第六話「森の牙」
「あ、あのっ」 イリアが声を上げた。
「ん? なんだ?」
「私も同行させてもらえませんか? ……確証はないんですけど、渚さんと一緒にいた方が記憶を取り戻せるような気がするんです。もちろん、ご迷惑でなければ、ですけど」
「迷惑なんて思っちゃいねぇ。……でも、本当にいいのか?」
「はい。……よろしくお願いしますね、渚さん」
それはラビッシュたちがグランから海岸線に沿って南に向かって進んでいた時のことだった。
岩に囲まれた海岸を通りかかったとき、セティが突然に動きを止めた。
そして、吸い込まれるように岩場の海岸へと移動していく。
それに気付いたのはサレントだった。
「ちょっとラビッシュ。あの子――」
「! ――おい、セティ。どこにいくんだよ?」
慌ててセティを呼び止めるが、セティはまるで言葉が聞こえていないかのようにゆっくりと岩場の海岸に向かっていく。
そこ辿り着くと、セティは突然キョロキョロと周囲を見渡し始めた。
どうやらなんで自分がここに来たのかがわからないようだ。
「なんなんだよ、お前は? いったいここになにがあるっていうんだ?」
「キュイ?」 首をかしげながら一声。
「もしかしてこの子、なんでここに来たのか自分でもわかっていないんじゃない?」
「どういうこと、サレント?」
「……感じない? ここ、船の時のあの時人の気配がする」
「! あいつがいるのか!?」 ラビッシュが身構える。
「大丈夫、気配が残っているだけ。多分、少し前までここにいたのかもしれないけど、今はもういないわ。……この子も多分、この気配に反応したんじゃないかしら?」
「なんだよ。――ったく、人騒がせだな」
「でも、あの時人がここに流れついたのだとしたら、あなたの読み通り、以龍さんもこの近くに流れ着いた可能性が高いってことになりますね」
「いるさ。絶対」
以龍とイリアは、洞穴のあった海岸を出ると、海岸沿いに南に進むことを決めた。
理由はイリアの持つ地図で近くに森の町と呼ばれている『クルス』という町があることを確認したからだ。
しばらく進むと、森と海岸線に挟まれた街道にでる。
どうやら、クルスの町が近いらしい。
その時だった。森の中から突然に男が現れ、歩いていたイリアと激突した。
その衝撃でイリアの荷物が散乱する。
「! イリア、大丈夫か?」 以龍がイリアに駆け寄り手を差し伸べる。
が、ぶつかった男は、「すまない、急いでいるんだ」といい、その場から離れようとする。
「待てよ。散乱させた荷物をそのままに行くつもりかよ?」 以龍が男を呼び止める。
「いいんですよ、渚さん。この方、本当に急いでいらっしゃるようですし……」
「……本当にすまない。――! あんたらも早くここから移動した方がいい。森で『森の牙』が発生した。しかも、クルスに向かってこの街道を通る可能性が高い。俺は早くこのことをクルスに伝えにいかないと」
男は風のようにこの場から去っていった。
「森の、牙? ……イリア、なんのことだ?」
「私も詳しいことは……。あ、でも、この地方のことが書かれた本が荷物の中にあったと思いますよ?」
「本? ――あれか」 以龍は散乱した荷物の中からそれらしき本を見つけ、拾い上げる。
「荷物は私が自分で拾いますから、渚さんはその本で森の牙について調べてもらえますか?」
「あ、ああ」 以龍が本のペーシをめくっていく。
索引のようなものでもあれば、簡単に探せたのだが、どうやらそういうものはついていないようだ。
ペーシを流れるようにめくりつつも、本文の中にそれらしき項目がないかを検索していく。
[――なお、森の牙に関しては現在――]
「あった、これか」
