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幻想冒険談  作者: 以龍 渚
本編
4/32

第四話「九龍(クーロン)’s ゲーム」

 人通りまばらだった街道に、次第に通行人が増えてくる。おそらく港が近いのだろう。

 以龍とラビッシュが進む街道の先が、T字路となって二手に分かれている。

 ほとんどの通行人は、右手の道から左手の道に向かって歩いていく。

 以龍もその流れに従って左の道に向かっていくが――

「ちょ、兄ちゃん。どこに行こうとしてるんだよ?」

「どこって……、こっちじゃないのか、港は?」

「そっちはガルラに戻る道だよ。港は逆」

 以龍たちは南門から大回りしてここまで来ている。

 当然ながら、ガルラを迂回する理由でもないかぎり、以龍たちの歩いてきた街道を進もうという人間はいない。

「そうか。つまりは、東門から出ていたらこの道を通っていたってことか」

「そういうこと。……兄ちゃん、ちょっと急いだ方がいいかもね?」

「? どうしてだ?」

「町に向かう人が多いってことは、今船がきたばかりなんだよ。ちょっと急がないと、折り返しに乗り遅れちゃうよ」


 街道を進むと、風に乗って潮の香りが鼻をついた。

 そして、道が開けた時に目に入ってきたのは、大きな旅客船と、空をうつした広大な海原だった。

「うわぁ……」 その光景にラビッシュが思わず声を漏らした。

 そしてラビッシュがはしゃぎながら先を歩いていく。

「お、おいラビ――、ったく。おい、セティを落とすんじゃないぞ」

 以龍もゆっくりとラビッシュを追って歩く。

 ――ラビッシュが、前から歩いてくる自分と同じくらいの歳の少女とすれ違う。

 どこにでもある、ありふれた光景。

 だが、それは以龍とその少女がすれ違おうとした時に起こった。

 突然、港中に響きわたるほどの激しい金属の激突音が鳴り響いた。

 突然鳴り響いた音に、ラビッシュが振り返ると、少女と以龍が剣を抜き、少女の剣と以龍の竜封剣が激しくぶつかりあっていたのだ。

 少女が突然剣を抜いた理由はわからない。だが、以龍は背後からの殺気に思わず剣を抜いていた。

(なんだ、この子は? この太刀筋、本気で斬りにきてやがる)

 以龍は竜封剣を傾け、少女の剣を下方に受け流す。

 そして、少女が剣を構え直す前に竜封剣を少女の喉元に突きつける。

「剣を捨てろ」 これで勝負は決した――と思っていた。

 以龍の投降勧告に対し、少女は剣を捨てようとしない。

「何をしている。早く剣を捨てろ」 竜封剣を少女の皮膚に密着させる。

 少女が小声で何かを呟く。なにを言っているかはよく聞き取れない。

 唯一聞き取れたのは――

「何故、あなたが竜封剣を」 その一言だけだった。

 以龍が言葉の意味を確認する前に、少女の身体が蒼白い光に包まれる。

「!」 この世界にきてもう何度も経験した、時人能力の発動の合図。

 以龍は竜封剣を少女から一度離し、躊躇なく少女を斬りかかる。

 竜封剣が空を斬る。――以龍の目の前に少女の姿はない。

 剣が空を斬った直後、以龍は竜封剣を反転させて剣の峰を振り回す。

 そんな気がしていたのだ。――少女の能力がまた瞬間移動能力だという予感が。

 そして、以龍がとっさにとった瞬間移動能力対策の行動は効果的だった。

 少女が姿を現した直後、竜封剣の峰が少女に直撃する。

 少女が地面に叩きつけられるの同時に、少女を纏う光は消えて、少女はそのまま動かなくなった。

「! しまった」 峰を構えたのは、手加減のきかないこの方法を試すうえでの、致命傷を避けるための唯一の手段だったのだが、それでも少女に深手をあたえることとなってしまった。

