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幻想冒険談  作者: 以龍 渚
本編
7/32

第七話「アンデットの村」

 すると、サレントは竜封剣の転がっている場所へと歩いていく。

「以龍さん、でよろしいですよね?」

 サレントは竜封剣を拾い上げ、こちらへと戻ってくる。

「この剣――竜封剣はどうやって手に入れたのですか? これは簡単に人が手に出来る品ではありません」

「そいつは貰い物だ。――いや、押しつけられたというべきかな?」

「押しつけられた? そんなはずはありません。だって、あの人にとってその剣は――」

「あの人? お前、リネクを知ってるのか?  ――! いや、待て。フィナルって名前はたしか――」

「はい。リネク・フィナルは私の父親です」

「父親ぁ!? あいつ、娘なんかがいたのかよ。――まぁ、昨日今日に会った人間のことなんて、そうそうわかりはしないか」

「昨日今日に会ったって、なんでそんな関係でその剣を託されるのですか?」

「悪いがそれはリネク本人に聞かないことにはわからないな。俺はただ、『渡すことになっている』とか訳の分からん事を言われて押しつけられたんだからな」

「そうですか……。それで、あの人は今どこに?」

「訳あって、ガルラで別れることになった」 そう言いながら、以龍はラビッシュに視線を向ける。

「な、なんだよ兄ちゃん、その目は? おいらのせいって言いたいの?」

「まぁ、誰のせいかって問いつめれば、お前のせいになるわなぁ」

 イリアの治療の手が止まる。

「渚さん。とりあえず傷口は塞がりましたから、もう動いても大丈夫です。ただ、まだ痛みはあるかもしれませんが……」

「よし。じゃあ、あとは移動しながらで話そう。――ラビ。ここからガルラに戻るにはどう行けばいい?」

「ちょ、兄ちゃん。ガルラに戻る気なの?」

「事情が事情だ。いまならまだガルラにリネクがいるかも知れんしな」

「……あんな騒ぎまで起こして町を出てきたっていうのに、たった一日で戻らなくちゃならなくなるのかよぉ」

「? ラビくん、騒ぎってなにかしたの?」

「言いようによっちゃぁ、誘拐になるかな?」 イリアの問いには以龍が答えた。

「言っとくけど、兄ちゃんも同じようなことをしでかしてるんだからね? な、サレント?」

「私はコメントを控えさせてもらいます」

「……渚さん、なにをしたんだろう?」


 以龍たちは、街道を南に進んでいく。

 ラビッシュの話だと、ここはガルラ列島の北側の位置にあたり、ガルラに向かうにはまず南に進んでギルテ山に突き当たり、そこから東に向かうことになるという。

「――けど、なんか引っかかるんだよなぁ」 歩きながら、ラビッシュが突然言い出した。

「なんだ、ラビ? 急にどうした?」

「あの白鎧の姉ちゃんのことだよ。最初に会ったのはガルラ。兄ちゃんが言うにはおいらの名前を呟いてたってことだけど、まぁ、場所が場所だったからね、あまり気にはしていなかったんだよ。けど、さっきは違ってた。おいらと、サレントの名前を口にしてた」

「……それだけじゃないの、ラビくん。あの人、私の事も知っているみたいだった」

「姉ちゃんのことまで!? ……どういうことなんだろう? おいらと兄ちゃんは昨日に会ったばかり。サレントにいたってはまだ丸一日経過していない。さらに、今知り合ったばかりの姉ちゃんのことまで……」

