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続きを書いていたら色々と問題が出てきたので、思いきって書き直しました。


「あんのクソ野郎オオォォーー!!あっさり見捨てやがったアアァァーー!!」


恨み辛みを絶叫で吐き出しながら俺は空から地上に向けて絶賛落下中だった。


事の始まりは約1時間前に遡る。


高校最後の冬。就職先がなかなか決まらず焦っていた俺は同じ様に就職先が決まっていない友達と進路指導室に出向き、手頃な求人案内が無いかどうかを調べていたのだが。


その中にとてつもなく怪しげな――ふざけた求人案内を発見した。


それは『悪を挫く強き勇者を求ム!!』というもの。


明らかに他の求人案内とは違うし、何よりボロボロで色褪せた紙に掠れた文字で記載されていた馬鹿らしい内容を見て何故か無性に笑えてしまい、腹を抱えて笑っていた俺と友達だったが、ふと気が付けば石造りの見知らぬ部屋の中にいて大勢の人間に囲まれていた。


目と正気を疑う信じがたい状況に晒され固まる俺達に白髭を蓄えた、まさに魔法使いというような風貌の老人が状況を説明してくれた。


その老人曰く、我がジーニアス帝国は今の危機的状況を打開するべく異界より勇者を召喚した。


しかし、本来であれば1人だけ呼び出す予定だったのだが、何故か2人呼び出してしまった。


だが好都合だ。とにかく我々に協力して欲しいと。


まぁ、他にもごちゃごちゃと何か言っていたような気もするが、要約すると概ねそんな感じだった。


そして、そんな話を聞かされた俺と友達はお互いの顔を見合せた後、抱き合って喜んだ。


だってそうだろう。就職先が決まっていない、お先真っ暗の状況で異世界に召喚されたのだ。


異世界に召喚されたといえば大体がチートにハーレム、ほぼ薔薇色人生決定なのだから。


と……そんな風に思っていた時期が俺にもありました。


問題が発覚したのは、この世界の簡単な一般常識を教えてもらった後、勇者に――召喚されし者にすべからく備わるという特殊能力の内容を調べ始めた時のこと。


まず先に友達が水晶のような測定器具に手をかざし能力を調べてもらうと類い稀な魔力保有量と、これまた類い稀な魔法適正を持っている事が分かった。


俺はその事実を告げられ誇らしげな顔を見せた友達の肩を叩きスゲー!!と無邪気にはしゃいでいたが、それも束の間。


さぁ、次は俺の番だと意気込んで水晶に手をかざした所。


全く反応なし、まさかの事態に唖然とし何度試してみても全く反応なし。


念のために違う水晶で試してみても反応なし。


これには俺も青ざめ落ち込んだ。


当然だ。異世界召喚という奇跡が起きた数十分後に薔薇色人生を否定されたのだから。


そして、老人から何やら耳打ちをされていた友達が項垂れ落ち込んでいる俺の元にやって来て言ったんだ。


『えっと……まぁ、なんだ。言いにくいんだけど……能無しは要らないんだってさ。勇者も1人でいいって、悪いな(笑)』


はっ?何を言って……と薄ら笑いを浮かべる友達に聞き返す間もなく、足元に魔方陣が浮かび上がり俺は一瞬で見知らぬ部屋からどこかの空へと転移させられたのだ。


死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!――このままだと間違いなく、死ぬぅぅーー!!


遥か眼下に広がる一面の砂漠を見開いた目で捉えた俺はバタバタと空中でもがき続けるが状況は変わらない。


いや、落下しているから墜落死という事実が近付いて来ていた。


た、助かる方法、何か助かる方法はないのか!!っ!?


みるみるうちに近付く地表を涙が浮かぶ瞳で見つめていた俺は、パニックに陥っているせいで今の今まで気が付いていなかったある事に気が付く。


[パラシュートを開きますか?]


落下する俺の視界の中央やや下にそんな文字が浮かんでいることに。


なんだこれ!?いや、今は考えてる暇はない!!


助かるかもしれない可能性を見出だし、俺は無我夢中で叫ぶ。


「なんでもいいから開けぇぇーー!!」


その瞬間、何も背負っていなかったはずの俺の背中にパラシュートが出現しバンッと開く。


「うおっ!?ッ!!し、しゃかんだゃ……」


大空に花開いたパラシュートが空気抵抗を生み出した事で落下速度がガクンと落ち、予想外の衝撃に襲われた俺は思いっきり舌を噛んでしまった。


た、助かった……。


だが、舌を噛むというハプニングがあったものの突如出現したパラシュートのお陰で辛うじて墜落死を免れることが出来た俺は、こうして人生初のスカイダイビングを無事に終える事となったのだった。


「地上……最高」


恐怖のスカイダイビングが終わりを迎え、いざ着陸という所でどうしたらいいのか分からない俺は砂丘に無様に突っ込む事でどうにかこうにか生きて地上へ降り立つ事が出来た。


「はぁ、よっと……それにしてもこのパラシュートはどっから――っ!?」


十分に落ち着いてから立ち上がった俺は、命を救ってくれたパラシュートが何処からやって来たのだろうかと疑問に思い、まじまじと見詰めていたのだが突然パラシュートがゲームのようにポリゴン化し崩壊を始めた。


「これって……まさかミリタリーズの緊急時に出現するパラシュートか?」


ボロボロと崩壊が続き最後には光を放って完全に消滅してしまったパラシュートを見て既視感を覚えた俺は、その既視感の正体が中学、高校とずっとやりこんでいたゲーム――古今東西は勿論、架空のモノや未来のモノまで、ありとあらゆる軍需品が登場するTPS『ミリタリーズ』の作中で出てきたパラシュートだということに気が付いた。