 以龍は倒れた少女を抱きかかえる。

「ラビ。この子の治療はできるか?」

 ラビッシュが以龍と少女の元に近づいてくる。

「……兄ちゃん、ほっとこうよ。悪いのはそいつなんだから、返り討ちにあったって文句は言えないよ」

「だからと言って放っておけるか?」

「そんなのに構っていたら、船が行っちゃうよ? だから――」

「キュウゥゥン」 セティが悲しい瞳でラビッシュを見つめる。

「お前までほっとけないっていうのかよ? ……わかった、治療するよ。でも、それで船を乗り遅れるのはゴメンだからね? 治療は船の合図が鳴るまでだよ? 不完全な治療になっても、おいら知らないから」

「船に乗り遅れなければ、きちんと治療するのか?」

「そりゃ、こっちの都合に差し支えがなけりゃ、きちんと治療できるけどさぁ……。今からじゃ、そんな時間――」

 以龍が少女を抱きかかえたまま立ち上がる。

「ちょ、兄ちゃん?」

「治療は船でしてもらう。それなら船には乗り遅れんだろ?」

「……強引だなぁ。おいら、どうなっても知らないからね」


 ラーンの部屋の扉が叩かれる。

 中からの返事を待たずに、エリザが部屋の中へと入ってきた。

「ラーン様。港の者の報告では、先ほど出航した船にラビッシュ様と以龍様が乗り込んだそうです」

「そうですか」 ラーンはただ一言そう返しただけだった。

「そうですかって、どうして引き留めなかったのですか!? 港の者に言えば、乗船を拒否させることだって出来たっていうのに」

「……今は渚さんがガルラから離れてくれることが正直ありがたいのですよ」

「――そして、王子様が離れるのも、な」 話に割って入ってきたのは、ラーンのベッドで勝手にくつろいでいたリネクだった。

「どういうこと、ですか?」 エリザはまだ事情を知らないのだ。

「グローニの封印が解けていたそうです」

「! グローニって、ラーン様が昔に封じた死霊使い(ネクロマンサー)の時人――」

「ラーンが言うには、いずれここに報復に来るんだとよ」

「アレを渚さんには会わせたくないのです。――昔、渚さんの言っていた人物にあれは似ています。もし、アレと渚さんが会わなければ、この世界を覆う呪いがなかったことになるかもしれません」