ペーシを戻り、この項目を最初から読んでみる。
[フォレスティン、通称『森の牙』。体長三メートルを越す大蟷螂のテットで、主に森に発生する。直進のみで移動し、進行方向に障害物がある場合は、それをなぎ倒してでも直進する習性がある。そのため、一番の対処策は、森の牙の進行方向に立たないことである。森の牙の寿命は極端に短く、ほとんどが森から出ることなく生涯を終えることが多いため、遭遇する確率は希である。だが、ひとたび人里に森の牙が現れようものなら、甚大な被害となるであろう。なお――]
「こんな奴がここに現れるのか?」
「渚さん、なにかわかりましたか?」 荷物を片づけ終わったイリアが、以龍の読む本をのぞき込む。
「終わったのか?」
「あ、はい。あとはその本だけです」
「あ、悪りぃ」 本を閉じ、イリアに返す。
「それで、森の牙というのは?」
「ああ。目の前にあるものを全て破壊しながら突き進んでくるっていう化け物らしい。……さっきの男の話だと、そいつがこの先のクルスってところまで行きそうだってことだったな?」 以龍が表情が鋭いものに変わる。
「渚さん? なにを考えているんですか?」
「イリア。その森の牙って奴をここで待ち受ける」
「本気なんですか? だって、目の前のもの全てを破壊する化け物だって」
「そんな奴を人の大勢住む場所に行かせたらどうなる?」
「……本気、なんですね? わかりました。その森の牙というテット、ここで迎え打ちましょう」
もし以龍が先ほどの項目を最後まで読んでいたら、こんな考えはしなかっただろう。
[なお、森の牙に関しては現在、人の手によって撃退されたという記録は残っていない]
森がざわつき始める。
「……来たか」 以龍は竜封剣を抜き、まだ見ぬ化け物に対し身構える。
空気が肌を刺激するほどに痛い。まだ姿すら確認していないのに、奴の驚異を肌に感じる。
「……な、渚さん。やっぱり無理ですよ。こんなテット、勝ち目なんてありません」
「イリア。俺たちの勝ちとはなんだ? 奴を倒すことか? 違うだろ? どんな手段を使っても奴の進路を変えるぞ」
森の木々をなぎ倒しながら、三メートルの大蟷螂が姿を現す。
森の牙――フォレスティンが姿を見せた直後、以龍はためらうことなくフォレスティンに斬りかかった。
響いた音は、とても生物に斬りかかった時に鳴るような音ではなかった。
竜封剣が激しい金属音を響かせる。が、剣の刃はフォレスティンの外皮を進まない。
「なんだ、こいつの皮膚は?」
「渚さんっ、危ない」
イリアの声に反応した時にはすでに遅かった。
フォレスティンの右鎌が以龍に襲いかかる。
フォレスティンの攻撃を受け、以龍は弾きとばされる。地面を滑りながらも、以龍は体勢を立て直す。
命中したのが鎌の腹の部分だったため、以龍は弾きとばされただけですんだが、これが刃だったら以龍の首が飛んでいたのかもしれない。
イリアが魔法のカードを三枚生成し、それをフォレスティンに向けて投げ放った。
カードは雷の矢と姿を変えてフォレスティンに襲いかかる。
命中し、矢が電撃を散らす。が、本来ならその電撃は対象の身体を巡っていくはずなのだが、電撃は命中した場所を飛び散っただけだった。――ほとんど、効果がないようだ。
「嘘? まったく効いてない」
フォレスティンの後方から、以龍が再度斬りかかる。
先ほどの一撃で受けたダメージなのだろう、以龍の額からは血が垂れている。
血が視界を遮るが、以龍はお構いなしに突っ込んでいく。
そして、斬りかかる瞬間、以龍の身体が蒼白き光に包まれていく。
竜封剣が光の刃に包まれる。九龍の戦いの時に目覚めた、以龍の時人能力の発動だ。
以龍の跳躍。
