には良く似合ってる気がした。あの車で二人はどこに行っていたのか?回りくどい事は嫌になったので、俺は本人に聞きに行く事にした。と言っても、流石にマイカに聞く勇気はなかった。嘘を言われるのも嫌だった。

やっぱりこっちが先だな。

尊敬する大好きな田岡先生だけど、人間という種の一対一の牡として、先生ときっちり対決しなければならない。

マイカは俺の女だから(しっかり心はビーフ)。

田岡先生はマイカをどう思っているんだろう?薔薇的な意味ではなく、もし俺が女ならば、俺も先生に惚れると思う。田岡先生が好きなら、マイカはどうして俺に告白したんだろう。


■喪服のイブ■


その日の帰り、俺は田岡先生に会うため、塾に行った。

俺たちの頃と変わらなければ、月水金はオレンジ教室のはずだ。

高校の合格発表の時でも、こんなにドキドキしなかった。雄々しくビーフの心で、田岡先生と対決するつもりで校門を出たが、歩いて行くうちに、足が地面にめり込んで行く様な気がする。ビーフと言うより、ドナドナの仔牛だ…。田岡先生は、もの凄く率直で嘘の無い物言いが、俺たちの信頼を得ていた。それだけに、いつもの様に淡々と語られたら、もう立ち直れない。

「お付き合いはしていないのですが…。彼女が是非と言うので、性交渉を持った事があります。ええ、初めてだった様ですね」

とか…(こういう時は、どんどん悪い想像が沸いて来る)。

何度そのまま家に帰ろうかと思ったか知れないが、ここで逃げたら二度とマイカを真っ直ぐ見られない気がして、底なし沼に沈む足を前に進めた。例えではなく、塾近くのバス停に降りてからは、自分の手で足を持ち上げて、一歩一歩進んでいた気がする。


塾に着くと、塾長が玄関の鏡の前でネクタイを締めている所だった。

「先生お久しぶりです。どうしたんですか?背広なんて着て」

「おおミナミ君か。久しぶりだな。君も来なさい。これから田岡君の通夜だ」

神様…。それはないんじゃないですか?

合宿のあった寺への道すがら、塾長は運転しながら話してくれた。博士論文の仕上げで過労がたたり、あの車でガードレールに激突した事。警察はいねむり運転と見ている事。

さりげなくマイカの事を聞いたら、彼女は田岡先生が連れて来たというのは本当らしい。大学の実験室で何かの手伝いをしていた。とも。

中学生が?

割り切れない顔をしていると、

「そうかミナミ君はマイカちゃんが気になるんだな。田岡君とマイカちゃんは、つきあってはなかったと思うよ、兄と妹みたいではあったが」

この人の勘は、時々鋭いから困る。


寺に着き、塾長が友人の住職に挨拶した。

急だったのと、町から少し距離のある寺なので、あまり人は多くなかったが、オレンジとグリーンからは、現役がかなり来ていた。みんな泣いていた。この塾では見た事のない、

「喧嘩上等」

みたいなつっぱった奴らが、人前で声を上げて泣いていた。どこで田岡先生と出会い、大泣きする程の恩を受けたのだろう?先生ならありそうな話だが…。

祭壇の田岡先生の写真は、いつもの照れた様な笑顔を浮かべていた。塾でバーベキューパーティーをした時の写真だ。

ヨッコがいた。

「あ、メグ。驚いたよ」

俺は突っ込むのも忘れて、ヨッコの横に立った。

「マイカは?」

黙ってヨッコは指差した。田岡先生は親も居らず、身寄りは殆どいないと、塾長から聞いていたが、下宿の大家さん夫妻に並んで、小さなマイカが黒いワンピースを着て参列者にお辞儀をしていた。

親戚なのか?


焼香の時、マイカに話しかけようと思ったが、目に涙を浮かべながら、気丈に挨拶しているマイカが、少しでも話しかけると壊れてしまいそうだったので、目で挨拶だけしてヨッコのところへ戻った。

「マイカと田岡先生って」

「マイカの隣に立ってた女の人さ、田岡先生の婚約者でみそのさんって言うんだけど、マイカの従姉妹なんだよ」

確かに喪服を着た、きりっとした感じの美人が挨拶していた。あの人がビートルズの従姉妹かな?田岡先生とは大学院の同級生だったとか。研究の為とは言え、先生の無茶を止められなかった事を悔やんで、後を追おうとしたらしい。マイカが偶然下宿に行って、彼女を止めたとか。事故は昨日の夜明け頃で、マイカは今日学校を休んだらしい。


従姉妹のお姉さんの彼氏か…。


どうしていい人は早く逝ってしまうのだろう。

俺と付き合う前に、マイカが誰を好きでも仕方が無い。噂の真相は解らないが、田岡先生はもう永遠に勝てないライバルになってしまった。みそのさんという婚約者にとっても、これはきっと簡単な三角関係では無い気がする。

マイカは従姉妹の為に身を引いたのかな?

俺にとってもかけがえのない存在を失った悲しい葬式なのに、俺はそんな事ばっか考えていた。

いつもは頼もしいヨッコだが、前にも言ったけど、子供の頃のトラウマで、こんな時はとても動揺してしまう。流石に憔悴している様で心配なので、俺はヨッコとタクシーに乗って寺を後にした。

「マイカがんばってたね」

「うん」

「マイカ、田岡先生もみそのお姉ちゃんも、大好きっていってたからなあ…」

男としてだったのかな?とは怖くて聞けなかった。

「マイカを支えてあげてね。高畑君」

タクシーの中で、ずっと俺の手を痛い程握りしめていたヨッコを家に送ってから、歩いて家に帰った。


田岡先生の訃報を、ヨッコからの電話で知った母は、俺に連絡がとれないまま、帰りの遅いのを心配していたそうだ。学校に行けなくなってしまった息子が、立派に高校進学出来た事を母は大変感謝しており、高校進学後も、塾には中元・歳暮を欠かしていなかった。

「メグル。塾の…」

と、言いかけた母は、俺の真っ赤な目を見て全てを察した。俺は黙って、通夜の礼状を渡す。母は、塩を取り出し、俺の肩に振りかけた。俺は塩を肩から払いながら、

「塩かけなくて、先生の幽霊が来ちゃうんだったら、それもいいけど」

と考えていた。今はいっそ本当の事を聞きたい。


次の日からマイカは学校に来なかった。

何とか力づけたいと思いながら、彼女が落ち込んで学校に出て来ないのは、愛する田岡先生を失った事が原因と思いたくなくて、何も出来ずに、学校から帰ると部屋に閉じこもっていた。

こんな時こそ、恋人を支えられずにどうする!と思いながら、わき起こる黒い妄想と戦う数日間だった。

ようやく俺の心の中で高畑が勝利して、マイカの家に電話したのは4日後だった。しかし本人は家にいないと言う。従姉妹の事が心配で、ずっと一緒に行動していると、母親は言っていた。俺の事は、マイカから聞いていたとの事で、マイカは俺の事を母親に、

「田岡先生みたいな人」

と言っているという。褒め言葉だろうが、複雑だ。ここでも

「あの子をよろしくね」

と頼まれてしまった。


(第3部終了)

まだ続きます

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