「それに――」 リネクは一瞬言葉をためらったが、そのまま続けた。

「――あの時の以龍の言葉通りなら、王子様は奴に殺されることとなる」

「ラビッシュ様が殺される!? どうしてですかっ!?」

「……昔の私に似ているからかも知れません。――とにかく、今は来るアレの対策の必要があります。ラビッシュのことは渚さんに任せましょう」


 意識を取り戻した少女の視界に入ってきたのは、揺らめく橙色だいだいいろの光に照らされた、木の板で出来た部屋の壁だった。

「ここは……」 少女が辺りを見渡す前に、すぐそばから声がかかった。

「やっと起きたか」 ラビッシュは険しい表情で少女を睨みつけている。

 部屋を見渡すと、部屋の隅に置かれたソファーで以龍が仮眠をとっている。

 気になったのは、その傍らにいたドラゴンの子供――セティだ。

「……あなたたち、なんでドラゴンなんか連れ歩いているのよ?」

「それはおいらたちの勝手だろ?」

「勝手って……、この世界でドラゴンを連れ歩くことがどういうことか知ってて言ってるの?」

「……知ってるよ、おいらは」

「あなたは、って。じゃあ、そこの人は?」

「知らないだろうね、多分。――今度はおいらから質問がある。上までついてきてもらうぞ」

「上? ……そういえば、ここはどこなの?」

「ここはアルテシア行きの船の個室だよ」

「アルテシア!? ――私は今さっきガルラに着いたのよ? それをなんでっ」

「悪いのはそっちだろ? おいらは瀕死のお前を放っておこうとしたけど、兄ちゃんはお前を助けるって言い出したんだよ」

 少女は以龍に視線を向ける。

「おっと。兄ちゃんを起こすなよ。話はおいらが聞く。――セティ、兄ちゃんを頼むぞ」

「キュイッ」 この返事は了解とでも言っているのだろう。

「行くぞ。ついてこい」 ラビッシュが部屋を出る。

 少女は黙ってラビッシュに従った。


 ラビッシュは少女を連れて甲板へと上がる。

 人のいない船首付近の欄干にもたれかかり、話を切り出す。

「おいらはラビッシュ。で、部屋で寝ていた兄ちゃんは以龍 渚って名前だ。――お前は?」

「……サレント・フィナル」

「そっか。じゃあ、サレントと呼ばせてもらおう。――で、サレント。なぜ兄ちゃんを狙った?」

「……あの人が持っていた剣。あれはどうやって手に入れたのですか?」

「兄ちゃんの、剣?」

「あれがあの人の剣なものですかっ! あの剣は竜封剣。かつて、暗黒竜を封印したという時人が所持しているはずの剣。それを何故あの人が?」

「……そんな剣を何故兄ちゃんが持ってるのかは、おいらも知らない。だけど、これだけは言える。兄ちゃんはやましいことなんて絶対にしていない」

「……わかりました。まずは事情も知らずに剣を抜いたことを詫び、私の治療をしてくれたことに礼をいいます」

「あ、ああ。まぁ、わかってくれたんなら、おいらもいいんだけどさぁ」

「ですが、これだけは覚えておいてください。事情を聞いて、不正に剣を入手していたことがわかったら――」

「……ありえないことだけど、そうだった場合はおいらも覚悟を決めるよ」

 話を終え、船室の方に戻ろうとした時だった。

 大量の鳥テットが、この船目指して向かって来ていた。

「なんだ、アレ?」 ラビッシュが驚くのも無理はない。鳥テットの編隊は空を黒く染めながらまっすぐこちらに向かって来ているのだから。

「! ラビッシュ、あれ――」 サレントが先頭を飛んでいるけた違いに大きな鳥テットを指さす。

 そのテットの足に、人がぶら下がっている。

 巨大鳥が船の真上を通過する瞬間、巨大鳥にぶら下がっていた人物が、足を掴むその手を離した。

 その人物が、ラビッシュとサレントの目の前に落ちてくる、

「なんや、ガキ二人かいな」 独特のなまりを持った、二十歳前後の歳の男だ。

「なんだよ、お前は?」

「ラビッシュ、構えて」 サレントはすでに剣を抜いている。

「なるほど。嬢ちゃんの方はこういう状況に慣れとうみたいやな?」

 男が腰に装着していた鎖のベルトをはずした。

 それは、ただの飾りではないようだ。鎖のそれぞれの端には、分銅と鎌が取り付けられている。――鎖鎌くさりがまだ。

「? どないしたん? 坊っちゃん(ボン)の方はまだ得物をださへんのかいな?」