フォレスティンの背後から以龍が光の刃に包まれた竜封剣を振りおろす。
左鎌を根本から腕ごと切り落とす。
先ほどはまったく歯が立たなかったフォレスティンの外皮を、光の刃は簡単に貫いたのだ。
腕の部分を切り落とされたにもかかわらず、フォレスティンは振り返ることなく、ただひたすらに前進を続ける。
「こいつ、お構いなしかよ」
次の瞬間、切断したフォレスティンの腕の根本から泡が発生し始める。
そして、その中から現れたのは、新しい腕と鎌だった。
「! そんなぁ。腕がまた生えてきた」
「くっ。再生能力までもっているのかよ」
「……渚さん、やっぱり無理ですよ」
「まだだっ」
通りすぎようとしているフォレスティンに向かって駆け寄っていく。
再度跳躍。今度の狙いは――首。
横一閃。光の刃がフォレスティンの首を斬り裂く。
が、首は落ちない。今度は斬った瞬間に再生の泡が発生したのだ。言ってみれば、切り口が泡に変わったようなものだ。
これでは、どんな神経を切断し、どんな神経が残っているのかもわからない。
以龍はその場に膝と手をついてうなだれほかなかった。
しばらくして、フォレスティンの歩いていった方向から、人々の悲鳴が聞こえてくる。
やがてその声は聞こえなくなる。――フォレスティンが通りすぎていったのだろう。
「……渚さん。私たちもあの町にいきましょう」
「ああ」
以龍とイリアがクルスの町へと歩きだした。
クルスの町では、フォレスティンに壊されたと見える建物の修復作業が始まっていた。
「私たちも何か手伝いましょう」
「そうだな」
二人は瓦礫の片づけを手伝うことにした。
瓦礫の撤去がある程度済んだ頃だった。
町の門番をしていた男が急に大声を上げた。
「も、森の牙が引き返してくるっ!」
それはフォレスティンがクルスの町を通り過ぎた後の出来事だった。
歩みを進めるフォレスティンの前方から男が一人歩いてくる。
男がフォレスティンをすれ違う瞬間、男の身体が蒼白き光に包まれる。そして、男は一人呟いた。
「――あんさんでええわ。ちょうどあの町にコンテニューのステージが用意されとるようやしな」
フォレスティンが通り過ぎていった町の門に以龍は駆け寄った。
門の先に見えたのは、引き返してくるフォレスティンと――九龍の姿だ。
「! 九龍!?」
以龍に続いてイリアも門までやってくる。
「イリア。森の牙を迎え討つぞ! ……今度は、退けない」
以龍とイリアが九龍の前に立ちはだかる。
九龍の指示でフォレスティンは一旦足を止めた。
「やっぱ、おったな? これで船での借りが返せるっちゅうもんや」
「九龍、そいつをつれてここから消えろっ」
「そいつは出来へん相談やなぁ?」
その九龍の答えを聞いた瞬間に、以龍の身体が蒼白き光に包まれる。
「……イリア。今の俺たちでは森の牙にはかなわない。だから、あれを操っている九龍を斬る。――援護を、頼む」
以龍が踏み出した。
(首と違って、腕の再生には少しの時間がかかる。だから、まずは――)
以龍がフォレスティンとすれ違う。それだけで、一瞬のうちにフォレスティンの両腕が地に落ちる。
「イリアっ」 声を上げるのと同時に、フォレスティンの後方にいる九龍に対して剣を振りあげた。
このタイミングでイリアの援護があれば、終わっていたのかもしれない。
だが、イリアは魔法のカードを構えたまま固まっている。
「イリア? ――くっ」 こうなると、援護なしで九龍に斬りかかるほかなかった。
だが、単に斬りかかるだけでは、簡単に回避されてしまう。
しかも、九龍は今の以龍の能力を一度受けているため、対策は考えていた。
以龍の剣を握る手を蹴り上げ、竜封剣を弾きとばす。
無防備となったところに、九龍の回し蹴りが以龍の腹部を直撃する。