「……なぁ、ラビ。『時を歩け』ってどういうことだと思う」

「時を歩け? 兄ちゃん、なんのことを言ってるの?」

「いや、あの白い鎧の女が言っていたんだ。時を歩け、と」

「……よくわからないけど、つまりは兄ちゃん、兄ちゃんは時を歩かなかったんだ」

「! 時を、歩かなかった? 俺が、か?」

「時、ですか。やっぱり、渚さんが時人であることとなにか関係があるのでしょうか?」

「時人ねぇ……。おいらにはよくわからないや。サレント、お前はなにかわかるか?」

「! サレントちゃん、もしかしてあなたも時人なのですか!?」 サレントがラビッシュの問いに答える前に、イリアが声を上げていた。

「え、ええ。けど、私は以龍さんと違って純血の時人ではなく、この世界の人との混血時人なのですが……」

「では、『記憶の宝珠』という品に心当たりはありませんか?」

「記憶の宝珠!? 何故、時人ではないあなたが、記憶の宝珠を?」

「……ちょっと待て、サレント。その言い方だと、お前はその記憶の宝珠というものがどういうものか知っているということにならないか?」 ラビッシュのこの言葉に――

「知っているのか!?「知っているの、サレントちゃん!?」」 以龍とイリアの声が重なった。

「え、ええ。現物は見たことないのですが、たしか、選ばれし時人が所持し、その人が適正と判断した時人のみに使用する、純血時人の失われた記憶を呼び覚ます品物だって……」

「選ばれし時人って言うのは?」 イリアがさらにサレントに詰め寄っていく。

「誰がどういう基準で時人を選んでいるのかはわかりませんが、なんでも、失われた記憶を取り戻し、なお、自我を保って生きている時人だとか……」

「記憶を取り戻している時人って……、そんな伝説級の時人なんてどうやって探すのさ?」 ラビッシュの疑問はもっともである。

 本来、時人という存在は、異世界での自分の記憶を全て捨ててこの世界にやってきている存在。記憶を捨てるということは、持つに耐えない記憶だったということだ。

 サレントの言った『自我を保って生きている』という言葉からも、記憶を戻した時人の多くがどうなったのかは想像が出来るだろう。

「……あの人なら、あるいは」 サレントのいう『あの人』とは、当然、リネクのことなんだろう。

「……結局はガルラに戻らない事には話が進まないってことか」

「兄ちゃん。本当に戻らなきゃダメなの?」

「あきらめろ。これでサレントだけじゃなく、イリアにも用が出来てしまったわけなんだからな」

「せっかくなんですから、楽しみながらゆっくりとガルラに向かいましょうよ。……ラビくんがどうしても戻るのが嫌だというなら、私はラビくんの気持ちの整理がつくのを待ちますし」

「いやいや。おいらの気持ちなんて、姉ちゃんの用事を考えたら――、ちょっと待って。そもそもなんで姉ちゃんはその記憶の宝珠ってのを探しているわけ?」

「……イリアには、昔の記憶がないんだとよ」

「それで、記憶の手がかりを探している時に、記憶の宝珠というものが存在するってことを知ったの」

「……そんな理由があるんなら、もう、おいらの意見なんて蹴飛ばしちゃっていいよ」

「まぁ、楽しみながらガルラに向かえばいいさ。だろ、ラビ?」

「そうだね。せっかくガルラを出てきたんだ。せめて、戻るまではせいいっぱい楽しまなきゃね」


 こうして、以龍たちは楽しみながらガルラに向かう事を決意した。

 ……思えば、この時がこの世界に来て一番の幸せな時間だったのかもしれない。


 夕食時――みんなで炎を囲んでの食事。

「――でさぁ、……うぐ、もぐ。さっきの続きなんだけど――」

「ラビっ。食いながら話すんじゃねぇ」

「――ごく。いいじゃん、そんな細かいことはさぁ。せっかく堅苦しいとこから解放されたっていうのにさぁ。ん? あーっ。おいらが炙っていた肉がない!?」

 すぐさまに全員の顔を確認するラビッシュ。と、セティの口だけが堅く閉ざされているのを発見する。

「セ・テ・ィ」

「キュ、キュウゥ。――ごっくん」 なにかが喉を通過する音。そして、次の瞬間、その場から逃げ出した。

「てんめぇっ、こら、待ちやがれっ」 必死になってラビッシュはセティを追いかける。

「ラビッシュ、やかましい」

「まあまあ、サレントちゃん。いいじゃない、楽しくて」


 夜――野営にて。

「そういやさぁ、兄ちゃんと姉ちゃんって昨日は一緒になって寝たんだよねぇ?」

「い、一緒って、べ、別にそういうことじゃなくて、その……、もう、ラビくんっ」

「いいじゃんいいじゃん、そんなに恥ずかしがらなくても。――やっぱ、ここは恋人同士仲良く抱き合って眠った――」 ラビッシュが言葉を終える前に、いい音が暗闇の中に響きわたった。