 男がラビッシュに気を取られている隙をついて、サレントが一瞬で男の背後に移動した。

 蒼白き光に包まれながら、サレントは背後から男に斬りかかる。

 鈍い金属音。なにかがサレントの剣を止めたようだ。それは、男の鎖鎌の鎖だ。

「ええ判断やったな。けど、そない殺気を表に出しとうたら、奇襲の意味は――」

 男の正面から、炎で出来た矢が飛来してくる。ラビッシュの手にはいつの間にか、炎の矢の描かれたカードがあった。

 どうやら今度はラビッシュが男の隙をついたようだ。

「! ちぃ、ボンの方は魔導師かいな」

 巻き添えを食わないよう、 サレントが瞬間移動で男から離れる。

 炎が男に直撃する、そう思った次の瞬間、突然船の真上で待機していた鳥のテットの一匹が男の前に急降下してきた。

 ラビッシュの炎の矢を受け、鳥テットは甲板に焼死体となって転がった。

 男を見てみると、男もサレントと同じように蒼白き光に包まれていた。

「なんで、テットがあいつをかばうんだよ?」

「ラビッシュ。その男、時人です。能力は多分――」

「ええ、ええ。言わんでも。もう分かっとるんやろ? ――嬢ちゃんの予想どおり、わいの時人能力は、あいつらを支配する能力や」

そういって真上の空を指さす。

 そこにはまだ、無数の鳥テットと大型の鳥テットが旋回しながら空で待機していた。


 セピア色の光景が、それは現実ではないということを意味していた。

 空から見下ろすような視点ではあるものの、その光景の場所に以龍は見覚えがあった。

 以龍がこの世界に初めて現れた場所――ギルテ山だ。

 そして、見下ろすギルテ山の中腹に、この色のない世界の以龍 渚が仰向けになって空を眺めていた。

 光景が一度暗転すると、視点はこの世界での以龍の視点と重なった。

「大丈夫、ですか?」 以龍をのぞき込む少女と目があった。

「大丈夫? ……なにが?」 ただ空を見上げていただけなのに、いきなり心配されたことを以龍は不思議に思った。

「あ、えーと、その……。――すいませんっ。てっきり倒れていたものかと」

「別に気にはしていない。それより、アンタは?」

「あ。名乗りもせずに失礼でしたよね? 私はイリアと申します。……山を越えてギルテまで向かう途中だったんですが――」

「いや、別にアンタの事情は聞いていない。……なぁ、アンタに一つ聞いてもいいか?」

「あ、はい。私にわかることでしたら」

「――アンタ、俺のことについて何か知らないか?」

「はい?」

「どうも俺、記憶喪失みたいなんだわ」


 以龍に知る術などはなかった。

 この夢が、何度も繰り返してきたこの世界での目覚めの時――以龍が捨ててしまった、大切な記憶の一つということに。

 そして、彼女こそが以龍の誰よりも大切な人だということを。


 目覚めると、部屋にラビッシュとサレントの姿がないことに気づいた。

「……セティ、ラビとあの子は?」

「キュイ、キュイ」 セティは翼で一度部屋の指したあと、今度は天井を指した。

「? 部屋を出て、甲板にあがった?」

「キュウン」 うなずいた。どうやら解釈はあっていたらしい。

「そうか。じゃあ、俺も上に行くとしよう」

 立ち上がり、部屋の入り口の扉まで移動する。

 扉の取っ手に手をかけたところで、以龍の動きが止まる。

「おっと、そうだな――」

 と、急に今まで寝ていたソファーのところに戻り、その脇に置いてあった竜封剣を拾い上げる。

「こいつは持っていっておこう。……無くすわけにはいかないからな」

 竜封剣を腰に固定し、再度入り口へ。

「――セティ、お前は行かないのか?」

 セティは激しく首を振った。

「じゃあ、ついてこい。――ほら」 腕を差し出すと、セティはその腕に飛び乗った。

 セティを肩に乗せ、以龍は部屋を出た。


 階段を上り、甲板へと上がる。

 以龍の視線の先には、船の最後尾とその先に広がる大海原が見える。

「あれ? 誰もいないな? ――おーい、ラビ。どこだ?」


 遠くから以龍がラビッシュを呼ぶ声が聞こえた。

「! 兄ちゃん?」 ラビッシュが思わず以龍の存在を口にする。

「……ほう。今、おもろいことを口にしたな? そか、兄貴分がおるんかいな?」

 風に乗って、再度以龍がラビッシュを探す声が聞こえてくる。