以龍が後方に弾き飛ばされる。それと同時に、背後から殺気を感じ取る。
「! 森の牙。もう再生しやがったのかっ」
フォレスティンが両鎌を振りおろす。
以龍は体勢を立て直すことなく、そのまま横に転がって攻撃を回避する。
フォレスティンの鎌は、地面に深く刺さり、少しの間だがフォレスティンの行動が制限される。
九龍が弾き飛ばした竜封剣を拾い上げた。
「ええ剣やな。けど、わいには合わせんわ」
そういうと、竜封剣を以龍の足下に投げ返す。
「何の真似だ?」
「あんさんの能力の前に、武器を奪ったところで無意味やろ? それにわいには――」
そういいながら、以龍が斬り捨てたフォレスティンの鎌を拾い上げる。
「鎌の方が性に合うようやしな」
九龍が武器を手にするのと同時に、フォレスティンの鎌が地面から抜ける。
「デカブツに目もくれず、わいを狙う作戦は悪うなかったわ。けど、連れが悪かったなぁ。まだ、船でのボンらの方が歯ごたえあったでぇ?」
九龍が鎌を横になぎ払う。以龍は後方に飛びのいて攻撃を回避するが、そこにはフォレスティンがいる。
フォレスティンの振りおろした鎌が、以龍の肩に刺さる。
「ぐあぁぁぁぁぁ」 以龍の悲痛の叫びが空に響く。
「渚さんっ」
イリアが以龍に駆け寄ろうとするが、九龍が立ちはだかる。
「手ぇ出す度胸のない奴は、黙って見ときいや」
そういうと九龍は、以龍に向かって歩いていく。
「そろそろとどめといこうか?」
海沿いの道を歩くラビッシュたちの耳に、以龍の悲鳴が耳に入ってきた。
「なに? 雄叫び? ……違う、これは激痛に上げる悲鳴?」 サレントが、耳に入ってきた声が悲鳴だということに気づく。
「! 兄ちゃんっ」 ラビッシュが急に走り出した。
その勢いで、ラビッシュの肩にいたセティが転がり落ちる。
サレントが落ちたセティを空中で受け止める。
「ちょ、ちょっとラビッシュ?」
「キュウ、キュウ」 セティは追いかけろと言っているようだ。
「わかってる。追いかけましょう」
フォレスティンの鎌が刺さったままの以龍は身動きが取れないでいる。
イリアは手を震わせながら魔法をかまえるが、以龍を巻き込むことをおそれ、放てないでいる。
九龍は鎌を振りあげた。
その直後、突然以龍がその場から姿を消した。
以龍はイリアのすぐそばに姿を現す。――ガルラで会った、白き鎧の女と共に。
「あなたは、いったい……」
「以龍さんを頼みます、イリアさん」
「! なぜ私の名を?」
「――力を、貸しましょう」 そういうと女の身体は蒼白き光に包まれて、その場から姿を消した。
現れたのは、フォレスティンの背後。
女がフォレスティンに手をかざすと、フォレスティンが姿を消した。
「! なんや、それは?」
「森の牙は森に帰しました。あとはあなただけです」
「……かなわんなぁ。あと一歩でクリアっちゅうところで、こうも難易度の上がるイベントが発生するっちゅうんかいな」
女は剣を抜き、容赦なく九龍に剣を振りおろす。
九龍は鎌でその剣を受け止めるものの、剣を受け止めた瞬間には、目の前に女の姿はなかった。
瞬間移動で女は九龍の背後に立っている。
そしてそのまま、九龍の首を斬り落とした。
白い鎧の女がこの場から立ち去ろうとしていた。
「――待てよ」 以龍がフォレスティンに貫かれた肩を押さえながら立ち上がる。
「! 渚さん、まだ動いてはダメですっ」
女は足を止め、無言で以龍を見つめている。
「なぜ、俺を助けた? お前は、俺が憎いんじゃ、ないのか?」
女が剣を抜く。そして、その刃の先端を以龍に向けた。
その時だった。女に向けて火球の雨が降り注いだ。
女は瞬間移動を発動させ、火球の雨を回避する。