「おぅ……」


そしてその事を認識した途端、俺の視界には幾つかのアイコンが現れた。


右上には自分の状態を示すアイコン――HPバーと999,999,999,999,99という数字の羅列、右下には空欄状態の武器のアイコン、そして左下には四角い地図のようなアイコン、という感じに。


これって完全にミリタリーズのプレイ画面と同じだよな。


ミリタリーズのキャラ視点の状態が自分の視界に広がっているという現実に確信染みたモノを感じた俺はあたかもミリタリーズをプレイしているつもりでメニュー画面を開く、開けと念じる。


するとどうだろうか、視界一杯にメニュー画面が広がったのだ。


しかも、ゲームと同じように周りの時間が止まっている。


最も俺の身体もピクリとも動かせないが、それでもこれでようやく俺は確証を得た。


俺が召喚された時に得たのは能力じゃなくて、ミリタリーズのシステムデータや俺のプレイデータそのもの?


でも、なんでだ?学校の帰りに転売しようとゲームのディスクとメモリーカードは持っていたけどさ。


……いや、それか原因。


検証のしようがない勝手な解釈だが、とりあえずはそう考えると辻褄が合うため俺はそう納得する事にした。


「よっしゃああああーー!!」


下手な能力をもらうよりも嬉しい現実に俺は歓喜の声を上げ、砂丘の上を走り回る。


「はぁ……はぁ……、そうだ、俺のステータスはどうなっているんだ?」


嬉しさのあまり、つい走り過ぎて疲れてしまった俺の脳裏に一抹の不安が過ぎる。


その不安を確かめるべく、俺はメニュー画面を開きステータスを調べた。



[ステータス]

HP

・100


ソルジャーレベル

・レベル1(二等兵)


コマンダーレベル

・レベル1(二等兵)



あれ?軍需品を購入して召喚するポイントは最大値の99兆9999億9999万9999ポイントあるのに……キャラの強さと扱える武器兵器レベルを示すソルジャーレベルが……1!?し、しかもコマンダーレベルも1!?


これじゃあレベルの高い武器は使えないしNPCを呼び出して部隊を作る事も出来ないじゃん!!


どうなってんだ!!俺のプレイデータならどちらもレベル99だったはずなのに、バグか、バグなのか!?


現代兵器で無双するぞ!!と張り切っていた俺に悲しい現実が突き付けられた瞬間だった。


「むぅ……これが限界か……」


憤慨していてもどうしようもないので一先ず俺は召喚出来る中で一番ましな武装を呼び出し装備した。



[武器ステータス]

主武装

・九九式小銃―九九式普通実包150発


副武装

・PPSh-41―7.62×25mmトカレフ弾213発

(ドラム形弾倉3)

・M1911―45ACP弾21発

(予備弾倉3)


補助武装

・銃剣

・一〇〇式擲弾器

・M24型柄付手榴弾×1

・九九式手榴弾×2



まさか、主武装の中で選べる小銃が第二次世界大戦時に使用されていたボルトアクション式のモノしかないとはな……完全に初期装備じゃん。まぁいいや、他の銃は後々使えるだろうし。


ソルジャーレベルが低い弊害で第二次世界大戦時に使用されていた特定の武器しか選べなかった事を恨みながら俺は主武装に九九式小銃を選び副武装にPPSh-41とM1911を選択した。


まず九九式小銃だが、これは長い間大日本帝国陸軍の主力小銃の座に君臨していた三八式歩兵銃の後継として開発、採用された小銃で欧米圏では有坂銃の最も代表的なものの一つとして知られている。また高品質な初期型等は『キングオブボルトアクションライフル』と評される事もある。


加えて貫通力が強いため、大型動物の硬い頭蓋骨を貫通して即死させることができるらしく日本軍の小銃の中で唯一『ベアハンター』の異名をもつ。


ちなみに半自動小銃であるM1ガーランドに対抗してか、本銃を半自動小銃化した試作品もあることにはあったが、史実では弾薬消費が多すぎ兵站の限界を超えてしまうため実戦投入は見送られている。


次にPPSh-41であるが、これは第二次世界大戦時にソ連軍が使用した代表的な短機関銃で多量の7.62×25mmトカレフ弾をばらまく事に長けており、バラライカあるいはマンドリンの異名でも知られている。


また、その装弾数の多さや堅牢な構造が好まれたのか、改造や改良が加えられ現代でも使用されている。


最後にM1911だが、M1911は1911年の正式採用から1985年までの74年間、アメリカ軍の制式拳銃として第一次世界大戦や第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争で用いられた軍用拳銃で広く知られた通称でにコルト・ガバメンがある。


最も現代でも改良型のM1911を装備する特殊部隊があるほど、息の長い名銃の1つである。


そんな武器達で武装を整えた俺は次に装備ステータスで服装や装備品を整え、とりあえず人里に向かうことにした。


えーと、今居る砂漠から一番近い人里は……80キロ先……遠いからなんか車両を召喚してから行こ。


メニュー画面の項目で選んだ[マップ]の中に何故かあったこの世界の地図で目的地を決めた俺は、第二次世界大戦において連合国軍の軍用車両として広く運用され高い耐久性と悪路における優れた走行性能で軍事戦略的にも多大な戦果を挙げた小型四輪駆動車――ジープを召喚した。


「よし、行くか」


召喚と同時に目の前に現れたジープに乗り込んだ俺はいよいよ、この世界へと歩み出したのだった。


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