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「おっ、来たみたいだな」


抗えぬ運命(成り行き)と自らが蒔いた種によって望まぬままに得てしまったマルダー以下、使い魔兼奴隷達と戯れついでに親交を深めていると軽装の鎧を身に付けたフィーネがこちらに向かって走ってくるのが見えた。


「――っ。ごめんなさい、カズヤ。準備に思いの外時間が掛かってしまって約束の時間に……」


ガシャガシャと金属同士が擦れ合う音を響かせながら、かなりの速さで城の方から走って来たフィーネ。


流石というべきか息1つ乱してはいなかったが、約束の時間を過ぎてしまった事を頻りに気にしていた。


「あぁ、そんなに待ってないから大丈夫。気にしないでくれ」


「ありがとう。そう言ってくれると助かるわ――って、この者達は?」


俺の言葉にフィーネはホッと胸を撫で下ろし安堵の表情を浮かべる。


しかし、俺の周りに付き従うマルダー達の存在に気が付くとキョトンとした顔で、そう問い掛けてきた。


「それが……なんかいろいろあって……コイツらは俺の使い魔兼奴隷になった」


「つ、使い魔兼奴隷ってこの1時間の間に何があったの!?」


少し目を離した隙に俺が20名もの使い魔兼奴隷を拵えてきた事に驚くフィーネ。


「……話すと長くなるからダンジョンに行くまでの間に説明するよ」


そんな彼女にどうやってマルダー達との関係や、それに関する話をしようかと悩みながら俺はダンジョンへと歩みを進めた。


「――という訳なんだ」


「そう……いろいろと大変だったみたいね。あ、ちょっと待ってカズヤ。ダンジョンの入り口はここよ」


俺の話をちょうど聞き終わったフィーネがそう言って足を止める。


「ここ?ここって……砦か何かじゃないのか?」


フィーネが足を止めたのは城から5キロ程離れ閑散としたエリアの中で一際目立つ武骨な砦の前だった。


「えぇ。貴方の言う通りここはまさに砦なのだけれど、これは万が一ダンジョンから魔物が出て来てもすぐに対処が出来るようにという魔物対策の一環なのよ。さ、説明はこれくらいにして行きましょう」


「あぁ、分かった。いや、ちょっと待ってくれ。先にマルダー達に武器と防具を配るから」


ダンジョンに入る直前になってマルダー達が丸腰だった事を思い出した俺は慌てて武器や防具を召喚する。


「ッ!?」


「「「「……」」」」


しかし俺が武器や防具を召喚した途端、フィーネはもちろんマルダー達までもが驚きに目を見張り、あんぐりと口を開けた状態で石像のように固まってしまった。


何故だ?彼女達は俺の召喚能力の事を知っている筈だから、何も無い場所から武器や防具を召喚したとしても別段驚かないはずなのに。


それにフィーネが来るまでの間に各自の得意な得物の事を聞いていたから、それに合わせて武器を召喚したし。


うーん、分からん。見当違いの色物武器を召喚した訳でもないのに何故驚く?


召喚したのは剣とか槍とか弓だぞ?


「あの……主?これは一体何のおつもりで?」


彼女達が何故驚いているのか理解出来ずに俺が首を傾げていると再起動を果たしたマルダーが戸惑い気味にそう言った。


「何のおつもりって……お前達の武器と防具だが?何か問題が?」


マルダーの言葉に俺が何気なく答えると、更に彼女達の戸惑いが増したように感じた。


「いや、あの……ですから、主?その……これは……」


「だから、何がどうしたんだお前達。さっきから様子がおかしいぞ?」


「えっと……カズヤ、少しいいかしら」


噛み合わない俺達の会話を見かねたのか口元を引き吊らせたフィーネが会話に参加してきた。


「貴方がいた国ではどうだったのかは知らないけれど……この国の一般的な感覚だと奴隷は消耗品、もしくはそれに近い扱いなの。だから例えダンジョンに潜る時に主が奴隷に装備を与えたとしても、それはあまりいい代物じゃないのよ。で、ここまでが前提ね」


出来の悪い子供に言い聞かせるよな話し方でフィーネは俺に説明を続ける。


「で、でね、カズヤ。貴方が召喚したこの武器や防具の数々。どっからどう見ても………………国宝級の武具ばかりじゃない!!いくら貴方が奴隷にも優しい人格者とは言えこれはやり過ぎよ!!というか何でこんな物を持ってるのよ!?」


ダンジョンに潜ろうとしていた他の冒険者達がフィーネの大声に驚きこちらを見る、そして俺が召喚した武器や防具を見て固まる中。


これを全部売ったら多分国が買えるわ。そう続けながらフィーネは疲れたように肩を落とした。


「ローザングル様の言う通りですよ、主。というか信用して頂けるのは有難いのですが、私達がこれを持ち逃げするなどは考えなかったのですか?」


マルダーの言葉に他の奴隷達が強く頷く。


「いや、別に持ち逃げされても困らないから」


レアアイテム扱いの武器だけど所詮はミリタリーズをクリアしたらもれなくもらえる武器だし、それに俺はこの手の武器に興味ないし。


まぁ、エクスカリバーとかゲイ・ボルグとか必中の弓とかはやり過ぎたかな?