「船尾の方やなぁ。――こないガキでもこの強さや。兄貴分はどんだけの強さ持っとるんかいなぁ」

 ラビッシュとサレントが男の進路に立ちはだかる。

「黙って行かせると思っているのか? ……お前を兄ちゃんのところには行かせない」

「あなたの目的がなんであれ、好き勝手はさせない」

「目的なんてないわ。わいはただ、ゲームを楽しみたいだけやのうになぁ」

「ゲーム?」 サレントが男に問う。

「そや、ゲームや。……さしずめボンらは中ボスといったところやな。せっかくの大ボスの登場を中ボスごときが邪魔しいなや」

「あなた、なにを言ってるの?」

「サレント。こいつを兄ちゃんに会わせちゃダメだ。こいつはここで――」

「……こないのは知っとるか? 中ボスちゅうのはな、画面の外に追い出せば戦闘を回避できるんやで? ――こないふうになっ」 男の身体が再度蒼白き光に包まれる。

 ラビッシュとサレントが同時に男へ攻撃を仕掛ける。

 だか、二人の目の前に大量の鳥テットが降下してくる。

 鳥テットの妨害により、二人は身動きが取れなくなってしまった。

「しばらくそいつらと遊んどりぃや。――ほな、ボンらの兄貴分のつらでも拝ませてもらおうか」

「待て。――サレント、あいつを追ってくれ」

「ちょっと待って。あなた、これだけの数を一人で相手にするつもり?」

「おいらのことはいい。今はあいつを追ってくれ」

「……わかったわ」 サレントが能力を発動させる。

 サレントは蒼白き光に包まれると、その場から姿を消した。

 サレントが消えた直後、桁違いに大きな鳥テットが真上からラビッシュに襲いかかってきた。

 今のラビッシュは他の鳥テットを相手にしていて身動きが取れない。

「! しまった――」 ラビッシュが掌を真上に向けるが、魔法を発動させるのにはとても間に合わない。

 巨大鳥テットがラビッシュに向かって大きく口を開ける。

 その瞬間、巨大鳥の背にサレントが姿を現す。

 サレントが巨大鳥に剣を突き刺すと、巨大鳥は暴れながら上昇を開始する。

 サレントが瞬間移動を発動する。――現れた先は、ラビッシュのすぐそば。

 ラビッシュとサレントは互いに背中を預けた。

「……なんで戻ってきたんだよ?」

「貴方にはまだ治療の貸しを返してないの。貸しを返す前に勝手に倒れないでよ」

「言いやがるよ。……サレント、まずはこいつらを全滅させる。その後、兄ちゃんのところに行って、あいつの番だ。それまで背中は任せたよ」


 甲板を歩く以龍の足元に、突然鎖付きの鎌が刺さった。

 刺さった鎌から鎖に沿って視線を移すと、そこには先ほどまでラビッシュたちと交戦していた男の姿があった。

「……何者だ、貴様」

「あんさんが、あの魔導師のボンと瞬間移動の嬢ちゃんの兄貴分かいな?」

(! ――ラビとあの子の事か?)

 以龍は肩のセティを空へ飛ばす。目の前の男は危険だと判断したからだ。

 そして、竜封剣を抜いた。

「……ええわ、あんさん。話が早うて」

「答えろ。貴様、俺の連れに何をした?」

「何もしとらへんわ。ただ、ちょーっと遊ばせてもろうただけやな。今は、あん中や」 そういって、船首方向の空を指す。

「!」 その空は、大量の鳥テットによって黒く染まっていた。

 駆け出そうとする以龍に、男は鎖分銅を投げつけてきた。

「くっ」 ――以龍は竜封剣でその分銅を弾き飛ばす。

「せっかくの大ボス、そうやすやすと逃がすわけないわ」

「邪魔をするなっ」 男が鎖鎌の分銅を構え直す前に以龍は男に斬りかかる。

 男は鎌の内側の刃で以龍の竜封剣を受け止める。

 そのまま鎖分銅を引き寄せる。背後から分銅が以龍を襲う。

 以龍は身体を回転させ、縦振りに力を込めていた剣を横振りに変える。

 戻ってくる分銅を回避し、そのまま男の胴に向けて剣を振るう。

 男は竜封剣に鎖を絡ませ、胴斬りを回避した。

 そして、互いに距離を取る。

「……さっきの嬢ちゃんとはまるで動きがちごうとるなぁ。やっぱ、あんさんは楽しめそうやわ」

「俺はお前にかまっている暇などない」

「まぁ、そういいなや。わいは『九龍クーロン』っちゅう名前や。あんさんの名前、聞かせてもらええへんか?」


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