「話をすぐにそっちへと持っていくな」

「に、兄ちゃん。なにも殴らんでも……」

「自業自得よ、ラビッシュ」

「キュイン」 サレントの言葉にセティもうなずいた。


 そして、夜が明け、朝を迎える。

 以龍たちはまだ日も昇りきらないうちに野営を片づけ、ガルラに向かいはじめる。

 しばらくして、朝もやに包まれたギルテ山の影が遠くに見えてきた。

 その山の手前には、小さな村が見えている。

 だが、地図を確認しても、その村の存在は確認できなかった。

 不思議には思いつつも、この村を抜けないと、ギルテ山には入れない。

 以龍たちは少し警戒しながら、その村に足を踏み入れるのだった。


「しっかし、絵に描いたようなド田舎だなぁ。これじゃあ、地図に載らなくてもおかしくないよ、兄ちゃん」

 目の前に広がっている光景は、小さな川が流れ、その川に沿って田畑広がる光景。そして、点々と見えるのは、わらぶき屋根の家。ラビッシュの言葉、そのままの光景である。

「ラビくん、そんな言い方は失礼ですよ? 静かでいい村じゃないですか」

「姉ちゃん……、それって間接的にド田舎って言ってるのと同じだよ」

 ラビッシュ、イリアに続き、以龍が村に足を踏み入れた時だった。

 村の境界と思われる場所に一歩踏み込んだ瞬間、以龍の身体中に鳥肌が立ってきた。

「……以龍さん。誰かが時人能力を発動させています」

「サレント、君もこの妙な感覚を感じているのか?」

 先を進んでいたラビッシュとイリアが足を止めてこちらに振り返る。

「なにしてんの、兄ちゃん。急に立ち止まったりしてさぁ」

「渚さん、行きますよ?」

 ラビッシュとイリアは何事もないような顔をしている。

「……イリアとラビは何も感じていないのか?」

「恐らく、時人の気配を感じられるのは、同じ時人だけなんでしょう。――以龍さん、どうやらここはただ地図に載っていないってだけの村ではないようです。とにかく、注意をしながら進みましょう」