険しい表情でラビッシュが姿を現す。その後ろには、セティを抱えたサレントの姿もある。
「ラビッシュ……、それに――サレント」 女がラビッシュとサレントの名を口にした。
「お前が兄ちゃんをやったのか!?」 魔法のカードを構えながら女に問う。
「……そう、だとしたら?」
ラビッシュの構えたカードが、巨大な火球に変化する。そして、女に狙いを定める。
「やめてっ」 イリアがラビッシュに対し制止の声を上げる。
「! ――?」 ラビッシュが作り出した火球を消滅させる。
「その人は敵じゃないの」
「その姉ちゃんは、兄ちゃんの――敵だ」
「今は、敵では、ないらしい」 イリアの治療により出血はなくなったものの、まだ激痛の走る肩を押さえながら、以龍がラビッシュに向かって声を上げる。
「渚さん、あまり動かないで。まだ傷が治ったわけではないんです」 イリアは治療魔法のカードを以龍の肩に当て、肩の治療を続けている。
白き鎧の女は、ゆっくりとサレントのいる方向へと歩き始める。
サレントとのすれ違いざま、女がなにかサレントに呟いたようだ。以龍のいる場所からでは、話の内容は聞き取れない。
そして、女はこの場から去っていった。
サレントが以龍、イリア、ラビッシュのいる場所に歩いてくる。
「あの姉ちゃん、お前になにを呟いたんだ?」
「わからない。ただ、『負けないで』って……」
サレントが抱えていたセティが飛び上がり、セティはいつもの定位置――ラビッシュの肩へ。
「ねぇ、ラビッシュ。あの人は本当に敵、なの? 私にはあの人が悪い人にはとても思えない。あんな優しい表情をした人、初めて見た」
「それはお前がガルラでの事を知らないからそう言えるんだ。あの姉ちゃん、ガルラで兄ちゃんに剣を向けているんだ」
「なぁ、ラビ? どうしてその子がお前と一緒にいるんだ?」
イリアの治療魔法を受けながら、以龍が話に割って入ってきた。
「! そうだった。サレント、お前、兄ちゃんになにか話があるんじゃなかったのか?」
「サレント? その子、サレントって言うのか?」 船でのゴタゴタのせいで、以龍はまだサレントの名を知らなかった。
「そういえば自己紹介がまだでしたね? 私はサレント・フィナルと言います」
「フィナル? ……どこかで聞いた名だな?」
「渚さん。ここは腰を据えてお話をした方が良さそうですね? まだ、怪我の治療には時間がかかりそうですし……」 イリアは治療の手を止めない。
「ちょ、姉ちゃん? そんなに魔法を放ち続けて平気なの?」 ラビッシュが驚くのも無理はない。
魔法を放ち続けるという行為は、いわば息をひたすら吐き続けるようなもの。そして、イリアはまだ一瞬たりとも治療の手を止めていない。
「? 普通は平気ではないのですか?」 当のイリアは平然な顔をしている。
「なんなの、この姉ちゃん? とんでもない魔力許容量の持ち主だよ」
「とりあえず、互いに名乗らないか? まぁ、初対面に人間に対してごく自然に打ち解けているお前もすごいが……」
「じゃあ、おいらから。おいらはラビッシュ。ま、ラビって呼んでくれればいいよ? で、こいつはセティ」 そういって、肩の上のセティを指さす。
「キュイッ」 よろしくとでも言っているのだろうか?
「で、姉ちゃんは?」 ラビッシュがイリアに振る。
「あ、はい。私はイリアと申します」
「……なんか堅っくるしいなぁ。姉ちゃん、おいらより年上なんだし、おいらに敬語を使うのはやめなよ?」
「あ、すみません、つい――」
「ほら、また」
「あ、えーと……。サレントちゃんでしたっけ? 渚さんにお話があるということでしたが――」
イリアは話題を変えるために、話をサレントに振った。