そこにあるだけで神々しいまでの神性を放つエクスカリバーをひょいと手に取り鞘から刀身を少しだけ覗かせ、目映いばかりの光を放つ刀身を眺めつつ、俺は自重の必要性を考えた。


「あ、そうだ。じゃあこれをお前達にやるから恩返しを無しにしてくれ」


「はい、喜んで――と、私達が頷くとでも思いましたか?主」


くそう……ダメか。ま、この分なら信頼出来そうだな。


我々が金で恩義を捨てるとでも?というかのように瞳に憤りと怒りの色を浮かべたマルダー達を見て、ようやく俺は一定の信頼関係を彼女達に感じる事が出来たのだった。




「色々あったけれど……とりあえずここがダンジョンの第1階層の入り口よ。出てくる魔物は低級ばかりで魔石も小さく、ドロップアイテムも期待は出来ないけれど駆け出しの冒険者にとっては大切な稼ぎ場となっているわ」


マルダー達の装備を極々一般的なモノ(それでも1級品)に召喚し直した後、フィーネに案内されるまま俺はダンジョンの入り口の前にいた。


「ただの洞窟にしか見えないけどな」


「そう見えるでしょ?でもこの下には森や廃墟とかがある階層まであるのよ」


「へー」


何の変鉄もない洞窟の下には様々な特色を持つ階層が待ち受けていると聞かされた俺は、単調な返答の裏で心を震わせていた。


「で、どうするのカズヤ?どこまで潜るつもり?」


「とりあえず行ける所まで。あぁ、それと今回はあくまで俺の腕試しだからフィーネは手を出さないでくれ」


「分かったわ」


「主、我々は?」


「マルダー達も手出しは無し。だけど俺が倒した魔物の魔石を回収したりとかの手伝いを頼む」


「畏まりました、主」


「じゃあ、行こうか」


皆に声を掛けStG44のコッキングレバーを引いて7.92x33mm弾を薬室に装填しつつ俺はダンジョン踏破に向けた記念すべき第一歩を踏み出したのだった。


「うーん。思っていたよりも退屈だな」


錆びた刀剣の類いを振りかざし、斬りかかってくるゴブリンの集団を俺は無表情のままStG44で蜂の巣にしていく。


そして、洞窟のようなダンジョンの中で積み重なった死体が障害となって足を止めざるを得なかったゴブリンの残党を纏めて掃討するために、柄のねじ込み式安全キャップをあらかじめ外してあったM24型柄付手榴弾の弾殻に繋がる紐を引き抜き摩擦の力で導火線部に着火すると手首のスナップを効かせて、それを放り投げた。


「みんな、下がれ」


M24型柄付手榴弾が起爆するまでの僅かな間に、俺はマルダー達と共に後退しダンジョンの曲がり角に身を潜めると、その瞬間を待った。


ほどなくして起爆したM24型柄付手榴弾の炸裂音が轟き、爆風が曲がり角の向こうで吹き荒れ、ゴブリン達がミンチになった事を確信した俺は流れてきた爆煙に噎せながら曲がり角の隅から顔を覗かせる。


「また……エグいな。まぁ、すぐに消えるからいいけど」


原型を留めていないゴブリンの死骸に一瞥を送りつつ俺はマルダー達に魔石の回収を頼む傍ら、周辺警戒にあたっていた。


すると、フィーネが側にやって来た。


「ねぇ、カズヤ。あまり疲れてはいないと思うけれど、少し休憩した方がいいわよ。まだ5階層とはいえ貴方は深く潜る事を優先せずに今までの階層を入念に歩き回って魔物を狩り続けて来たことだし」


「うーん。そうだな。時間もちょうどいいし、マルダー達が魔石の回収を終えたらどこか適当な場所で昼飯にでもしようか」


「えぇ、それがいいと思うわ。長時間の戦闘は何かとミスを招きやすくなるし」


俺の身を心配して忠告してくれたフィーネの言葉に従う事にした俺は、マルダー達が集めた魔石をイベントリに放り込むと安全な場所を求めて移動を開始したのだった。

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