 遠くに見える山を目指して、以龍たちはあぜ道を進んでいく。

「……おかしいな?」

「ん? 何が、兄ちゃん?」

「村に入ってから、まだ誰にも会っていない」

「それはこんな村じゃあ仕方がないんじゃない? あ、兄ちゃん、ほら、前から人が来たよ」

 農作業の帰りだろうか? 泥のついたくわを引きずった少年が前方から歩いてくる。

「ほら、ラビくん。通行の邪魔になるから、少し寄りましょう。道を空けないと……」

「! そうだ。ついでにギルテ山に抜ける道を聞いておこうよ。すいません、ちょっと道を――」 道を聞こうと、ラビッシュが少年に近づいていった時だった。

 少年が引きずっていた鍬が、ラビッシュの目の前の空を斬る。

 少年の振り上げた鍬は、ラビッシュには命中しなかったものの、その鍬についていた泥が、ラビッシュとその肩にいたセティにかかる。

「てめぇっ! いきなりなにしやがるっ」 ラビッシュと少年の目が合う。

 少年はまるで死人のような、精気のない目をしていた。

「な、なんなんだよ、こいつ――」

「ラビッシュ、離れてっ。その人、人間じゃないっ」

 少年が振り上げた鍬を勢いよく振りおろす。

 ラビッシュは後方へと飛び退き、その攻撃を回避する。

 そして、肩にいたセティを真上に放り投げ、上方へとセティを逃す。

 少年の鍬は地面に深くささり、その鍬を引き抜くのに手こずっている。

「ラビッシュ、いまのうちにここを走り抜けましょう」

 少年が身動きの取れないうちに、先へと進もうとするが――

 気がつくと、少年の他に四、五人ほどの村人たちが集まってきていた。――それぞれ農具を手に、少年と同じ精気のない目をして。

「! 渚さん……、このままじゃ、囲まれてしまいます」

 そう言っている合間に、少年が鍬を引き抜いた。

 前方に数人の村人。そして、後方には、鍬の少年。……囲まれてしまった。

 サレントの決断は早かった。囲まれた瞬間、身体を反転させ、一番手薄な鍬の少年のいる方向へ走り出す。

 サレントが剣を振り上げると、少年の腕とともに鍬が宙に舞った。

「こっちです。今は村を抜けるのが先決です」 声を上げると同時にサレントはすでに走り出していた。

「イリアっ」 以龍はイリアの手を取り、サレントの走っていった方向へと駆けだした。

「ま、待ってよ兄ちゃん」 ラビッシュも慌ててその後を追う。

 腕を斬り飛ばされた少年が、ゆっくりと身体を反転させ、以龍たちのいる方向へと歩いてくる。

 セティが空から火球を放ち、少年の足止めをする。

 だが、集まってきた村人の内の一人が、セティに向けてすきを投げつける。

「キュインッ!?」 セティは火球を放つのをやめ、さらに上方へと飛び上がって鋤を回避する。

「セティっ! ――兄ちゃん。なんなんだよ、これ?」

「俺が知るかよ。……ただ、この村に入った時から、妙な気配が漂っていやがったんだ」

「以龍さん。この人たちは多分アンデットです。すでに死んでいて、誰かがその死体を操っているんです。……操っているのは、この村に入った時から感じているこの気配の持ち主……多分、時人です」

「渚さんっ、前!」

 イリアが声を上げるのと同時に、四人はその場で足を止めた。

 前方からやってくるのは、三十人を越えるアンデットの村人。

「どーするんだよ、兄ちゃん。こんなにいちゃあ、突破なんて出来ないよ?」

 そして、後方からはあの鍬を持っていた少年を含む大勢の村人。

 総勢五十人以上の村人たちに、以龍たちは完全に囲まれていた。

「ちぃ」 以龍が竜封剣を抜き、剣に光の刃を纏わせる。

「渚さん?」

「……見てみろ、イリア。最初にサレントが斬ったあの少年。腕がないままだ。つまり、こいつらは斬ってもまだ動けるってだけで、森の牙のように再生はしないんだ」

「以龍さん、この数に直接攻撃は危険です。もし一斉に攻撃を仕掛けられたら――ううん、のしかかってこられるだけでも終わりなんですよ?」

「だからって、なにもせずにいられるかよっ」 以龍が後方から来た二十人前後の村人の群の中に突っ込んでいく。

「渚さんっ」

「セティっ。おいらたちはあっちを食い止めるぞ」 ラビッシュが炎の魔法のカードを生成し、それを前方の群に打ち放つ。

 そしてセティも空から炎を吐いてアンデットの足を止める。

 以龍は次々とアンデットの銅部を斬りさき、アンデットを一刀両断にしていく。

 あっという間に、後方の村人二十人を斬り捨てた以龍だったが、アンデットたちはこれで終わらなかった。

 以龍が光の刃の能力を解除した直後、以龍に斬られ、上半身のみとなったアンデット村人の内の一人が以龍の足を掴んだ。

 そして、それを合図にしてか、上半身だけのアンデットたちが一斉に以龍に対して飛びかかってきた。

「兄ちゃんっ」 ラビッシュが攻撃の手を止め、以龍の方に振り返る。

「ラビッシュ、ダメ。いま攻撃の手を止めたら――」

 ラビッシュの攻撃の手が止まり、炎の勢いが半減する。

 弱まった炎を乗り越え、アンデットたちが前進してくる。

「くっ――」 ラビッシュは慌てて炎の魔法を放ち直す。

 炎が再び壁となり、アンデットの進行を抑える。――だが、これでは以龍を助けにいけない。

 以龍は飛びかかるアンデットを光の刃の消えた竜封剣で弾き返し続けるものの、多勢に無勢。その上、弾き返したすぐ先にアンデットたちは再度飛びかかってくるのだ。

 そして、その内の一体を弾き返すのに失敗する。アンデットは以龍の右腕にしがみつき、以龍は剣を振るうことが出来なくなってしまった。――そこにアンデットたちが一斉に飛びかかってくる。

 それは、考えがあっての魔法というわけではなかった。

 ただ、以龍からアンデットを遠ざけたい、その思いで無意識に打ち放った魔法だった。

 イリアが放った魔法は、イリアを中心に凄まじい突風が円上に広がっていく、風の魔法だった。

 突風は以龍に集まったアンデットたちを吹き飛ばし、さらにラビッシュたちが抑えているアンデットの群を押し退けていったのだが、その勢いは炎の壁をも吹き飛ばしてしまった。

「――渚さんっ」 イリアが以龍の元に駆け寄っていく。

「イリアさん。気をつけてください、まだ終わったわけではありません」

 サレントの言うとおりである。イリアの魔法は、アンデットを吹き飛ばしただけで、なんのダメージも与えてはいない。

 徐々にアンデットたちがこちらに近づき直してくる。

 ラビッシュがあることに気づく。ラビッシュが炎の壁で抑えていた方にいた一部のアンデットが動かなくなっているのだ。

 それは、突風でなぎ払われた炎の壁の炎をを受けて、焦げて倒れたアンデットだった。

「サレント。姉ちゃんと兄ちゃんがいる場所に集まるんだ」

「なに言ってるの、ラビッシュ? こんな状況で一箇所に固まったら――」

「いいからっ。……こいつらを一掃する方法を思いついたんだよ」

 以龍、イリア、サレント、ラビッシュが一箇所に集まった。

「セティっ、おまえも降りてくるんだ」

「キュイ?」

「早くしろっ! 巻き添えを食いたいのか?」

 ラビッシュの迫力に押され、セティは攻撃をやめて以龍のいる場所に降下してくる。

 アンデットたちはゆっくりではあるものの、一箇所に集まった以龍たちを取り囲みつつ、徐々にその場所に向かって距離を縮めてくる。

「姉ちゃん。風の魔法を使えるなら、当然、竜巻は起こせるよね?」

「あ、はい。――でも、私の風の魔法は切り裂くタイプの風ではなく、さっきのみたいに相手を吹き飛ばすタイプのものなんです。だから――」

「吹き飛ばす方でいいんだよっ。さっきの姉ちゃんの魔法を見て策が思いついたんだから」

「わ、わかりました。――で、ラビくん。どうすればいいの?」

「限界まで奴らをひきつけるんだ。奴らは攻撃の間合いに入ったら、最大出力でおいらたちを包み込むように竜巻を作って」

「それでやつらを一掃出来るのか、ラビ?」

「竜巻だけじゃ無理だよ。吹き飛ばしても、また今みたいにすぐこっちに集まってくるだけだろうね。――けどこいつら、炎に弱いみたいなんだ。だからさっきも、強引には炎を突き進んでこなかったし、それに、さっきの風で炎の近くにいた奴は焦げて動かなくなっていた。だから、姉ちゃんが竜巻を起こして、それにおいらとセティが炎をぶつければ、爆発的に広がって一掃出来るはずなんだよ」

「そんなにうまくいくのか?」

「いかなきゃおいらたちは全滅だよ、兄ちゃん。――姉ちゃんの竜巻のタイミングにすべてがかかっているんだ」

 イリアが竜巻の魔法カードを生成する。

「いい、姉ちゃん。限界までひきつけるんだよ? それこそ、奴らが飛びかかってくる瞬間までね」

 アンデットたちは移動速度を遅め、じりじりとこちらににじりよってくる。

 最前列のアンデットたちが一瞬だけ動きを止める。

「! いまだっ、姉ちゃんっ」

 ラビッシュの合図に、イリアが竜巻の魔法を発動させた。

 その直後だった。アンデットたちが一斉に飛びかかってきたのは。


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